表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

歴史小説

短編武侠小説・東方求敗

作者: 赤城康彦

 今からおよそ五百年前。中国明王朝のころである。

 その姿も思い思いに、蒼天を龍のごとく駆ける白き雲を道案内に、旅の少女が一人、蒼空を見上げながら足取りも軽く、松林の中の道を歩く。その身にまとう衣も緑にして、松林にまじわり一部と化すようである。

 松林の間あいだから覗く蒼天果てるを知らず。どこまでも無限に広がる。

 長い髪は松の枝とともに風にそよぐにまかせ。その顔も涼やかに、目は松林の向こうまで見ているかのようにぱちりと見開かれ。愛らしいのはもちろん、凛とした利発さと、闊達さも感じさせるものがあった。

 そして、腰に一剣を佩いているその勇ましさ。江湖をさすらう少女侠客であるのは一目瞭然であった。

 鼻をくすぐる風に、潮っ気がまじりだす。海が近い。

「ああ、そうそう。この先には漁村があるだっけ」

 と少女、朱美鈴しゅびりんはつぶやく。

「漁村についたら、美味しい魚を食べよう、っと」

 とるんるん気分を歩を早めた。すると。

 松林の向こうから、途端に絶叫が響きわたるや危急を知らせる早鐘が鳴り響く。朱美鈴は何事かとやや驚いて、すわやと腰に佩く剣を抜き駆け出す。

「わ、倭寇じゃ。倭寇が来たぞ!」

 という漁村の人々の叫び声。倭寇とは、十三世紀から十六世紀にかけて、朝鮮のや中国沿岸を襲撃していた日本の海賊のことだ。海賊とて侮るなかれ、倭寇の被害はことのほか大きく、朝鮮高麗王朝および李氏朝鮮王朝は国を挙げて倭寇と戦い苦戦の末にどうにか打ち破り。明朝初代皇帝・朱元璋しゅげんしょうは日本に倭寇討伐を依頼する使者を送るほど、大陸の人民を悩ませたのであった。

「倭寇ですって!」

 朱美鈴は義憤に燃えて、松林を駆ければ。群生する松の木々が途切れ、かわって広々とした大海原が目に飛び込んできた。

 とともに、倭寇が漁村を襲うさまも目に飛び込む。

「おのれ倭寇どもッ! 天にかわりこの朱美鈴が、成敗してくれる!!」

 陽光に照らされ、きらりと剣が光り。閃光砂浜を駆け抜ける。

「なんじゃあうぬぁ!」

 と倭寇どもは突然現れた朱美鈴に対し怒髪天を突く勢いで、日本刀を振るって襲い掛かるも、腕に覚えのある朱美鈴の駆けるところ、血風も駆け抜けた。

「うっ」

「わあ」

「げえー」

「ひー」

 と、朱美鈴の剣閃くところ倭寇どもの悲鳴が響き、ばったばったと斃れてゆき。倭寇の襲撃にあい逃げ惑う一方の漁村の人々は、朱美鈴の勇ましい戦いぶりに、それこそ天が地上につかわした天女のように思え。勇気を取り戻して、逃げるのをやめ。朱美鈴に一生懸命、声援を送っていた。

「こ、このアマ、つええ」

 倭寇どもは、朱美鈴の強さに舌を巻き、とんずらをかまそうとする。が、そこに現れたるは身の丈六尺(日本の尺計測で、およそ180センチ)は超えようかという巨漢。朱美鈴よりも頭ふたつ飛びぬけた背の高さだった。

 漆黒の日本の鎧を身に包みながらも兜はなく。長く伸ばした髪は頭の後ろで、馬の尾のように纏められている。で、不細工な面が多い倭寇どもの中にあって、この男は若く色白くして目は鋭いながらも涼やか。端正な面持ちは、身分卑しからぬものを感じさせるため、ひときわ目立って見えた。

「まあ」

 倭寇と渡り合いながらも、不覚にも朱美鈴はその男の容貌に驚きを禁じえなかった。

 男は得物の日本刀を握りしめ、朱美鈴をひと睨みするや。

「我が名は、長宗我部基親ちょうそがべもとちか。汝の名は、何というか」

 と大喝一声。

 その腹から絞り出された一喝は空くうを揺らし、敵味方問わず耳朶をしびれさせた。

「え、なんですって? ちょうすけべもとちかん?」

 大陸はおろか日本でも珍しい長宗我部という四文字の姓。朱美鈴と漁村の人々は耳鳴りを感じながらも、上手く聞き取れずに、困惑している。が、名を名乗れと言っているのはわかった。開いての正確な名前は後で聞きゃいい。

「なによ、あたしの名前を知りたいって? 墓に名前でも刻んでくれるっての?」

「それはお前の腕次第だ」

「心配無用。勝つのはあたし、朱美鈴!」

 不適ににっと笑い、朱美鈴は剣を閃かせ長宗我部基親向かい駆け出した。

 長宗我部基親は落ち着き日本刀を青眼に構え、じっと朱美鈴の剣先を見据えている。かと思えば、かっと目を見開き、朱美鈴、いや正確には朱美鈴の剣めがけて鋭い突きを入れようとする。

(面白い!)

