-46- 胡麻(ごま)を擂(す)る
胡麻を擂るといっても、擂り鉢で胡麻を擂る訳ではない。^^ ご機嫌を取ることである。今日は出世と胡麻を擂る行為との関連性はどうなのか? を探るお話だ。
とある商社に勤める山村は胡麻を擂ることを得意とする男で、いつの間にか副課長にまで出世した男だった。
「君、今日の課長のスケジュールは、どうなってるのっ!?」
「えぇ~~っと、…ちょっと待って下さい。あっ! 豚岡ホールディングスの鳥川部長との会合が入ってます…」
「何時からだい?」
「えぇ~~っと、…ちょっと待って下さい…」
ちょっと待って下さいが多い男だな…という、うざったい顔で山村は係長の魚住を窺った。
「お昼の二時からですね…」
「それまでは?」
「…それまで、ですか? えぇ~~っと、…ちょっと」
「待つよっ!」
山村はニンマリと哂いながら魚住の言葉を遮った。
「…別にこれといって予定は入ってませんね」
「そうか…有り難う」
こりゃ、チャンスだっ! と山村は心の中で手を叩いた。次の異動で課長ポストを狙っている山村が、このチャンスを逃す訳がなかった。
数時間後である。
「ハハハ…そりゃ楽しみだっ! 山村さん、宜しく頼むよ」
山村は得意とする盆栽を課長の牛崎にプレゼントする話をしたのである。牛崎としては気分が悪かろうはずがない。
「どうかね? 今夜あたり…」
牛崎は片手でグラスを傾ける仕草をして山村に話しかけた。
「はあ、それはもう!」
こうして、山村が胡麻を擂った数ヶ月後、どういう訳か課長へ昇進する人事異動が発令されたのである。
まあ、胡麻を擂らないよりは擂った方が出世しやすいようですね。^^
完




