【やり直し軍師SS-591】お買い物(上)
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北ルデクの状況がやや落ち着き、僕らも頻繁に王都と行き来しなくて良くなった頃。
久しぶりに少しまとまった休みが取れたので、僕はラピリアに「買い物に行きたいんだけど」と伝える。
「買い物? たまにはいいわね。何が欲しいの? 本?」
「本じゃないよ。できれば王都以外で買いたいんだけど。……小旅行気分で、二人でゲードランドに行かない?」
「私はいいけれど、護衛なしだと色々言われない? ウィックハルトでも連れてく?」
「いや、実はね……」
僕の提案に納得したラピリア。そうして翌朝早朝に、僕らはゲードランドに向けて出発したのだ。
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ゲードランドにやってくるのはいつぶりだろう? ここのところ北にかかりきりだったから。
相変わらずこの街は賑やかしい。様々な人種の商人が行き交い、王都とはまた違った活気がある。
厩にアロウ達を預けて、僕らはしばし散策。流石に王都と違って、すぐに僕らに気づく人はいない。最近は王都だと少し歩くだけでも大変なのだ。
もしも「おや」と思う人がいたとしても、有名人である僕らが、たった二人だけでうろついているとは思わないだろう。誰もこちらに注意を向けることはなかった。
「この辺は随分と様変わりしたのね」
ラピリアが指差したのは真新しい市場が広がる場所。どうやら東方諸島の品物を中心とした市場のようだ。
なるほど、こんな感じになったのか。
僕らが感心しながら足を踏み入れたそこは、かつて『裏町』と呼ばれ、ごろつきが集まる吹き溜まりだった場所。
前にちょっと色々あって、……具体的にはルファが裏町のごろつきに攫われて、ザックハート様が激怒して、地域そのものが吹き飛んだ。
物理的に更地になったこの場所に出来たのが、この真新しい市場である。
建設を仕切ったのはザックハート様ではなく、海軍司令のノースヴェル様だろう。微に入り細を穿つような、繊細で計算された街並みが、それを感じさせる。
ザックハート様も決して雑なお方ということはないけど、まあ、ここまでの繊細さは正直ないし、そもそもリフレア関連で慌ただしかったから。
市場に並んでいるのは、帝国の港を経由した品々だな。市場に並ぶ品物の数を見れば、帝国の港のほうも順調だということがよく分かる。
「うん。ちょうどいいや、東方諸島のなら珍しいだろうし、ある程度はこの市場で買い求めようか」
「ええ。賛成」
今回も買い物の目的、それは親しい人たちへの贈り物である。
少し状況が落ち着いた今、リフレアが滅ぶまで僕を支えてくれたのはもちろん、北ルデクの安定にも尽力してくれたみんなに、ささやかながら贈り物をしたいなと思ったのだ。
王都だとプレゼントを送る相手が誰かしら護衛についているし、こういうのはこっそり買ってびっくりさせたいよね。
買うだけ買ったら、帰りはノースヴェル様に頼んで人を貸してもらう予定。第五騎士団長のベクシュタット様に頼んでもいいのだけど、それだと話が大事になりそうだし。
ああ、そうだ。ベクシュタット様やノースヴェル様にも何か買い求めようか。
「さてじゃあ、誰のものからにする?」
なんだかんだで、ラピリアとこうして二人だけでのお出かけはちょっと珍しい。ラピリアも少しご機嫌である。
「うーん、時間はたっぷりあるから、一軒一軒見て回って、その中で誰かに良さそうなものがあれば、買う方向でいいんじゃない?」
「なるほど。いいわね」
というわけで、一番手前のお店の扉に手をかける。建物は全て同じデザインだ。ざっと見たところ、内部を繋げて二軒分の広さを確保してそうなお店もある。
これはあれだね、全てを賃貸にして、海軍が賃料を回収している感じっぽいな。
僕が知る限りでは、この地域の開発に際して、王都には費用の請求が来ていない。つまり海軍が独自で資金を捻出したのだろう。
それをこうして回収している。うん。独立採算制の海軍らしいやり方だ。
実は王都で、海軍についてもそろそろちゃんとした形で組織に組み込んだ方がいいのでは、という話が上がっている。
が、僕が反対した。結構強めに。
確かに先の未来では、そう言ったことも考えなければならないかもしれない。でも、危険と隣り合わせの海での仕事だ。ある程度の自由と利益がなければ成り手がなくなってしまう。
そうだ。もしもまた同じようなことを言う人物が出てきたら、しばらく海軍を手伝わせてみようか。やっぱり、まずは現場を知っていないと、言葉に重みがないからね。
「どうしたの? 入らないの?」
僕が余計なことを考えている間に入店するラピリアのあとを、僕は慌てて追いかけたのである。




