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【やり直し軍師SS-608】知られざる戦い(8)


「首尾はどうだ?」


 ロッゴロッゴの問いに対して、配下がやや興奮気味に答える。


「予定通りで! 豪華な馬車がなんと8台も! ありゃあたんまり積んでますぜ!」


「ばか! アジトの中ででかい声を出すなと言ってんだろうが! 洞窟に響いてしょうがねえ」


 そうは言いながらも、ロッゴロッゴ自身もつい声がデカくなる。これほどの獲物、しばらくなかったのだから仕方がない。


「で、予定通りに来そうか?」


「へえ。上手く誘導もしておきましたんで、明日にでも例の狩場に来ることは確定でさ」


 誘導というのは、道にちょっとした立て看板を立てただけの話。それも、『この先危険』『沼地あり』など、使い回しのできる代物。


 だかこれが、結構効果的であった。


 ゼッタ平原は広い。辺りの地理に詳しくなければ、わざわざ危険を犯す必要はないのである。


「狩場の準備は?」


「こっちもバッチリで。一晩中桶を抱えて往復してたんですから、軽く足で踏んだだけでこれですぜ」


 配下は体を大きくふって、大袈裟によろめいてみせた。


 広大なゼッタ平原は、どこまでも平坦というわけではない。川もあれば、多少の起伏もある。偽看板ではないが、実際に沼地も点在している。


 そんな中でロッゴロッゴ達が“ここぞ”という大きな仕事の時だけ使う、とっておきの場所があった。


 そこはかつて川か沼があったらしく、周囲に比べてやや低地になっている。


 これだけでも相手の死角を生むことができるものの、この程度の地形ならば、他にもいくつもある。


 この狩場が特別なのは、その上を石畳の道が通っている点だ。


 見た目には分からないが、狩場の地面は水分を含むと片一方だけが沈む。道に敷いた石畳も傾いで、特に大型の馬車は進むだけでも難儀な状況に陥るのである。


 ここ数日、雨は降っていない。そのためロッゴロッゴは配下に命じて、近くの川から水を運ばせ、狩場の地面にしっかりと水を吸わせてあった。


 これで馬車が狩場に差し掛かれば、急に動きが止まるだろう。進むに難儀して、獲物の注意が悪路に向いたところが狙い目。一気に襲いかかって奪い取る。


「荷車は?」


「もちろん。草場に隠しやした」


 馬車ごと奪えればいいが、あの狩場から馬車を動かすのは骨だし、目立つ馬車は足がつきやすい。


 その場でお宝だけ荷車に積み替え、さらに馬車の馬ももらって、そいつに引かせて逃げる。


 馬の数が足りなければ、あとは人力。


「何台隠した?」


「10台です」


「馬車は8台なら、それじゃあ足りねえかもしれん。もう10台どこかからかき集めてこい」


「あと10台もですか? でも、どっから」


「少しは頭を使いやがれ。その辺の集落から盗んでこいや」


「へいっ!」


 配下が慌て出てゆくと、ロッゴロッゴは残っていた幹部に命令する。


「何人か先に行って、見張っとけ」


「はい。……お頭はどうするんで?」


「俺は荷車が準備出来次第、狩場に向かう。もしも獲物が予定より早く到着しそうになったら、すぐに知らせろ」


「へい。了解です」


 ロッゴロッゴは基本的に、最後の最後に出てゆくのを好む。何かあったときに、すぐに逃げられるようにだ。


 今回の話も、まだ罠の可能性も捨ててはいない。少なくとも、馬車を制圧するまでは遠巻きに様子を見つつ動くつもりである。


 誰よりも臆病であること。三下はそれを馬鹿にするが、本物の悪党は臆病でなくてはならない。


 それがロッゴロッゴがここまで生き残っていた一番大きな理由であるのだから。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 翌日、予定通り獲物がやってくると聞いて、ロッゴロッゴは狩場から少し離れた場所に陣取った。


 そのまましばらく生暖かい風に吹かれていると、待望の獲物がやってきた。遠目にもはっきりと馬車の一団だと確認できる。


「……護衛は……10人程度か」


 これも報告通りの人数だ。ルデクの騎士団は本当にゴルベルにかかりきりで、こいつらは護衛の協力をとりつけられなかったのだろう。


 眺めている間にも一団は着実に狩場に近づいてゆく。


 そうしてついに、その場所へ。


 窪地のため、ロッゴロッゴからは馬車の屋根しか確認できないが、その屋根が途中でぴたりと止まり、馬車馬が嗎を上げた。


 その声を合図に、ロッゴロッゴの配下たちは声も上げずに馬車の一団に襲いかかる。


 そうしてわずかな時を置き、ロッゴロッゴの元に、


「賊だ! 野盗が出たぞ!」


「た、助けてくれ! 俺は雇われただけだ!」


「おい!! 逃げるな、戦え!」


「だからこんな時期に通りたくなかったんだ! やってられるか!」


 などといった声が届き始める。獲物は随分と弱腰のようだ。だが、焦るな。


「逃げるなといっている! くそっ!!」


 指揮官と思しき男の声が何度か聞こえると、静かになった。直後、聞きなれた、酒焼けした輩共の歓声が上がる。


「お頭、やりましたぜ!」


 配下の一人が馬車の屋根に乗り、こちらに声を張りあげる。馬鹿が。でけえ声を出すんじゃねえ。誰かに気づかれたらどうするんだ!


「さっさと荷物を運び出せ!」


 思いとは裏腹に、ロッゴロッゴもまた、声を張って指示を出すのだった。




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― 新着の感想 ―
ロッゴロッゴ様ホントにめんどくさいタイプの敵だな!傭兵崩れかなんかだろうか。
レイズ「さぁ、遠慮せずに積み荷の地獄逝き片道切符を受け取ってくれたまえ」
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