【やり直し軍師SS-566】リヴォーテの日記(27)
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます!!
読者の皆様にとって、素晴らしい一年になりますように!
「まず、何はなくとも料理ができなくては話にならん」
俺の宣言によって、その日よりオゼット嬢の料理修行が始まった。
ルファと先方の交渉により、オゼット嬢は10日間は宮殿に滞在することになったので、その間にどうにかしなければならない。
とはいえ本来、一朝一夕で料理の腕など上がるものではないのだ。僅か10日で、料理人として遜色ない腕を身につけるのは不可能に近い。
しかし、それは通常の場合だ。
こちらには一つ、切り札がある。
未だ王都では他に作れる料理人がおらず、それなりに仕上げることができれば王都における第一人者を名乗れる料理が。
無論、カロのことだ。
俺たちは可能な限り時間を作って、オゼット嬢のカロの特訓に付き合った。場所は宮殿併設の予備の調理場。
「最初の頃、ここで瓶詰めを作ったりしてたんだよね」
「なんだと? では、この場所があの瓶詰めの誕生の地か?」
「違うよ。最初は第10騎士団の食堂で作って、倉庫に置いてたんだけど、なんか、食堂だと色々まずいってなって。それで保管も含めてここに移動したんだ!」
「それはそうだ。あのような技術を衆目のある場所に晒していたと言う事実の方が信じがたい」
「でも、ロアもそんなに大事だと思ってなくて、びっくりしてた!」
「全く、お前たちは……む。待てオゼット、その香辛料はもう少ししっかり砕いて、粉にするのだ。そうすることでより風味が良くなる」
「はい!」
料理をすることに対する情熱は本物だ。一度も刃物を持ったことすらなかったオゼット嬢であるため、最初は何度も指を切ったりしたが、それでもへこたれることなく急速にその腕を上昇させている。
「カロはなんとかなりそうだけど、パンはどうするの?」
途中でルファがそんなことを聞いてきた。本来であればカロパンまで到達したいところだが、まあ不可能だ。それに……。
「此度はパンなしでかまわん。ただその分、よりトゥトゥとのバランスや、他に入れる具材も吟味したいところだ」
俺はオゼット嬢に調理方法を伝授しつつ、具材の選定に力を注ぐ。
試せば試すほど、本当にこの料理の懐の深さを痛感している。まず恐ろしいことに、基本がしっかりしていれば、何を入れても“失敗”までには至らない。大体なんとなく整ってしまうのだ。
なるほど、これが家庭料理として浸透した理由がよくわかる。そしてその点において、ルデクの家庭料理、ポージュと共通している。
「む、ルファ、それはなんだ?」
「これ? お魚だけど?」
「魚? 海の物を混ぜるのか?」
「試してみよっかなって」
なるほど、具材は根菜と肉とばかり思っていたが、魚介という選択肢もあるのか。俺もまだまだだ。
ルファが焼いた魚をほぐし、そこにオゼット嬢が大量に作り続けているカロをかけて混ぜる。
本来であれば一緒に煮込みたいところだが、まずは具材との親和性を試すために、このような方法を選択してみた。
よく混ぜた焼き魚とカロをパクりと口にしたルファ。
「……ううん?」
「どういう反応だ、それは? どれ、俺にも食わせろ」
ルファが混ぜた残りを口にしてみれば、
「……ううん?」
悪くはないが何か変だ。
「……これ、魚に塩が振ってあるのではないか?」
「……うん。そうみたい」
「塩が余計だな。味付けをしていない魚介類はないのか?」
「ちょっと探してみるね!」
「うむ。あ、オゼット、そこ、火力に気をつけよ。お前は総じて火力を強くしすぎる傾向にある。焦げるぞ」
「あ、すみません!」
「そうだ、そのくらいでゆっくり煮込むのがいい」
「はい!」
こんな風してにあっという間に時が過ぎる。
そうしてちょうど半分の5日が過ぎた頃、ルファが調理場にやってきて早々に、俺に耳打ちした。
「あのね、例の件だけどーーー」
「ほお、それは都合がいいな。ぜひ、その方向で進めてくれ」
「分かった! 任せて!」
……これでひとまずの舞台は整いそうだ。
あとは。
俺は今日もカロと奮闘するオゼット嬢を見た。
あとは、この機会を本人が“つかみ取れる”か、どうかだ。