 朱美鈴も咄嗟に長宗我部基親の日本刀目掛けて刺突を繰り出す。

 さすれば、それぞれの切っ先火花を散らし、角突き合わせてぶつかり。朱美鈴に長宗我部基親、それぞれの得物ぶつかり火花散るとともに、さっと後ろへ下がって、隙なく構え。次の一手をうかがい、互いに睨みあっていた。


(出来る)

 視線火花散る睨み合い。互いの得物の切っ先を、寸分違わず重ね合わすその技量。もし当てが外れてしまえば、そろって突きを食らい相打ちになりかねないのを、ふたりは平然とやってのけた。

 周囲は漁村の人々も倭寇どもも、固唾を飲んで成り行きを見守っている。

 次の一手を伺いつつも、互いに隙なく構え動けない様子。膠着した空気の中、時間だけがすぎてゆき、海の波音が人々の耳に触れ潮風が、頬をなでてゆく。空の雲は下界などお構いなしに、思い思いに風まかせの旅をしてお天道様は恵みの光りを降りそそぐ。

 この間、朱美鈴は素早く瞳を動かし周囲をうかがった。倭寇の子分が不意打ちと脇から襲い掛かってこないとも限らない。

(一、二、三……)

 と目に入る倭寇どもの数を数えれば、ざっと十三人。視界に入らないが感じる気配から、倭寇の総勢は二十人前後と見た。船は五艘。長い距離を渡海するだけあって、五艘とも立派な帆掛け舟であった。

 長宗我部基親はじっと構えている。子分どもは、一切動こうとしない。親分が小娘をやっつけてくれる、と心底信頼しているようだ。だがその中でひっかかるものがあった。

(親分はともかく、子分の中にも、いい目をしているのがいるなんて)

 親分、長宗我部基親はその容貌にたたずまいからして、歴とした日本の武士どころか、いくらか身分もありそうな人物だし。子分どもも数人、日本の武士らしい毅然とした雰囲気を感じさせた。と同時に、そこに後ろめたさも同居しているのも、見逃さなかった。

(倭寇をしているのも、何かの事情があってのことかしら?)

 長宗我部基親、無言。不動にして涼やかな眼差しを朱美鈴にそそぎ、日本刀を青眼にかまえ、しずかにたたずむ。

 脳裏に浮かぶ、あれはちょうど十年前、永正五年(1508年)の、幼年のこと。

 当時日本は応仁の乱以後、世は混沌とし各地に群雄割拠の様相を呈し。まさに戦国時代は幕を開けて、各地で修羅場が展開されていた。長宗我部基親のふるさと、土佐においても例外ではなく。長宗我部氏の居城である岡豊城おこうじょう(高知県南国市)は敵勢力に攻められ陥落の憂き目にあった。

 当主であり伯父の長宗我部兼序ちょうそがべかねつぐは自害。いとこの千雄丸は家臣に手を引かれ、命からがら生き延びた。この千雄丸が後に長宗我部国親ちょうそがべくにちかとなり、家を再興させ、その子元親(もとちか)は四国を統一するまでになるのだが。それは後年のこと。

 当の長宗我部基親は元服して間もなく、伯父とともに死ぬ気でいたが、これも家臣に手を引かれ岡豊城から命からがら逃げ延びた。そして不運は続く。この家臣は腹黒く、長宗我部基親の武芸の腕前と、お家再興の志につけこんで、土佐の漁民をもそそのかし、倭寇働きをさせたのだった。

「非道なること百も承知。されど、すべてはお家再興のために地力をつけるためでござます」

 とうそ泣きに泣く家臣のそそのかしに乗り、海を渡り大陸沿岸を荒らしてまわった。長宗我部基親に付き従った他の数名の家来たちも、同じように倭寇働きをした。

「これも、すべてお家再興のため」

 と自分に言い聞かせて……。

 だが、所詮海賊はどこまで行っても海賊でしかなく。多少の金銀財宝や軍備は手に入ったものの、罪なき民を傷つける行為はやはり恥ずべきこと。再び長宗我部家の旗を揚げようとしたとき。

「長宗我部基親公は、倭寇など非道なことをしていたそうな。伯父上がお城で果てたのを見捨て、海賊風情に身を落としてまで生きながらえようなど、長宗我部家も地に落ちたものよ」

