-48- 慎(つつし)む
出世を果たしても身を慎む人は、自ずとその先も出世の道を邁進していくことになる。一方、慎まない人は? といえば、遠からず経営上の諸問題や限界に突き当たって身を亡ぼす・・とまあ、これが世間の相場となっているようです。^^
とある市役所である。長年の夢が叶い、晴れて課長補佐に昇格した餅川は、モチモチした顔で一人、悦に浸っていた。管理職に出世出来るか出来ないかの分水嶺は偏に係長時代で定まる。問題を起こしたり、仕事上の不手際があったりすれば万年平職員か万年係長に甘んじなければならず、官庁の出世は、そう甘くないのである[甘いをかけたダジャレです^^]。^^
「あなた、今日は一本、燗を多くしたわよ」
妻が熱燗を盆に乗せて居間へ入ってきた。
「そうか…すまないね。まあ、一本多めは今日だけにしておこう。これからは身体が大事だから、身を慎まないとな…」
「私も頂こうかしら?」
「ああ、そうしなさい、そうしなさい…」
餅川は紅潮した美味そうな顔で猪口を妻に手渡した。こうして、身を慎むことにした餅川は、出世の道をさらに進んでいくのだった。
お餅は硬くては食べられません。慎みの熱でモチモチと膨らんで美味しく出世できる訳ですよね。^^
完




