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【やり直し軍師SS-565】リヴォーテの日記(26)

読者の皆様におかれましては本年も大変お世話になりました。

おかげさまで書籍版の第三巻、第四巻の発売に加えて、コミック第一巻も日の目を見ることができました!

2026年もたゆまぬ努力を続けて参りますので、またお付き合いいただければ嬉しく思います。

それでは、良いお年を!


 さて、生真面目な両親をどのように説得するのが正解か。


 俺が悩んでいると、ルファがポンと手を叩く。


「ゼランド君かロアに相談してみる? どっちかから言ってもらうとか」


「その案の前に、お前まさか、客人の前で王子を君付けしているのではなかろうな?」


「そんなわけないじゃん。ちゃんと呼んでるよー!」


「そうか、ならばいい」


「……前からちょっと思ってたけど、リヴォリヴォってたまに私のお父さんみたいなこと言うよね!」


「む? お前の父親はそんなことを言うのか?」


 ざっとしか事情を知らんが、ルファと実の両親の関係はあまり良いものではなかったはずだ。つまり、義父ザックハート殿のことか?


「ううん、リヴォリヴォしか言わない」


「ならば、父親みたいではないではないか」


「もう、そう言うことじゃないんだってば!」


「何を言っているか良くわからんが、ともかくその案は却下だな」


「どうして? 一番話が早いと思うけど?」


「ああ、確かに話は早い。だが外部の人間である俺とは違って、王子や宰相からそのようなことを言われれば、それは“説得”ではなく“命令”だ。無論、両親から許可は出るだろうが、さまざまな軋轢が残るのは避けられんだろうな」


「あー、そっか。それもそうだね」


「なのでそれは、最終手段だ」


「でもそうすると難しいねぇ。……どうするの?」


「すぐには妙案は出ん。とりあえずパルヴィクス家の状況は理解した。それに、貴族院の要人なら、俺が面会を申し出てもそれほど違和感はないだろう。まずは父親の方を説得して、徐々に切り崩してゆくか」


「じゃあ、私もいい方法がないか考えておくね!」


「うむ。頼んだぞ」


 そんな会話をした翌日、事態は悪い方向に、大きく動いたのである。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 昨日の今日でルファに呼び出された俺は、名案でも浮かんだのかと気軽に出向いた。が、その場にはオゼット嬢の姿が。


 しかもオゼット嬢の瞼は赤くなっており、おそらく泣き腫らしたのではないかと察せられた。


 俺がやってきてもオゼット嬢は俯いたまま。


 ただならぬ状況にルファを見やれば、ルファは困った顔で俺を見返す。


「……失礼。お待たせしたようだ。……それで、一体何が?」


 俺が水を向けると、オゼット嬢が肩を振るわせ、涙をこぼし始める。俺は慌ててルファになんとかするように目で合図を送るが、ルファもぷるぷると首を振るばかり。


 仕方がないので、ともかくオゼット嬢が泣き止むのを待つ。


 オゼット嬢の啜り泣きだけが聞こえる気まずい部屋の中で、用意された紅茶を啜ることしばし。


「……お母様が」


 不意に、オゼット嬢の口から言葉が溢れた。


「お母上と何かあったのですかな?」


「お母様が……絶対に料理人になるなんて認めないと言うのです、私の言葉などほとんど聞かずに! あんまりです!」


 どういう状況だ? なぜ、一人でその話をしてしまったのだ? ともかくオゼット嬢を宥めながら、過程を聞きだす。


 やや感情的になっているオゼット嬢の話を要約すると、概ねこう言うことらしい。


 料理人になると心に決めたオゼット嬢は、はやる気持ちを抑えきれずに料理本などを買い込んで眺めていた。それを母、アルラゼーナが見咎めた。


 と言っても、最初から否定的な言葉ではなく『お料理に興味があるのは良いけれど、それは料理人の領分だから、そんなにたくさん読むなら所作の本なども読みなさい』という、ちょっとしたお小言であった。


 オゼット嬢としては水を差された気持ちであったのだろう。


 細かいやり取りののち、オゼット嬢が冗談半分で『もし私が料理人になったらどうする?』と言う類の言葉を口にし、それにアルラゼーナが過剰に反応。


 売り言葉に買い言葉で、家を飛び出して今に至る、と。


 もはや状況は最悪ではある。


「もう私、あの家を出ます!」


 と興奮するオゼット嬢の背中をルファが撫でる。


「まあまあ、しばらくは王宮にお泊まりしない? 私の方からお家には言っておくから」


 と、とりなそうとする。


「でも、もう家に帰っても……」


 確かにもはや説得の段階ではない気もするが……。


 しかしまあ、こう言う危機的状況の方が、俺の頭はよく回る。


 しばらく王宮にいるのなら、オゼット嬢は時間が取れるな。ならば、こう言うのはどうだ?


「オゼット様、よろしいですか?」


 俺の言葉に、オゼット嬢は震える唇で「なんですか」と問うてくる。


「確かに状況は良くない。だが、貴方がここに駆け込んだのは僥倖。このリヴォーテ、逆境は得意な方でしてな。一つ、ダメもとで試してみたいことがあるのですが」


 俺がそのように伝えると、オゼット嬢の隣で聞いていたルファが、


「悪だくみの顔! ロアみたい!」


 と余計なことを言った。





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― 新着の感想 ―
今年一年も素晴らしい物語をありがとうございました。 来年もお身体に気をつけて。 良いお年をお迎えください。
ズイストのときのやり方を見るに、パルヴィクス家の領地にまずカロパンを流行らせて、「実はこれを開発したのはオゼット様なのだ。オゼット様に任せておけばここは大陸有数の美食の都になるぞ」と領民を扇動し、「カ…
もしかして、カロパン?? 料理で説得するのかなあ? まあ、母親と娘とかおばあちゃんと孫娘とか、就職はいろいろありますよね。特に女性同士だと。世代間の違いもありますから。 ロアは出てこないのかな? 続き…
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