9話 異常事態
「さて、早速だが、100匹ゴブリンを倒した証拠を見せてくれないかな?もし本当ならかなり危険だから」
急に、真面目な顔になってそう言ってきた。もしかしたら疑われているのかもしれないな。
返事をして袋からゴブリンの耳を全て出した。
「うん、全て今日の内に倒された物だね。これは群れで行動していたのかい?」
すごいな耳を見ただけでいつ倒されたのか当てたぞ。
「そうだ。死体ごと持ってきたゴブリン•メイジのものもある。こいつが指揮を取っていた」
「これは、ゴブリン•メイジだけじゃなくて、ゴブリン•ソルジャーの耳もある。群れなら、かなり脅威度が高い」
さっきも真面目だったが、今はかなり険しい顔をしている。
「それにしてもこれは、1人で全て倒したのかい?」
「全て1人だ。それより耳を見ただけで種類や、どれだけ経ったものか分かるのか?」
「それは僕だからだね。目はいいし、目利きもできるから。そのために僕が直々に対応してるんだよ」
なるほど、緊急事態っていうのもそうだが、目利きができるから、こうしてギルドマスターと話せているのか。
「それにしてもあの森に群れが出たのは異常だ。調査をしないといけない」
どうやら、あの森にゴブリンの巣があるかもしれないとのこと。ゴブリンは、ゴブリン•キングが生まれると巣を作り、数がいきなり増え、上位種も生まれやすくなるらしい。
魔物の生まれ方は、2種類ある。繁殖で生まれる場合と、魔力溜まりから生まれる場合がある。
ゴブリンは繁殖能力が高く、しっかりと数が増える前に倒さないと、キングが魔力溜まりから生まれやすくなるらしい。そしてキングが生まれると、上位種も生まれやすくなる。今回は、森の奥の方でゴブリンが多く発生したため、対処が遅れているようだ。
「今日は助かったよ。君のおかげでまだ早めに対処できそうだ。お礼にランクを上げておくよ」
「いいのか?」
ランクってもっと上がりにくいものじゃないのか?
「ゴブリンの100匹の群れを倒せる人材を、Fランクのままにして置けるわけないじゃん。100匹の群れを1人で倒せる冒険者はDランク以上だから、これでもまだ低いぐらいだ。
本当はもっと上げたいんだけど、急に上げすぎると贔屓っていう人もいるからね」
なるほど、確かに自分が苦労して上げたランクを、いきなり新人に抜かされたりしたら嫌だな。
受付のところでランクアップの手続きをすると言われたので出ようと思ったが、止められた。
「ランクアップの前に職業選択していったらどうだい?」
「職業?」
「職業というのは、レベルが上がった時にステータスの上がりが良くなったり、スキルのレベルが上がりやすくなるもののことだよ。スキルによってなれる職業も変わる。やってみた方が早いと思う」
職業は魔道具で決められて、この冒険者ギルドにもあるらしい。
それにしても職業ってのは人間が魔道具で決めれる物なのか。魔道具は便利だなと思っていたが、どうやら違うらしい。
「そんなの、人間が作った魔道具じゃできないよ。神様がくれた魔道具で決めれるんだよ。まあ、それを参考にすれば同じ物を作れるとは思うけどね」
じゃあなぜ作らないのかと思ったが、神からもらった魔道具を複製して、罰が当たりたくないからだという。
ちなみに、あまり神から罰が下ることはないが、天罰が下ることはあるらしい。
「さあ、ここが職業選択の部屋だよ」
職業選択の部屋は、壁も床も天井も、黒くなっていて、その部屋の中央に、縦横1メートル程の、光っている丸い水晶のようなものがある。
「触れてみて」
そう言われたので触ってみると、水晶がさらに光って、色々文字が出てきた。そこには、
剣士 変形術師
そう書かれていた。