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-33- 詰め

 出世を果たしても、詰めが甘いと奈落の底へ落ちることになる。しかも知名度が世間に広まっていれば、人間としての信用失墜にも関わり、致命傷になりかねない。収支報告書の未記載問題で最近の世間を騒がせている内容etc.がそれで、関係諸氏の事務に携わる方々は特に注意が必要となるようです。^^

 縁台将棋を二人の老人が風呂上がりで指している。傍らには生ビールの冷えたジョッキ、小皿の生ハムと茹でられた塩味の鞘豆、カッテージチーズが酒の肴として置かれている。二人の老人は時折りスプーンとフォークで酒の肴を美味そうに口へと運びながら盤上の駒を動かす。

「ああ、そういかれましたか…。では私は…」

 角を成り込み、海援隊の竜馬として薩摩藩へエミリー銃を運ぶ。

「いや、それは…。ちょっとお待ちを…」

「四度目ですから、もうこれ以上、待ったは…」

「さよですか…。ウ~~ム!」

 新選組はいったい何をしてるんだっ! という困り顔で盤上の駒の竜馬を見つめる。将軍の王は必死直前の絶体絶命のピンチである。

「仕方ないですか…」

 老人の王は、大政奉還を目指す最後の逃げで凌ごうと逃げにかかる。

「これは…」

 と盤上を眺め、詰め損ねまいと、老人は鞘豆をモグモグと味わいながら生ビールをグピッ! とひと口飲み、次の一手で持ち駒の金を高らかに放つ。指した老人は必死をかけたつもりだったが、指された老人が動かした次の一手は王手だった。

「王手っ!! 詰めが甘かったですな、ははは…」

「ま、参りました。ははは…」

 三度も待ったして、詰めが甘かった、はないだろ…と思いながらもそうとは言えず、軽く(わら)い捨てて指された老人は投了を告げた。

 詰めが甘いと敗着し、出世はスゥ~っと夢のように消え去る訳です。^^


                   完

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