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プロローグ『とある人物の独白』

この物語は前作『殺人鬼が生まれる理由と死体が生まれる理由と探偵が生まれる理由』の続編です。

 人間とは愚かな生き物だ。


 その自虐的なフレーズを聞いた事が無い人はあまりいないと思う。

 一番有名なのはアルベルト・アインシュタインのセリフだろう。彼は『この世に無限のものは宇宙と人間の愚かさ』という言葉を世に残している。

 その事を知らなくとも、漫画や小説、ドラマや映画、ニュースやドキュメンタリーなど、どこかしらでは聞いた事がある筈だ。それほどまでに、このフレーズはありふれている。

 きっと、その言葉が的を射ているからなのだろう。

 勉強が出来る出来ないではなく、もっと本質的な部分で人間は愚かなのだ。

 回り回って自分達の首を絞める事になると分かっていても環境破壊を()められず、悪しきものだと認識していても戦争や差別は無くならない。

 人間は愚かであると自覚しながらも、正す事が出来ない愚かしさ。まさに救いようがない。

 世の中に宗教が蔓延り続ける理由もそこにあるのだと思う。

 人間は愚かだから、愚かではない存在に導いてもらわなければならない。そう信じている人達が宗教を作り、宗教を信じている。

 その有り様はそのフレーズの正しさの証明だ。

 神様などいない。そんな事は少し考えれば分かる事だろう。居ない存在に縋るなんて、実にくだらない事だ。

 ああ、本当に人間とは愚かな生き物だ。


 だけど、それは決して悪い事ではない。愚かだからこそ、人間には価値がある。

 少なくとも、わたしにとってはそうだ。

 妄想を真実なのだと信じ込んでいる者には論理的思考など出来ない。論理の狭間に神の見えざる手を自らの意思で入れてしまう為だ。

 だから、簡単に踊ってくれる。どんな事でもしてくれる。

 神に導かれているのだと信じているからだ。神が示した道はそれが如何なるものであっても光であり、彼らにとってその道を歩く事は完全に正しい事なのだ。

 罪の意識を抱く事なく、罪を積み重ねていく愚か者達を見て、わたしは(わら)う。


 彼らが裁かれる時、彼らはどんな表情を浮かべるのだろうか?

 どんな言葉を口にするのだろうか?

 それでも神を信じ抜く事は出来るのだろうか?

 

 彼らの絶望を思い浮かべると、体が疼く。この身に刻み込まれた痛みと苦しみは、その時に快楽へと昇華される筈だ。

 その時まで、わたしはわたしを隠し抜く。耐え忍ぶ事には慣れている。

 ずっと暗闇の中を彷徨い歩いていた。その果てに漸く光を見出す事が出来た。

 あと少しだ。あと少しでわたしはわたし(・・・)になれる。

 ああ、とっても楽しみだ。

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