-2- 何のために
人は何のために出世するのか? と問えば、それは名声を得るためだ・・と、誰しも答えることでしょう。真に目指す本来の目的さえ果たせれば、出世するしないは問題外のはずなのだが、人はどういう訳か出世したがる。^^ 実力さえあれば、それはそれでいいんですけどねぇ~~。過熱ぎみの党代表選なんか、どうなんでしょう?^^
「さて、どうしたものか…」
とある町役場の総務部長、首川は考えなくてもいいのに考えていた。今まで歩んできた出世の道を今後も考えるのか? 考えを捨て、定年までの期間を楽に勤めるのか? の二択である。考えれば、私はいったい何のために出世してきたのか…という素朴な疑問が湧かなくてもいいのに湧くのである。そりゃ、出世したかったからだろっ! と言われればそれまでだが、果たしてそうだったのだろうか…という声も脳裏に去来するのだ。
「おはようございますっ!」
そのとき、首川の部下の係長、腰岡が出勤してきた。
「ああ、おはよう…」
もう、そんな時間か…と、首川は課内の掛け時計の針を見た。勤務開始の時間が迫っていた。
「まあ、いいか…」
首川は考えなくてもいいのに考えていた自分に気づき、何のために出世したのかの結論を先延ばしすることにした。部長を拝命して、かれこれ二年が経過しようとしていた。この上のポストといえば、助役、収入役、そして監査役の三役しかない。だが、勤務して以来、出世のため必死に頑張ってきた努力は何のためだったんだろう…という疑問が湧かなくてもいいのに湧いた以上は仕方がない。首川は頭をブルブルブルっと振り、仕事のことだけを考えることにした。これは考えなくてもいい訳がない。^^
腰岡は自分のデスクに座り、昨日やり残した決算審査意見書を綴じたファイルに目を通している。取り分けて首川に語りかける様子もなく、終始無言である。
『ははぁ~~ん、ヤツは課長補佐になりたいんだな?』
誰もが春の人事異動を前に浮足立っている二月初旬だった。首川は、どうでもいいや…と、脳裏の思いを白紙に戻した。
何のために出世を願うのか…と、首川さんのように深く考えれば、出世の目的が定まっていない以上、解答はでないでしょう。それにしても、人は何のために出世したいんでしょうね。^^
完