 というそしりはまぬがれまい。そのことに気付いたときには、すでに遅く。後悔先に立たずであった。家臣の狙いは、家の再興ではなく、自堕落に生きることであった。

 そのことをはたとさとって、憤怒した長宗我部基親はその家来を斬り殺し、以後の身の施し方を考えたが。もう身も心も汚してしまった自分がどうして土佐に帰れよう。かといって、大陸に土着するも、随分恨みを買った身が、どうして土着出来よう。結局、行くも引くもならずで惰性で倭寇働きをし、生き恥を重ねるしかなかった。

 その中で、ひとつ、望みが出来た。

 朱美鈴と相対して、長宗我部基親の目は、ますます輝きを増していった。

 

 いついつまでも、ふたり見つめあう。かと思われた。朱美鈴は長宗我部基親の容貌が、なかなか良いものでじっと見つめていてもいいと思った。が、相手は海賊。

(惜しいわね)

 じり、とわずかに前へ進んだ。

 来るか、と長宗我部基親の眉がわずかに動くや。その眉が動く間に、朱美鈴はさっと跳躍し、刺突を繰り出す。

「!!」

 途端に眼前に迫る剣。その素早い動きに、長宗我部基親慌てて日本刀をかえし峰で朱美鈴の剣をはじけば。耳を刺す剣劇の音とともに火花が散った。

「まだまだ!」

 朱美鈴の剣、ひとたび風を切れば風と交わり。真空の竜巻が迫るがごとくに、刺突とどまるところを知らず。長宗我部基親これをかわす一方。

 だがやはり、長宗我部基親もさるもの。咄嗟に日本刀を右下段にかまえ、かわした剣先の切った風の破片が右頬を冷やりとなで、朱美鈴そのものも眼前にまで迫るを見計らうや。下段に構えた日本刀、豪快に唸りを上げて朱美鈴のわき腹に迫る。

「なんのッ!」

 左わき腹に迫る日本刀を察して、朱美鈴とっさに跳躍するや左回りにくるりと舞って、頭上の日本刀をかわしざま、長宗我部基親の右頬そばの己の剣を一気に横になぎ払おうとする。が、長宗我部基親咄嗟に頭を下げて、頭上剣風が髪をなでてゆくついでに、数本はらりと風に乗ってどこぞへ飛んだ。

 と思う間もない、さかさまになって宙に浮く朱美鈴のおでこを見上げ上段へ思い切り突きを食らわせば、朱美鈴させじと逆えびに背中を反らし。細いあごに、風の破片を感じて。そのままの勢いで、またも宙にて宙返り。ついでに両脚日本刀の峰に着くとともにこれを踏み台にし、長宗我部基親の頭上を背面にて飛び越えながら、くるりと宙返りをしてまっすぐに立って着地。

 衣の袖、裾、風に乗ってひらひらとはためいて舞い。まるで天女の舞うがごとくに倭寇どもや漁村の人々に見え。長宗我部基親が振り向いたときには、朱美鈴は剣先をこちらに向けて、凛とたたずみこちらを睨みつけている。

 その目の鋭さと、輝き。彼女が、ただの江湖の少女侠客でないことを物語っている。いわんや、年上で修練も経験も上回るかと思われる長宗我部基親の鋭い攻めを、まるで天女が舞うようにしてかわすその技量。

 長宗我部基親は、ぱっと顔を輝かせて。

「見事!」

 と喝采を送った。

「お前は、天が俺の望みをかなえてくれるためにつかわした天女か」

 とまで、嬉々として言うではないか。これには、漁村の人々も、倭寇どもも、きょとんとしていた。強敵と出会い嬉しいのは、武芸者としては当然理解できる感情ではあるが。天女とまで褒める長宗我部基親の、この喜びようはどうであろう。

 と考える暇もない。長宗我部基親はじりと間合いつめてだっと駆け出すとともに、

「ちええぃッ!」

 と掛け声を発し、日本刀を上段に振り上げ朱美鈴の脳天目掛け振り下ろす。上段に振り上げ振り下ろすその勢い、竜巻が巻き起こったかと思うほど。

 速い! と朱美鈴後ろへも横へも逃げず剣で防ぐもならず、思い切って前に駆け出し長宗我部基親の右拳に己の左肩を当てるように接近。このまま肩の骨を折ってやると長宗我部基親力を込めて朱美鈴の柄をにぎる右拳を左肩に押し当てようとする。が、それは想定内。

