-22- 天候
出世には天候のような流れがあるようだ。出世しやすい天候としにくい天候である。中には嵐のような天候もあり、出世など出来る訳がない…とテンションを落とすこともある。まあ、この天候の巡りも時の運という要素があります。あなたの出世に関する天候はどうですか?^^
日下は出世したかったが出来ず、すでに五十路半ばを過ぎようとしていた。定年のお迎えを次第に意識する年齢にさしかかっていたのである。日下は勤務を終え、職場の窓からしみじみと秋の空を眺めた。ようやく暑気も去ろうとしていた。
『俺の天候は曇りだな…』
涼やかに晴れ渡った青空だったが、日下の心は曇っていた。
「日下さん、おめでとうございますっ! 課長補佐代理になられるらしいですねっ!」
年下の鏑木が日下が座るデスクの前を通りかかり、ひと声、矢を射った。
「んっ!?」
上司から内示を受けていなかった日下は訝った。
「あっ! まだでしたか…失礼しました。秘書課の友人に聞いたもんで…」
「あ、ああまあね、ははは…」
日下の心から急に雲が消え、夕焼けが広がる快晴の天候になった。日下は平社員から課長補佐代理へ出世したのである。課長補佐代理の上は課長補佐、その上が副課長補佐、そして副課長、で、ようやく課長と、課長への道は、ほど遠かった。それでも一段階出世できた喜びに日下は溢れていた。^^
完




