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<32> 一日
子供の頃、あれだけ長く感じた一日がこれほど短いものか…と、年老いた禿崎は薄い頭を撫でつけながら思わなくてもいいのに思った。^^
「部長、そろそろお時間です…」
秘書課長の剛毛が楚々と部長室のドアを開け、一礼しながら告げた。
「おっ! もう、そんな時間か…」
決裁印を押し終わった後。いつの間にかウトウト…と眠ってしまった禿崎は、目を擦りながら大欠伸を一つした。つい今し方、出勤したと思っていたのに…と禿崎は一日が短くなったことに改めて驚かされた。二十四時間が他人に比べ禿崎だけ短くなるということは有り得ない。禿崎は遊び回っていた懐かしい子供の頃をふと、頭に浮かべた。そして、来年は定年か…と、また侘しく思った。そして、続けて思った。1年÷6才≠0.16667で1年÷59才=0.01695…。なるほど、一桁短い訳だ…と机上の電卓を叩きながら禿崎は得心した。
禿崎さんの発想が正しいのかどうかは分かりませんが、人生を長く歩むと1日を短く感じるようになる気分は私にも分かります。^^
完




