表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/542

【やり直し軍師SS-59】リヴォーテの日記③

話のキリが良いので、本日少し短めです〜


 少し焦げた皮が、まだパチパチと音を立て、香ばしい薫りを漂わせる。


 ナイフをその身に入れると、パリリと小気味良い音と共に簡単に裂け、美しい白い身が露わになった。


 俺は、ゆっくりと身を口へと運ぶ。


 ほろり。


 柔らかな身が口の中で崩れた。


 川魚特有の風味。同時に鼻を抜ける清涼感が何とも不思議で面白い。塩加減も絶妙。僅かな香辛料と塩だけで焼いた簡単な料理のはずなのだが、全ての加減がうまく融合し、帝都で食した手の込んだ料理にも負けてはない。


「ーーーー美味い」


 本能的にこぼれ落ちた言葉。物静かな店主が黙って頭をさげる。


 今、この空間には他に何も要らぬであろう。


 


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「おい、寝てんのか?」

「何ぼんやりしてるんだリヴォ太郎」



 俺と店主の無言の語らいを邪魔した無粋な奴らを、俺はうるさいとばかりに睨め付ける。尤も、こいつらにこのような大人の空間を理解はできぬか。



「なんか美味えな、これ」

「たまには魚もいいな!」


 ここはジュレというルデク西部にある町だ。近くにはマルレ川なるルデクでも有数の川が流れており、川魚料理を名物にしている。


 なお、このマルレ川の下流がハクシャらしい。


 今回リヴォーテ達がこの街に来たのは、ゴルベルまでの街道整備の暫定的なルートが決まったためだ。


 ロア達が実際に現地を視察して最終的な決定を下すため視察に出るというので、リヴォーテも同行することにしたのである。



 ちなみに今回はロア一行には珍しく、中々の兵士を引き連れた、大所帯での移動である。


 理由はゼランド王子及び、ゴルベル王の子、シャンダル王子が同行しているから。


 此度の街道の視察においては、国境付近までゴルベル王が出張ってくるらしい。つまり、せっかくなのでシャンダル王子と引き合わせてやろうという配慮であるようだ。


 そしてゴルベル王が出てくるのなら、ルデクとしても相応の使者を立てようとなり、前回も親善の代表者であったゼランド王子が選ばれた。


 現在2人の王子やロアは、この地の領主と会談中である。


 俺は別にそこまで立ち会うつもりはないので、楽しみにしていた……ではなくて、仕方がないので時間つぶしにこうして飯屋にやってきた。


 別に誘ってもいないのに、というかむしろ来るなと断ったのに双子がついて来たのは誤算であったが、今のところ料理には満足している。


 ここにルファがいれば双子も多少は大人しくなるのだろうが、今はロアと共に街の領主の元にいた。


 そのルファであるが、今回はゼランド王子が同行を希望しての帯同である。


「良ければ帰りに王族の別荘に立ち寄りませんか?」と。


 王子としては精一杯のお誘いであったろうが、


「いいよー、皆んなで行こうか! 楽しみだね!」


 というルファの微妙な返答に、嬉しそうでもあり、残念そうでもあった。


 なので今回の旅程としては、まず、街道の確認、そしてゴルベル王との会談、最後に、王族の別荘に立ち寄るというのが主な用件となる。


 俺にとっては正直、最後の別荘はどうでも良い。しかしロアも行くとなれば同行しておくべきであろう。


 王族の別荘か……


 どのような料理が出るのだろうな? やはり地物を使った料理だろうか。



「おい、リヴォ太郎」

「食わないならよこせ」


 俺が考えに浸っている間に、次の料理がやって来ていたようだ。見ればすでに双子の皿は空になっていた。


「ふざけるな。食べるに決まっているだろう」


 俺は双子から皿を守るように隠しながら、新たな絶品料理を口に運ぶのであった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 孤独になれないグルメ(^^)
[一言] 「鋭見」の二つ名が泣くぞ(笑)
[気になる点] リヴォ太郎漫遊記なのか、双子の騒動記なのか・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