 右拳が左肩に当たるとともに、むしろそれを導くように足を横に広げながら姿勢を下げれば。長宗我部基親不意をつかれ勢いあまって前のめりに体勢を崩す。というときには、朱美鈴の両脚はまた割りと横に広がってかかとから太ももまで完全に地に着いていた。その姿勢のまま、右手の剣は地すれすれに横走り長宗我部基親の足をなぎ払おうとする。

 ちぇ、と舌打ちし跳躍するが、それより先に朱美鈴の左手が長宗我部基親の腕を掴んでそのまま後ろへと腕を降り、背中から叩きつけようとする。 

 が長宗我部基親無理に抗わず受身をとれば、朱美鈴もちぇ、と舌打ちし手を離すとともにさっと立ち上がり間合いを取って身構える。長宗我部基親も素早く体勢を戻して、日本刀を青眼に構える。その目は、無上の喜びに輝いていた。

「見事、見事だ! お前なら、俺を……」

 朱美鈴は隙なく剣を構えつつ、話の途中ながら相手のまなざしを見て言った。

東方求敗とうほうきゅうはいって、あなたのこと?」


 東方求敗。敗れることを求める、東方の者。その言葉を聞き、倭寇どもに漁村の人々はさらにきょとんとしている。長宗我部基親は、まゆをぴくりと動かし、ふっと笑った。

「人が俺をどう呼んでいるかは知らぬが、おそらくそれは俺のことだろうな」

「聞いたことあるわ。倭寇で、負けたがっている凄腕がいるって。人呼んで、東方求敗。江湖じゃちょっとした噂よ」

「そうだったのか。それは知らなかったな」

 長宗我部基親、冷静にふっと笑う。別段どうでもいいようだ。が、朱美鈴にはどうも解せない。

「どうして、負けたいの?」

「知りたいか」

「ええ、知りたいわ。でなきゃ、死んでも死に切れないわ」

「つまらん冗談だな。だがいい、話してやる。どうして、俺が死にたがっているのか」

 死にたがっている!? 朱美鈴は呆気に取られる思いだった。自分と闘い対峙する長宗我部基親の喜びに目の輝き。武芸者として、というだけではない、何かを薄々と感じてはいたが。それは、死という望みを叶えられるという、とんでもない希望だったのだ。

 長宗我部基親は、土佐での岡豊城陥落と、長宗我部一族の没落や自身のことを話す。朱美鈴は、静かに聞く。

「俺にとって、武士として闘って死ぬことが、唯一の希望だ。それ以外は、糞だ」

「お金たくさん分捕って、美女あさり放題できても?」

「それこそ、糞というものだ。言ったろう。俺は、闘って死にたいのだ」

 朱美鈴は眉をひそめ、ささやいた。

「……。かわいそうな人ね」

「同情はごめんだッ!」

 狂犬のごとく咆える長宗我部基親。まるで、血を吐くように。

 そうするうちに、どこからともなく、男が三人この闘いの現場に姿をあらわす。三人とも髪も髭も白い老人で、見た目は普通の旅人という感じ。だが対峙するふたりを見て、

「あ、ああ、こ、こりゃ」

「い、いかん」

「まずいのう」

 と、対峙するふたりを見ておどおどおろおろ、頭をかかえる。朱美鈴は横目でそれを見て、くすりと笑う。長宗我部基親は無視。

「まあ、いい」

 さあ続きだ! と長宗我部基親は烈火のごとく攻め出し、朱美鈴もこれに応え、渡り合うこと十数合。どちらも引かぬ、一進一退の闘い。老人三人は、その闘いぶりを見ておどおどおろおろしてばかりだ。

「も、もし万一のことがあれば」

「……、も、もし万一あれば」

「わしらの首はなくなるぞ!」

 と、真っ青な顔三つ並べて、成り行きを見守るしかなかった。

「こりゃ麦克雷ばくかつらい、なんとかせい」

「いや、 雪鉄龍せつてつりゅう殿こそ」

「いや、ここは雅瑪哈がまはに任せろ!」

 などなど、白髪白髭の、背の高いほうから、雅瑪哈、雪鉄龍、麦克雷の三人は朱美鈴と長宗我部基親の闘いを見て、やけに賑やかしい。

 朱美鈴、もう、と頬をぷっと膨らまし。一瞬の隙を見つけるや、さっと長宗我部基親に「ごめんね」といって飛びのき、

「そこ、五月蠅い!」

 と一喝するや、三人の老人はしゅんとなって押し黙り。これでよしと、闘いを再開する。

「あいつらは知り合いか」

「まあね!」

 刃をまじえながら、長宗我部基親と朱美鈴問答。その声は、ともに弾んでいるように聞こえぬでもない。互いに闘いを楽しんでいるようだ。

 激闘はさらに十数合を重ねた。

「えやあ!」

「あッ!」

 長宗我部基親の掛け声、空を揺らし。握る日本刀、上段から下段へと風を切り、ついでのように後ろへ飛び下がる朱美鈴の裾に切れ目を入れれば。はらりと裾はわかれて、白い肌をちらりと見せ、ついでのように赤い筋がうっすらと走る。

