-24- 速度
出世する速度は人によって違う。もちろん、ゼロの人もいたりマイナスの人もいる訳ですが、これだけは、AI[人工知能]を駆使しようと変えられず、どぉ~~しようもありません。^^
戸坂の出世は停滞していた。入社後、十数年は順調に昇進していたが突然、その速度はゼロとなり、中年までピタッ! と見えない障害の壁が立ちはだかるように停止していたのである。成果を会社に齎しているのに出世できないその原因がなぜなのか? は、戸坂本人にも分からなかった。今年も莫大な営業実績を上出したにもかかわらず、春の人事異動では何の音沙汰も戸坂にはなかった。戸坂は、もう出世を考えるのはやめよう…と決意した。ところが、である。急に出世の速度は堰を切ったように加速を始めたのである。その原因が何なのか? は、戸坂自身にも分からなかった。
「戸坂君、急な異動で申し訳ない。明日から人事部長をお願いしたい」
「ええ~~っ!! 私が、ですかっ!!?」
「そうだよ、君がだよ…」
訝しげに専務は戸坂を眺めた。課長補佐の戸坂は副課長、課長、次長を跳び越え、陸上競技の三段跳びのようにホップ→ステップ→ジャンプと出世を果たしたのである。コケコッコォ~~![英語では、クック、ドゥドゥドゥ~~!]と驚けるその速度は、野球大リーグの某日本人選手のように記録を打ち立てるほど英雄的なものだった。^^
出世の速度は目に見えず、突然、プラスにもマイナスにも加速します。止まったまま安定し続けた方が気楽でいいのかも知れませんね。^^
完




