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-54- 犠牲

 この世はそう甘くなく、出世するには何らかの犠牲を代償にする覚悟をしなければならない。出世は、それなりの代価が必要だということになります。^^

 とある高級料亭である。とある大企業に勤務する課長の浜砂は出世の誘いを専務の貝殻に臭わされていた。

「おう! 浜砂君か、よく来た…」

「あの…何でしたでしょう、専務」

「まあまあまあまあ…」

 (ふすま)を開けて和間へ入った浜砂は、手招きで席を勧められた。

「まあ、一献(いっこん)…」

 対峙して座布団に座った浜砂に、貝殻は(さかずき)を手渡そうとした。無碍(むげ)に断れず、浜砂がその杯を手にすると、貝殻は銚子の燗酒を注ぎ入れ、ニンマリと(わら)った。

「他でもないんだが、君の部長の話が話題になってね…」

 貝殻は役員会で出た話の内容を事細かに話した。浜砂は注がれた盃の酒を啜りながら、その話を聞いていた。

「ということなんたが…」

「はあ…」

 浜砂は干した杯を返し、銚子の燗酒を貝殻に注いだ。

「そうなれば、それなりの準備を君にしてもらう必要がな…」

「…と、いいますと?」

「まあ、ザックバランに言えば、それなりの株を保有してもらわんとな…」

「会社株を買えということですか?」

「ああ、まあそうなる…」

「あの…どれくらい?」

「そうだな…私の場合だと、◎◎◎株だったが…」

 その株数は自宅建設に積み立てた資金のおよそ半分だった。出世をしたい浜砂だったが、積み立てた自己資金を犠牲にしてまで出世はしたいとは思えなかった。

「そうですか…。数日、考えさせて下さい…」

「ああ、よく考えてくれ。色よい返事を待ってるよ…」

 その後、高級料理を賞味し、浜砂はほろ酔い気分でタクシーの人となった。

 数日が経ち、よくよく考えた挙句、浜砂は断りの返事を専務室でした。

「そうか…残念だな。まあ、次の機会もあるから…」

「と、言われますと?」

「いや、まあ、そういうことだ…」

 貝殻は小さく笑い、話を(ぼか)した。

 それからひと月ほどが過ぎたある日、人事異動が発令され、別の課長、松原が部長に昇進した。だが浜砂は、決して(うらや)ましくなかった。出世以上に家族も待ち望んだ自分の家が欲しかったからだった。

 出世は自分の生活を犠牲にてまで望むものではない・・ということでしょうか。^^ 


                   完

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