「上手くよけたな。もう少し遅れれば、お前足をなくしていたぞ」

「……」

 朱美鈴無言。東方求敗強し、と減らず口を叩く気も起きない。己の肌が傷つけられたことでいよいよ危機を感じるとともに、長宗我部基親のその瞳の輝きように、怖気を感じるのであった。が、心のどこかで、親しみにも似た感情を抱いていた。長宗我部基親も、闘ううちにどこか朱美鈴に親しみを感じているようだ。

 三老人は狼狽することしきり。それを横目に、長宗我部基親は気軽に頬を緩めて笑顔になると、

「ふ、先祖の地で果てる夢、お前では叶えられぬか?」

 と言った。

「先祖? 誰のことよ」

 長宗我部基親の言葉に朱美鈴眉をひそめる。倭寇の先祖がこの大陸の者とは。そりゃまあ確かに、大陸から日本に渡来した者は多いが、長宗我部基親は誰の先祖だというのだろう、と思えば。

「俺の先祖は、秦の始皇帝だ」

 と長宗我部基親は言った。朱美鈴「なんですって!」と驚き。ほっほう、と三老人人生経験豊からしく冷静に聞く。

 朱美鈴らは知らぬが、長宗我部氏は秦の始皇帝の子孫を称する奈良時代の人、秦河勝はたのかわかつ後裔こうえいを称する。要するに長宗我部氏は秦の始皇帝の子孫だということだ。が、無論にわかに信じられるわけもない。

「ちぇ、はったりなんか言って。つまんない人ね」

「信じぬならそれでもいい」

「で、丁々発止の打ち合いはやめて、おしゃべりする?」

「否。天女よ、願わくば我を討ち給え!」

 と闘いは再開。やはり闘いは一進一退。ケリはなかなかつきそうになく、周囲の人々は唾を飲み込み行く末を思い不安になったり期待したり。

 長宗我部基親の刃、まさに竜巻のごとく朱美鈴を飲み込もうとする。白刃きらめき閃くたび、朱美鈴の身体を冷風が吹きつけ、時に服に切れ目が走り、髪の毛数本風に乗って飛んでゆく。

「お、おひい様、あれじゃ、あれを!」

 とたまらず雅瑪哈が叫ぶ。他ふたりもうんうんと焦りながら頷いている。

(あれって、もうほんとおじいさんな言い方ね)

 それはとっくに心得ている、と朱美鈴三老人に笑顔を見せ。しきりとその機会をうかがう。なにかあるな、と長宗我部基親用心しながらも、猛攻は止まらない。それでもどうにか朱美鈴攻めをかわして、間合いを取ろうとする。

 鋭い突きが迫る。並の者なら喉もとを貫かれ一巻の終わりだろうが、朱美鈴これを見切りさっと顔をずらし刃の切る風が頬をなでるのを感じながら、前へだっと駆け出し長宗我部基親の脇をすり抜ける。

「やるな、後ろへ逃げれば連続攻撃に遭っていたろう」

 嬉々として長宗我部基親振り向き、間合いを取って日本刀を青眼にかまえれば、朱美鈴剣を捨て無手になり両腕をだらりとたれ下げ無防備な格好をする。

(どういうつもりだ)

 と長宗我部基親は怪訝に思い眉をひそめる。よもや彼女はかなわないと勝負を捨て、捨て鉢になってしまったのか、と失望が胸に広がる。と思うや、両腕をだらりとたれ下げたまま、風に乗ってそよぐかのように、すうと長宗我部基親のもとまで足取り軽くあゆみよる。その白面はますます怪訝な面持ちになって歯噛みしつつも、相手の意図を読めず戸惑い、日本刀は動くか動かないか半端に揺れている。

 それを見逃す朱美鈴ではなかった、半端に揺れる日本刀の切っ先が己の目の前までというところまで迫るやいなや、左手の人差し指と中指で日本刀の切っ先を挟み込む。

 む、と長宗我部基親相手の手を斬らんとして下方向へ力を込めるとともに、朱美鈴の手、切っ先を放せば日本刀空を切って下がってゆく。その間に、さらに間合いをつめれば、長宗我部基親と朱美鈴は、互いの鼻先が触れ合いそうなところまで、近づいた。

