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【やり直し軍師SS-610】知られざる戦い(10)

今回の更新はここまで!

書籍版五巻、コミック第二巻発売記念の特別なエピソードでした。

お楽しみいただけたのなら嬉しいです!


次回更新は4月30日からを予定しております。

またよろしくお願いいたします!


SQEXノベル書籍版 第五巻

ガンガンコミックスUP! コミック第二巻


好評発売中でございます! お買い求めいただけるとひろしたが飛び上がって喜びます!

こちらもどうぞよろしくお願い申し上げます!


「―――とまあ、全てを予見したようなレイズ殿に驚きを隠せず、理由を聞いたところ、戦場は盤上遊戯の読みに似ていると。それを聞いて、私も早速盤上遊戯に本腰を入れたものです」


 淡々と語るボルドラス様。


 けれどその口から出た話は、非常に貴重な話だった。


 今や僕も結構偉い立場にあるので、閲覧が難しい書類も目を通しているけれど、今の話は本当に記憶にない。


 誇張なしに、ボルドラス様だけが知っている幻の戦い。


「それで、どうなったのですか?」


 フレインが続きを促すと、


「いやぁ、盤上遊戯は実に奥の深いものですなぁ。レイズ殿にも指南していただきましたが、あのように完璧な負け方をするとは思ってもおりませんでした」


「あ、いえ。盤上遊戯の話ではなく、野盗討伐の方の……」


「おっと、これは失礼。歳をとると話が逸れて仕方ないですな」


 苦笑して一度咳払いをしたボルドラス様。


「我々が現場に到着すると、レイズ殿の言葉の通り、野盗どもは必死になって荷を己らの荷車に積み替えている最中でした。中身はただの石だと言うのに。散々苦渋を飲まされた我らとしては、痛快な光景でございましたな、そしてその場でもレイズ殿の慧眼は発揮されたのです」


「野盗の棟梁をすぐに特定したんですか?」


「さすがはロア殿。まさにです。我らが到着すると、混乱する野盗を尻目に逃げ出した男を捕らえるようにとレイズ殿が命じ、其奴が騒ぎを起こしていた張本人でありました」


 ボルドラス様はそこで一旦言葉を切り、お酒で口を湿らせると、少しだけ遠い目をする。


「……まこと、レイズ=シュタイン殿は傑物であった。そして同時に、あの、サクリという男も」


 ボルドラスの不意の一言に僕は驚く。唐突に出てきたもう一人の異才。僕の反応を見て、目を細めたボルドラス様。


「野盗の一団を壊滅させると、それ以降、ゴルベルは野盗を使った陽動をぴたりと止めたのです。こちらが策を看破したのを見抜いて、早々に策を捨てたのでしょう。そして今思い返せば、おそらく裏で糸を引いていたのは……」


「そうですね。サクリだと思います」


 サクリらしいやり口だ。誰も知らない場所で、レイズ様とサクリの知恵が激突していた。戦いの規模は小さくとも、そういう意味合いで言えば、伝説になってもおかしくないような一戦である。


 僕の密かな興奮を横目に、ボルドラス様は大袈裟にため息を吐く。


「しかしあのサクリという軍師、本当に厄介な人物でしたな。10年近い歳月をかけて、もう、野盗による撹乱はないと思わせておきながら、こちらの思考を見透かすように、再び利用するとは……」


 ボルドラス様の言葉の意味に、僕はすぐに気づく。10年近く経って野盗を利用した策略、それはエレンの村の廃鉱山の件に違いない。


 僕が初めて戦場に出たあの一件。


 本来の歴史では、よくある野盗の騒ぎと小勢を送った第四騎士団は、要塞化した廃鉱山で、野盗に扮したゴルベル兵によって敗北している。


 なるほど。第四騎士団が小勢を向かわせた理由の一因が、そんな過去の話にあったとは思わなかった。


「幸いにして、エレンの廃鉱山への出陣はレイズ殿の待ったがかかり、ことなきを得たが、もしもあのまま手勢を送っていたら、後手を踏まされていたのは間違いないでしょう」


 しみじみと語るボルドラス様は、改めて僕を見る。


「そして、エレンの一件を見抜き、我らの出陣を止めさせた御仁こそ、ロア殿であったと考えると、巡り合わせというのは面白いものと思わざるを得ません」


「……そう、ですね……」


 僕がたまたま耳にしたエレンの出陣。これが全ての始まりだったのだから、僕もまた、巡り合わせを感じざるを得ない。


「まあともかく、敵の策は一つ潰したものの、なるべくゴルベル側に知られぬほうがいいだろうというレイズ殿の助言もあり、そもそも王の手前レイズ殿の名前も出せず、記録はこうして私の手で葬られていた、というわけなのです」


 僕は先ほど預かった書類に目を落とす。なんて扱いづらい情報だろう。


 この中には、レイズ様が王にギリギリ虚偽の申請をした件も、ボルドラス様が情報を秘匿していたという報告不備の事実も含まれている。


 昔のこととはいえ、王から「またボルドラスか」と言われかねない。


 僕がどうすべきか頭を悩ませている間に、ラピリアがボルドラス様に声をかけた。


「それで、レイズ様はその後、視察を行なって帰られたのですか?」


「然り。アーウィンのことを気に入って、色々と連れ回しておりましたぞ。そういえば、『あの遺跡群は面白い』と口にしておられた」


 もしかするとその頃から、大遠征のこともうっすらと想定していたのかもしれない。レイズ様ならあり得る話だ。全く、本当に規格外な人だと改めて思う。


 一瞬、なんとなしに会話が途切れ、その場に沈黙が漂った。


 心地よい風が吹き、僕らの頭上でクラザの花びが舞う。


 僕はレイズ様がこの場に一緒にいるような感覚を覚え、舞い上がる花びらを追って天を仰いだ。



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― 新着の感想 ―
レイズ様の話が読めて嬉しかったです。 ありがとうございました。
報告書はそっと当時の記録書に紛れさせておこう それがきっとみんな幸せ
王「またレイズか」 だと思います
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