出世ユーモア短編集

－３７－ 生活

　出世をすれば当然、豊かな暮らしが出来るだろう…くらいのことは誰だって理解出来る。だが、果たして出世したからといって幸せになれるんだろうか？　と問えば、それは疑問なんですね。出世と生活の関係は実にややこしいんです。＾＾

　牛毛はついに社内トップの座に就くことになった。出世を果たしたのである。

『これで、念願の豪邸に住める。いやいや、そればかりじゃないぞ…』

　牛毛はポスト収入を前倒しして豪邸建設を契約していた。続いて、牛毛の脳裏に外国の風景、テーブルに乗せられた数々の美味しそうなご馳走・・という幸せな生活が浮かんだ。ところが、である。就任早々、会社の経営状態は一転して危機に直面した。信用取引を長年、継続していた某社が不渡り手形を出し、多額の不良債権の支払いに齷齪(あくせく)する破目に陥ったのである。会社維持のため、役員すべてがボーナスのカット、給与の２０％削減を余儀なくされ、牛毛は日夜、傾きかけた経営基盤の立て直しに追われることになった。海外旅行、美味しいご馳走、豪邸での生活は夢のまた夢と消え去ったのである。憐れもここまで悪化すれば、不幸と言う他はなかった。牛毛は社長室で独り、ぅぅぅ…と涙した。

　という訳で、出世を果たしたからといって、必ず生活がよくなるという保障はないという結論になります。＾＾

　　　　　　　　　　　　　　　　　 　完