-41- 建前と本音
人の出世を建前と本音で考えてみるのも人間観察として面白い。とてもそうとは思えないような人の本音が見え隠れしたときなんかは、思わずニンマリと哂えるものです。^^
黒岩はついに政界へ進出する足掛かりを作り、自宅の居間で独り北叟笑んでいた。
『フフフ…これで俺も一躍、有名人の仲間入りか…』
誰もいない自宅で出た黒岩の本音である。
日時、場所は変わって、国会議事堂前である。初登庁に黒岩の胸は昂りを見せていた。
「黒岩さん、初登庁された今のお気持ちは如何ですかっ!?」
「えっ!? ええまあ…。これも偏に指示して下さった国民の皆様方のお蔭だと思っております。これからは誠心誠意、国民の皆様方の暮らしがよくなるよう働かせて頂きますっ!!」
新人がよくもまあ、こうスラスラと建前で語れるもんだ…と思える勢いで、黒岩は報道記者が差し出すマイクに向かって熱く語った。本音は、『次は政務官を狙うか…』くらいの気分だったのだが、表立ってテレビ画面にその本音は映し出されなかった。
「どうも、有難うございました…」
報道記者はマイクを別の新人議員に振り向けた。
まあ、これが今の日本の政治でしょうか。…残念っ!!!^^
完