 朱美鈴は長宗我部基親の瞳の中に、光と闇が明滅するのを見て。長宗我部基親は朱美鈴の瞳の中に、果てなく広がる蒼天と大海を見た気がし、なぜか胸がひどく弾むのを覚えるとともに、脳裏昔日の思い出が蘇り、彼はこの時心ここになくどこかの夢の彼方にいるようだった。

「破ッ!」

 という、夢を破るような掛け声。長宗我部基親の胸板に、朱美鈴の掌打が打ちつけられる。

「勝負あり!」

 と三老人叫んだとき、長宗我部基親の巨躯は砂浜に倒れて打ちつけられ。咄嗟にしゃがみこんで朱美鈴己の掌を相手の鼻先に突きつける。

「あなたの負けよ、東方求敗。願いはかなったかしら」

「いやまだだ」

 長宗我部基親は血走った目で朱美鈴を睨みつける。

「殺せ! 俺が望むのは、死だ」

 やられた。言い訳のしようのない、完敗だ。相手の無防備に、不覚にも戸惑ってしまった。闘いにおいて、相手の出方がわからないことほど、やっかいなことはない。相手がいかなる手練れであろうと、次の動きが予測できればこれを防ぎ攻守逆転の機を奪い取るのは難しくないが。次にどう出るか、が予測できなければ、こちらもどう動いてよいのかわからないので、攻も守も甘い半端なものになってしまう。 

 老人が言ったあれとは、まさにこの無防備による攻めのことだったのだ。無論、このために相当な下積みの修練が必要とされるのは言うまでもない。

「よっしゃ! これぞ『虎子になりて虎穴に入る』の技じゃ!」

 と麦克雷と雪鉄龍、雅瑪哈の三老人はやんやとはしゃぎ、まるで我がことのように喜びながら朱美鈴の剣を拾って、そのもとまで駆け寄る。それは漁村の人々も同じで、やんやの喝采を朱美鈴に送っている。対して倭寇どもは親分がやられて、呆然自失する。

 剣を受け取った朱美鈴は、あごをしゃくって起きるようにうながし。長宗我部基親は上体を起こしあぐらをかき、うつむき加減に、

「首を刎ねよ」

 と言う。

「俺は倭寇となって、お前たちの同胞をあやめてきた。今さら詫びるにも、詫びようもなし。さあ、恨みを晴らせ」

「……」

 長宗我部基親の言葉に、朱美鈴無言。詫びる、という言葉を発したことから彼は今まで倭寇働きをしたことに、罪悪感を感じているようだった。それでも、東方求敗のふたつ名が示すとおり、自分を斃す者を待ち焦がれながら倭寇働きを続けなければならなかったその哀れさ。力なく曲がる背中から哀愁を感じてならない。

 だが、長宗我部基親の瞳からは、もう闇は消え光が宿っていた。今彼の脳裏には、何が描かれているのだろう。

 三老人と漁村の人々は、斬れ斬れと言っている。倭寇どもは、固唾を飲んで事態を見守っていたが、数人だっと駆けより、ずざっと前のめりに滑り込みながら跪くと、

「斬るならわしらも斬ってくれ!」

 と言う。

「お前たち」

「殿。我らは一蓮托生。どこまでもお供いたしますぞ!」

 と口角泡を飛ばして叫ぶ。この倭寇どもは、皆長宗我部基親とともに土佐より落ち延び倭寇働きをしてきた土佐武士たちだった。

「殿の苦悩、我らが知らぬとお思いか」

「そうじゃ、どうせ我らも土佐へ帰れぬ身。ならば地獄の果てまで」

 長宗我部基親、ぎゅっと拳を握りしめ、口をつぐみ奥歯を噛みしめた。でなければ、今までのたまりにたまったものがあふれ出し無様な格好をさらしかねなかった。

 すると、倭寇どもが次から次へと跪き、

「お供」

「お供」

「お供」

 と叫びだした。

 その様は、もし朱美鈴や三老人に未来を見る能力があれば、さながら、長宗我部信親以下七百名の土佐武士が壮絶な玉砕を遂げた九州戸次川合戦のように思えたろう。

 どうにかこらえていた長宗我部基親であったが、ついにこらえきれず、滝のごとく涙をあふれさせ。三老人と漁村の人々も、何を今さらと言っていたのが、哀れをもよおしたか段々と黙り込んだ。なにより、倭寇に身を落としたとはいえ武人である長宗我部基親以下土佐武士たちを必要以上に辱めまいと、朱美鈴が周囲に睨みを利かせたのもあった。

