-4- かくとだに
掻くとダニではない。^^ 百人一首に登場する ━ かくとだに えやはいぶきのさしもぐさ さしも知らじら 燃ゆる思ひを ━ で、藤原実方朝臣[清少納言とも交際していたらしい]が詠んでいる。現代語に訳せば、= このようにあなたをお慕いしているお気持ちを どのようにすればお伝えできるのでしょう。伊吹山のさしも草のように燃え上がり、熱いっ! 熱いっ! と感じるこの想いを、あなたご自身は、お知りにならないというのに… = となる。= 痒いのでボリボリと身体を掻いていると、ダニが見つかった。こりゃダメだな…と思えたので、さしも草の熱さで痒さを取ろうとしたが、少しづつ熱くなってきて耐えられなくなった。熱い熱いこの感覚をどうすればいいだろうか… = という意味ではない。^^
添い遂げられればいいが、そうはいかないのがこの人の世なのだ。今年の大河の平安中期の御代のように、出世のために燃える想いを捨て、好きでもない大臣の娘と結婚したなどという例は、当時も今も変わりはないのである。いつの時代でも、人は出世したいんですねぇ~。^^
とある市役所に勤める葱尾は、同じ課の女性職員、甘崎にホの字だった。ホ=惚の掛け言葉である。^^ ところが葱尾に思いもかけない話が課長の串川から持ち上がった。
「葱尾君、次長の娘さんは知ってるだろ? 総務課の豚田君だ…。どうかね、結婚を前提に付き合ってみないか? 将来の出世を考えれば、悪い話じゃないと思うんだがね…」
「はあ、考えときます…」
一旦は保留した葱尾だったが、ひと月後、豚田との交際を了解し、甘い甘い甘崎への想いを断ち切った。かくして、葱尾と豚田は串川に刺され、美味しく食べられた、のではなく、串川の仲人により結婚したのである。^^
出世するためには、ああ無情…の悲しい想いをする必要があるんですね。^^
完