-14- 知名度
知名度は出世によって高まるものとは断定できない。犯罪を犯すことによって悪い知名度が高まることもあるからだ。大リーグのメジャーで50本塁打を超え、益々、知名度が高まる場合とは一線を画すでしょう。^^
いつやらの私小説、ウイルスに登場した、とある研究所である。
「どうだろう? そろそろ私の番だと思うんだが…」
「何がです?」
蛸山教授に訊ねられた助手の海老尾は、薄々は分かっていたが、分からない素振りで訊ね返した。
「んっ!? いや、まあいい…」
蛸山にはノーベル賞候補に何回か上がり、その都度、受賞を逃した苦い過去があった。
「ノーベル賞ですか?」
海老尾は唐突に訊ねた。
「ああ、まあ…」
「今回は声がかかるかも知れませんよ」
「そうだろうかっ!?」
「マスコミで先生の知名度は、かなり高まってますから…」
マスコミで知名度が高まればノーベル賞が受賞出来るという話でもないのだが、海老尾は蛸山を慰めた。
その数か月後、蛸山教授はノーベル賞候補に上がった。が、しかし、またも受賞を逃したのである。逆に、蛸山の知名度は[ノーベル賞の受賞できない教授]というレッテルがつけられ、知名度はうなぎ登りに高まった。
ノーベル賞を受賞したからといって出世した・・とは言えないようです。^^
完