「やれやれ、困った者たちだ。剣はひと振りで足りるかな? 余計な手間をかけさせず、各々で自刃してもらおうか」

 と涙で濡れたかんばせで朱美鈴を見上げて、長宗我部基親は苦笑した。そのかんばせから、闇は消えうせている。朱美鈴は、ふう、とため息をつく。

「ねえ」

「なんだ」

「広い海の向こうに、何があるのか、考えたことはない?」

「……?」

 何を言うんだと長宗我部基親は、きょとんとした。

鄭和ていわって人知ってる?」

「それがどうした」

 鄭和とは明が建国されて間もない頃の人で、西洋の大航海時代より先駆けての大航海を成し遂げた伝説的人物である。周囲の人々は朱美鈴の意図が飲み込めず、互いに顔を見合わせたりしてきょとんとしている。

「私は、狭い宮中暮らしで息が詰まりそうだったわ」

 と言うと、三老人たちは何を言うんだと慌てだすが、朱美鈴構わず続ける。

「武芸を磨いて江湖にくだって、自由に生きたかった。出来るなら、鄭和のように大海原を駆け巡りたい! でなきゃ、死んでも死に切れないわッ!」

「お、おひい様、何を言われますか」

 三老人はますます慌て、うろたえる。それを見る長宗我部基親、不思議そうにする。三老人は朱美鈴をおひい様と呼んでいる。三老人は旅人の装いをしてはいるが、気品もあり身分卑しからぬものを感じさせるし、当の朱美鈴も同じ。で、その朱美鈴の姓が朱であることを思い、あッ、と思わず声を上げる。

「お、おぬしまさか」

「え、うんそうよ。あたし、これでも一応明の公主なのね」

 と言いながら、今度は朱美鈴が寂しそうな顔をする。三老人も一緒に寂しそうな顔をする。土佐武士や漁村の人々は天地がひっくり返ったかのように仰天する。

 朱美鈴は今までのいきさつを、淡々と語った。

 彼女は明朝第十一代皇帝、正徳帝せいとくていの妹に当たる歴とした明朝の公主(姫)であった。三老人は明朝に仕える近衛師団の歴とした武人であった。朱美鈴はお転婆な性分で武芸を好み、三老人に頼み込んで武術を教わった。最初は渋っていた三老人だったが、素質豊かな朱美鈴に武術を仕込むことに夢中になり、ついには師匠を超えるほどの腕前となってしまった。

 弟子が師匠を超えることを、古代の賢聖荀子は「青は藍より出でて藍より青し」という比喩をもって語った。そこから、三老人は朱美鈴を「青藍公主せいらんこうしゅ」と呼んでいた。だから、朱美鈴には頭が上がらなかったのだったが。それでももどうにか宮中に連れ戻そうと、朱美鈴を追っていたのであった。

 だが、青藍公主が江湖に下り、鄭和のように大海原を駆け巡りたいという夢を持ったのは、何も見知らぬ地への憧れだけではなかった。この時の皇帝、正徳帝は堕落した生活を送り国政をないがしろにしていたため、各地で反乱が勃発。無論宮中にも腐敗がはびこり、朱美鈴はそれに嫌気がさしていた。これも、己の身分や立場をわきまえず江湖にくだった要因であったことを、三老人はよくわかっていた。ちなみに、この正徳帝の堕落をきっかけにして明朝の衰退がはじまったとされ、最後の皇帝、崇禎帝すうていていの時代(西暦1644年)に滅ぶまで、長い下り坂を転がるように明朝は衰えてゆくのであった。

(いずこも同じか)

 長宗我部基親は嘆息する。大陸の明朝は腐敗がはびこり各地で反乱が起き。日本も戦国の世として修羅が凌ぎを削っているが、これも時の政権、足利室町幕府の失政から起こった応仁の乱に端を発している。どうして人は、喜びや安らぎよりも、悲しみと苦しみを奪い合って喜んでいるのであろうか、と思わすにはいられなかった。

 しかし、なんという妙な縁で、明朝の公主と出会ってしまったものか。斬ってもらうなら、これほどうってつけの人物はいまい。と思うのだが、彼女はさきほどのような、妙なことを言った。長宗我部基親は、ふと、幼き日のことを思い出していた。

