【やり直し軍師SS-564】リヴォーテの日記(25)
更新再開いたします!
あっという間に年末ですねぇ。
年末年始もお楽しみいただけたら嬉しいです!
書籍版第5巻は、ただいま鋭意製作中です!
この俺、リヴォーテ=リアンは、どちらかといえば、交渉ごとが得意な方だ。
自ら功績を誇るような真似はあまりしたくないが、俺の話術によって、グリードル最大の脅威であった敵国を翻弄したこともある。
だた、多くの修羅場を振り返ってみても、『料理人になりたいので両親を説得してください』という事例で頼られた記憶はなかった。
しかも相手は貴族の娘。『なりたい』という理由だけでは、両親も首を縦には振らぬだろう。
とはいえその娘、パルヴィクス家のオゼット嬢を焚き付けた一因が俺にあるとすれば、流石に放置というわけにはいくまい。
オゼット嬢にはカロパンで世話になった恩もあるからな。
そのような状況で、俺が相談相手に選んだのはルファである。
貴族社会にも顔が広く、オゼット嬢とも友人とあれば手頃であろう。ルファに面会を求めると、すぐに場が設けられた。
「……というわけなのだが。どうだ? パルヴィクス家について何か知っているか」
俺の説明を受けたルファは僅かに困った顔をする、この娘のこのような表情は少々珍しいように思う。
「うーん……オゼットちゃん、そんな事考えていたのかぁ……。ところでなんで私は誘ってくれなかったの?」
「お前は公務で忙しいだろうが、ちゃんと仕事しろ」
「えー! ずるい! リヴォーテだってサボっているのに!」
「人聞きの悪いことを言うな。俺はちゃんとやるべきことをこなしている」
「私だってこなしてますよーだ!」
む。いかんいかん。こんな子供のような言い争いをするために来たわけではない。俺はこほんと咳払いをして、話の軌道を戻す。
「今はオゼット嬢の話だ。お前はあの娘の友人だろう? 何かとっかかりになるような情報はないのか?」
「……今度そのパン、私にも食べさせてよ? 約束したからね! で、オゼットちゃんの件なんだけど……うーん……」
腕を組んで首を傾げるルファ。
「なんだ、そんなに問題がある家なのか?」
「あ、ううん! 全然。むしろとっても真面目なおウチなんだよね〜」
「真面目な、ほお。具体的には?」
「ルデクに貴族院があるのは知ってる?」
「それは知っている」
「その貴族院なんだけど、ちょっと色々あって、お義父様のお怒りを買ったことがあるんだ。で、平和になったところで、主要な人たちの入れ替えがあったの」
「ほお」
興味深い話だが、流石に詳しいことは話さんだろう。それに本題とは関係ないのでひとまず流す。
「でも新しく貴族院の要職に就きたいって人、あんまりいなかったんだって」
「それはそうだろうな。王の怒りを買うほどの事例の後では、まさに火中の栗と言うやつだな」
ルファの義父とは現ルデク王。主要な面々の入れ替えが必要なほどならば、次のなり手は茨の道だ。
「で、そんな状況の中で、真っ先に名乗りを上げたのがオゼットちゃんのお父さん」
「ふむ。なかなかの人物ではないか」
「うん。真面目なお人だよね! ……でも、ちょっと真面目すぎるかも!」
なるほどな。そのような性格であれば、娘が料理人になると言うのは難色を示すに違いない。だが、なおもルファは続ける。
「でも、今の話なら、どっちかっていうと大変なのはオゼットちゃんのお母さんの方かな?」
「む? なぜだ?」
「オゼットちゃんのお母さん、アルラゼーナ様って言うんだけどね。あ、そうそう。大事なこと説明するの忘れてた。オゼットちゃんのお父さんはお婿さんなんだ」
つまり、パルヴィクス家の血筋は母、アルラゼーナにあるのか。それならば母の方が発言力も強そうではある。
「でね、アルラゼーナ様は“ちゃんとした貴族”にとってもこだわっているの」
「ちゃんとした貴族とはなんだ?」
「さあ?」
ルファの返答に、俺は呆れる。
「さあってことはないだろう」
「アルラゼーナ様の口癖なんだよね。『貴族はちゃんとしていないとなりません』って。私も何度か聞いたことある。貴族院に立候補したのも、アルラゼーナ様が後押ししたとかなんとか」
「その、ちゃんとした貴族の娘は、どうするのがちゃんとしているのだ?」
「アルラゼーナ様はよくオゼットちゃんに、『良縁を得ることこそ、淑女の務め』って言ってた。未来の旦那様を支えるために、己を磨きなさいって」
それはまた、随分と……。いや、貴族としてはより強い貴族と縁を結ぶのが重要。ならばアルラゼーナの言っていることは間違いではない。
しかし、だ。
「娘が料理人として独り立ちしたいなどと言えば……」
「とっても怒ると思うんだよね……」
ルファが困った顔をした理由はこれか。
やれやれ、思いの外大変なことを頼まれたものだなと、俺は改めてため息を吐いた。




