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-44- 疲れる

 出世することに心を捕らわれ過ぎると疲れることになる。この男、町役場の生活環境課に勤める鹿山もその一人で、他に楽しみはないんかいっ! と他人が思うほど、出世することに心を注いでいた。だが残念なことに、平林には出世する才がまったくといって言いいほどなかった。^^ にもかかわらず、平林は齷齪(あくせく)働きながら、なるべく上役に目立とうとした。

「おう! 鹿山君、精が出るねぇ~。こんな早くから庁舎の前の草むしりかいっ? …感心、感心っ!」

 そう言いながら、観光福祉課の課長、角切(つのきり)がゆったりと鹿山の前を通り過ぎようとして立ち止まった。

「はあ、まあ…。入口の花壇が草だらけでしたので…」 

「なかなかのものだよ、君は…。他の者は毎日、見えているのに手入れしようともしない…」

「はあ、まあ…」

「仕事もその調子で頼むよ」

 君は仕事の方は全然、ダメだから…とも言えず、角切は暈しながら庁舎の中へと歩き去った。

 仕事もその調子で頼むよ、か…と、鹿山は思わず煎餅顔になった。煎餅顔とは、出世したい…と絵のように描いた顔である。^^ 溜め息が出るのも無理からぬ話で、すでに中年の息に差し掛かろうというのに、鹿山には係長の話さえなく、最近では半ば出世を諦めながら働いていたのである。その疲れは、身体だけでなく心をも疲れさせる原因となっていた。

『もう、やめよう…』

 意を決した鹿山は次の日から齷齪して上司に目立つ動きををやめた。角切に角を切られた格好である。^^ すると妙なもので、翌年の異動で係長に昇格したのだった。

『疲れた甲斐があったな…』

 鹿山はニンマリしながら、二十年以上、(あこが)れていた係長席へドッカ! と座った。

 角を切られたように出世を意識しなくなると、疲れることもなくなり、出世の糸口が見えてくるようです。^^


                   完

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