-27- 自我
自我を持たない、あるいは小さい人は、相手にタメ口を叩かれても柳に風と受け流せるに違いない。ビクともしない鉄壁の心境を持つ人といっても過言ではない。自我が強ければ、すぐ反応してイラついたり怒れたりする訳だ。そんな人は出世には無縁の人といっても過言ではない。もちろん、よく知らない人にタメ口を叩く人もそうで、それだけの人という訳です。^^
とある町役場の口山は出世できない男だった。それに比べ出山は驚くほどのスピード出世を果たした同期の職員だった。両者の違いは自我が大きいか小さいかというそれだけの差であった。自我が大きければ、自ずと人間関係に摩擦を生じやすい。口山がそれで、相手のタメ口にすぐ反応してイラつくものだから相手も興奮し、摩擦が生じてトラブルとなった。その結果、上司の印象は悪くなり、出世が遠退いたのである。出山は真逆で、相手のタメ口にも柳に風と受け流して無言でスルーしたから、トラブルも発生せず、上司の高評価を得たのである。となれば当然、出世すると、まあ話はこうなる訳だ。
「口山さんがまた口喧嘩してるぞ…」
「また、ダメか…」
口山はせっかく昇格できるチャンスを、また逃したのだった。
「出山さんが部長と談笑してるぜ…」
「次は副部長だな…」
春の異動の内示が出た瞬間だった。
自我がないか小さければ、鉄壁の心で邪心を跳ね退けて出世できるようです。^^
完