 ふるさとは土佐の居城、岡豊城。城の建つ岡豊山からは海が見えた。

「あの海の向こうには、何があるのだろう」

 という、昔日に抱いた好奇心と憧憬が、胸の中蘇ってくるのであった。

 が、三老人は朱美鈴に、

「わがままを言わず、どうか都(北京)にお戻りくださいませ。我らもともに、帝へお詫びをしきっとお許しをいただけるよう、力をつくしまするゆえに」

 としきりに頭を下げている。やはり公主ともあろう者が、江湖に下り国外に出ることをよしとしてはいなかった。

 だがそのとき、馬蹄の響きとどろくや、百騎ほどの軍兵が漁村になだれ込んできた。一旦は静寂を取り戻した漁村は再び恐慌に陥った。

「やあおひい様はここにござったか!」

 と大将らしき騎馬武者はさらに叫んだ。

「帝の命により、おひい様のお命を頂戴つかまつる!」

「なんですって!」

 朱美鈴の驚きようは、ひとかたならぬものがあった。三老人も同じように、驚く。

「なぜおひい様を。わけを聞かせよ」

 三老人の雪鉄龍が負けじと叫び返せば、大将鼻で笑ってあざけるように言った。

「ふん、白髪どももそろってしらばっくれおるわ。畏れ多くも謀反の企みをいだき、ならず者と徒党を組み国家転覆をはかろうなど。英明なる帝が知らぬと思ってか!」

「そんな、あたしはただ……」

「問答無用ッ!」

 大将は大刀を采配がわりに振り回し、かかれと号令を下せば、軍兵どもはなんと土佐武士はおろか漁村の人々にまで襲い掛かり皆殺しにしようとする。

 三老人は朱美鈴を守ろうと三方に囲み、拳法の構えをとる。長宗我部基親は、すわやと日本刀を拾い上げ、明の軍兵たちに向かい駆け出す。

「やめて、やめて!」

 と朱美鈴は叫ぶが、軍兵は倭寇であった土佐武士や漁民の別なくお構いなしに殺戮を繰り広げてゆく。土佐武士たちもやすやすと討たれぬと、猛烈な抵抗をするが、いかんせん相手は本格武装し鍛え抜かれた明の正規軍。こちらは倭寇に身を落とした身なれば粗末な軍備にくわえ、多勢に無勢。不利なことこの上なく、ひとり、またひとりと討たれてゆく。

「ちえぇ!」

 とさすがは長宗我部基親、その掛け声大喝し日本刀ひらめいて勇敢に闘い、土佐武士や漁民たちをかばいながら、明の軍兵を討ち取ってゆく。しかし、この奮闘もいつまで続くのか。

「そんな……」

 朱美鈴の目から、とめどなく涙が溢れ出す。どうしてこんなことに、と。そこに襲い掛かる軍兵、三老人は力の限りを尽くし、おのおの磨かれた武術でそれを返り討ちにするも、やはり老人であることにくわえ多勢に無勢、次第に息も切れだし動きに精彩が欠けてくるようになる。

(もう、終わっちゃうの……)

 己の生きる道を見出せず、兄から謀反人として殺されてしまう。そんな終わり方を遂げなければいけないのか。朱美鈴の胸に無念さが沸き起こる。

「朱美鈴!」

 長宗我部基親が叫んだ。

「ゆこう、海に!」

 その叫び、耳朶に響き心まで染み入った。長宗我部基親は、道を見つけた。朱美鈴とともに、鄭和のごとく大海原を駆け巡る、という新しい道を。

「基親……」

 ぽそっとつぶやく。

 彼は今、朱美鈴のために血路を開こうと必死に闘っていた。土佐武士もまた、同じように新しい道をゆくために血路を開こうと必死に闘っていた。

(もうこんな腐った国とはおさらばじゃい!)

 と三老人も同じだった。

 朱美鈴は、涙を拭い、意を決して駆け出した。向かう先には、長宗我部基親がいた。

「大将を!」

「応!」

 朱美鈴と長宗我部基親、ふたり、大刀をかかげる大将に向かい駆けた。その露払いと、土佐武士と三老人、雑魚どもを討ち払ってゆく。

「おのれ小癪な」

 大将、大刀を振るいふたりを迎え撃つ。だがふたりは目を合わせうなずき合うと、まず朱美鈴が馬脚を斬った。足を斬られた馬は苦しげにいななき横に倒れ、大将は悲鳴を上げて地に打ち付けられる。そこへすかさず、長宗我部基親の日本刀の一閃。大将の首を刎ねた。

 まさに以心伝心。こんなときではあったが、長宗我部基親は朱美鈴に同胞を斬らせまいと、己が大将を討ち取り。そのために朱美鈴は馬脚を斬ったのだった。

「討ち取ったり!」

 と長宗我部基親、大将首をかかげれば、軍兵どもは恐慌をきたして算を乱し蜘蛛の子を散らすように逃げ出し。

「ざまをみよ!」

 と三老人に土佐武士たちは、会心の雄叫びを上げた。

 朱美鈴と長宗我部基親は、笑顔で互いに見つめあっていた。

 ともに見つめあう瞳の中には、果てしなく広がる蒼天と、大海原が映し出されていた。


東方求敗 おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点]  ただただ、感嘆するばかりです。  チャンバラというか、剣客物と言いますか似たような話は僕も書くのですが自作と比較してもはるかに完成度が高い一作です。正直、やられたと言う気分ですね。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