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5話

 今俺は絶対に炎に包まれていたはずだ。それが無傷? そして、とっさに発動させてしまった右手と左手を入れ替える能力。謎は深まるばかりだ。なんにせよ、助かったのか?


「グガァァァァァ!!!」


 必殺のブレスがかき消されて動揺しているのか、ドラゴンが先ほどより大きな口を開き、吠えている。

 これにビビってどっか行ってくれ。何かの奇跡でブレスが消えただけで、もう一度喰らったら確実に死んじまう。俺にあんなブレスを消し去るような能力なんてないんだからな。


「おらぁ!! 見たかっ!! 俺のほうがお前よりも強いんだぞ!!」


 精一杯の虚勢を張る。

 ドラゴンに果たして通用するのか謎ではあるが、このまま黙っていてもう一度ブレスを繰り出されるのが最悪のシナリオだ。それだけはなんとか回避しなければならない。


 しっかし、今のは何だったんだよ。その謎さえわかれば俺はブレスを防ぐことができるかもしれない。実はじいさんがこのゴミみたいな能力だけじゃ異世界を生きていけないって言うことで隠して能力を授けてくれているとかないか? それは、自分のいいように解釈しすぎか。


 ドラゴンは再度俺の様子をうかがっているのか、仕掛けてくる様子がない。

 本来なら今のうちに全力疾走で逃げたいところだが、空を飛べるドラゴンと対して足の速くない俺、どちらに軍配が上がるかは一目瞭然だ。そんな無謀なことをして背中から攻撃を受けたりしたらただの馬鹿だ。俺はまだ助かる道を諦めたわけじゃない。なんとかして、この絶望的な状況から助かって見せるんだ。たとえどんな手を使っても俺は生き延びて見せる。


「誰かたすけてくれぇぇぇーーーー!!!! ドラゴンだぁぁぁぁーーー!!!」


 渾身の力で叫んだ。

 近くに誰かいるんだったら俺の叫び声を聞いて、助けに来てくれ。

 この広大な草原に、それも俺の声が聞こえる範囲に誰かいるなんて思えないがこういう一見意味のないような行動が逆転の一手になる可能性を秘めてるんだ。俺は無駄だと思ってしているわけじゃない。これも、俺が助かるかもしれないというわずかな可能性にかけているんだ。


「たすけてくれぇぇぇーーーー!!!! 誰かたすけてくれぇぇぇーーーー!!!!」


 何度も叫んだが、一向に助けがくる気配はなかった。


 この作戦は失敗見たいんだな。

 ドラゴンも俺が奇妙な行動をしているからか、観察をやめずに待機してくれてるんだよな。もしかして、このまま時間を稼いでいればワンちゃんあるんじゃないか? ドラゴンに何をしてくるかわからないって警戒させておけばこいつが攻撃を仕掛けてくることもないんじゃないか?


「グォォォォォ!!!」


「え? ちょっと待ってくれ!!」


 我慢の限界が来てしまったのか、またもや大きな口を開け、炎をため込み始めた。


 見る見るうちに炎は膨らんでいき、今にも俺に向かって発射されようとしている。


 だめだ……今度こそ終わった。さっきはなんで炎が消し飛んだのかわからないんだ。神様が隠された能力を授けてくれていることにかけて受けてみるか? いやいや、あまりにもリスクが大きすぎるだろ。どうせ、あんな感じで俺を送り出したんだ、そんな都合のいいことあるわけがない。そうなると、ほかに考えられる要因はあるのか? ……あの時、俺は右手と左手を入れ替えてたよな……もしかして、この能力のおかげで助かったんじゃないか? 意味はわからないが、それ以外に思い当たる節がまったくと言っていいほどない。どういう原理で何が起こったのかはわからない。でも、今はこの可能性に縋るしかない。


「グォォォォォ!!!」


 溢れんばかりに貯められた炎が俺めがけて発射された。


 先ほどとまったく同じ死という恐怖が俺の思考を鈍らせる。

 でも、俺はこの能力を即座に発動させるために練習したんだ。今なら、無意識でも発動できるはず。


「今だぁぁぁぁーーー!!!」


 パシュン。


 俺が能力を発動させた瞬間に目の前に迫っていた炎は消えてなくなった。


 やっぱりこの能力が炎を消していたんだ。

 なぜかはさっぱりわからない。もしかしたら、これは単なる右手と左手を入れ替える能力じゃないのかもしれない。でも、俺が何度も繰り返すし使っていた時はそんな印象はまったく受けなかった。つまり、この土壇場で俺の能力が進化したのかもしれない。


 これで、はっきりした。俺にはこのドラゴンのブレスは通じない。俺はドラゴンに殺されずにすむんだ。生き残ってやるという俺の気合いが勝ったんだよ。


「よっしゃぁぁ!! 見たかっ!! これが俺の力だ。お前も諦めてどっか行きやがれ!!」


 ドラゴンも自分の攻撃が通じない相手にこれ以上攻撃を仕掛けてきたりはしないはず。

 俺はもうこいつに負けない。確かに、俺がドラゴンを攻撃する技はないかもしれない。でも、それはこいつも同じことだ。両者の攻撃が通らないんなら勝敗は一生つくことはない。後は我慢比べだ。俺はこの勝負にかって、異世界で自由に生きるんだ!! 見てやがれよ、じいさんのくれたゴミ能力で生き残って見せる。

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