-50- 有頂天
出世して有頂天になっていると奈落の底へ落ちることになる。^^ かつて、日露戦争において日本海海戦で勝利し、連合艦隊司令長官を退任した東郷平八郎海軍大将[のちの元帥]が退任時に有頂天を戒めるために訓示した「勝って兜の緒を締めよ」の名言は、2024年の現在にも通じる言葉だと私は痛感しています[軍事面は除きますっ!^^]。
熊尾は鮭川を獲って…いや、蹴落として出世競争に勝利し、有頂天になっていた。
「おめでとうごさいますっ! 熊尾さんっ!」
熊尾の磯巾着である山芋がヨイショした。
「ははは…まあ、こんなもんだ、山芋」
「今後とも、よろしくっ!」
山芋は熊尾に掘られて食べられまいと、さらに下手に出た。
「ああ、分かってるさ」
有頂天の熊尾は山芋に下手に出られ、さらに有頂天となった。だがこの思い上がりが、熊尾の出世を阻む一因になろうとは、そのときの二人は想像さえしていなかった。
有頂天が油断を生み、その二年後、熊尾は追われるように退社した。かろうじて懲戒解雇にならなかっただけが幸いだった。
その後、メンテナンス会社で平社員として働くことになった熊尾は、ひょんなことで、元勤めていた会社へ派遣された。だがそこに、かつて有頂天になっていた熊尾の姿は微塵もなく消えていた。
出世して有頂天になるのはいいんですが、いつまでも有頂天気分ですと、出世どころか最悪の事態になる危険性もあり、心すべきではないでしょうか。^^
完




