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【やり直し軍師SS-539】騎士団修行(4)


 ジュノス達が各騎士団に滞在するのは、概ね15日程度を想定していた。その間、それぞれの騎士団の任務を手伝いつつ、訓練に参加させてもらうのだ。


 またできれば一度、実戦方式の演習に参加させてもらいたいと願い出ており、すでにボルドラスからは快諾をもらっている。


 第四騎士団に限らずだが、騎士団の主な任務は持ち場の治安維持と防衛戦力の維持だ。


 ジュノスが所属する第三騎士団および、第二騎士団は北ルデク全域を担当している。ちなみに北ルデクの治安維持は、旧リフレアの残党を炙り出すために、第八騎士団の担う割合も大きいらしい。


 第四騎士団の持ち場はルデク北西部全域。それぞれ当番区域が割り振られ、その地域の町村や、近隣に異変がないか見て回るのだ。


「とはいえ、最近は盗賊どもの姿もめっきり減りましたがな」


 第四騎士団に滞在して5日目のその日、砦を出て周辺の視察に向かう道中で、ジュノス達へそう口したのはボルドラスである。


 騎士団長自ら同行しての警ら、ウラルがいるのでわざわざ参加を決めたのかと思ったが、元々ボルドラスも自発的に見回り当番に参加しているそうだ。


「この辺りはまだ街道や伝馬箱も設備されていないようだが、それでも盗賊は減っているのだな」


「ええ。殿下のご指摘はごもっとも。しかし、そもそもルデクの悪党の数自体が急速に減じておるのです」


 ウラルの横で説明を聞いていたジュノスは、その返しに首を傾げる。


 ウラルの指摘した通り、広い街道と点在する伝馬箱は、ルデクの治安向上の大きな要因だ。


 しかし、伝馬箱では、悪党の絶対数が減るわけではない。その分、街道などの整備が行き届いていない地域に皺寄せがきているはずだ。にも関わらず、急速に減じているとは一体。


 ウラルも同じように疑問を投げるも、


「まあ、この辺りのことはロア殿に聞いた方がよろしいでしょう」


 とはぐらかすボルドラス。ロア=シュタイン、悪党を減らすのにも一役買っているのか。恐れを通り越して、もはや少々呆れる。


「……そうか。ボルドラスがそういうのならば、あとは宰相殿に聞くとしよう」


 ウラルも諦めたところで、リュージェが話題を変えた。


「ところでボルドラス様、本日はどちらの視察に向かっているのですか?」


 今日に限ってボルドラスは行き先を告げなかった。『到着してからのお楽しみです』と言いながら、真っ直ぐに馬を走らせている。


 もう結構な距離を進んでいた。リュージェが疑問に思うのも無理はない。


「まあそう急くでない。着けばわかる。ああ、今回は場合によっては数日後の帰還になる。……殿下も問題ありませんかな?」


「無論問題はないが……」


「でしたら何より。とはいえあまりのんびりしてはおられませんので、少し速度を早めますぞ」


 言いながら加速するボルドラスの背中を、ジュノス達はただ追いかけるしかなかったのである。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 見えてきた光景に、ジュノスは息を呑む。


 斜面に連なる異様、それがなんなのかは近づいてようやく判明した。建物の残骸だ。ここに至り、ボルドラスの目的地ははっきりした。


 あの有名なレイズ=シュタインの大遠征の激戦地、古代遺跡の跡だ。遺跡も気になるが、その麓も無視できない。巨大な街がものすごい勢いで造られているのだ。


「あれが、宰相殿肝入りの古代都市の街か……」


「ウラルも初めて見るのか?」


「ああ。この辺りに来るのは初めてだと言ったろう。もちろん話には聞いていたが、とんでもない規模だな」


「ウロボロ遺跡、だったか? 確か街のデザインは帝国の上皇が参加しているんだっけな?」


「そうだ。まったく贅沢な話だ。しかもまだ、住民の受け入れは始まっていないのか」


 これだけの規模の街で、まだ住民が住んでいないというのは異質にすら見える。


「でも私、そろそろ完成するって聞いたわよ?」


 リュージェがいえば、ボルドラスも頷く。


「左様。殿下は住民はこれから、とおっしゃいましたが、やんわりと住民の受け入れ準備を進めているところ。しかし、まあ、完全に街として機能するにはあと2〜3年はかかるでしょうな。街道もそれまでには」


「どの道とんでもない話だ。いや、見ることができてよかった」


 しばらくウロボロ遺跡の街に圧倒されていたが、ふと、ジュノスは斜面を誰かが一人で降りてくるのに気がついた。


 点景だが、作業員にしてはどうも存在感があって気になる。


「ボルドラス騎士団長、あそこを歩いているのは……?」


 ジュノスが指差した先をボルドラスも眺め、


「おお。早速見つけたか。目ざといな。今日ここにきたのは、古代遺跡の街の視察ともう一つ、ちょうどあの御仁がここに来られる日であったからな」


 その言葉だけで、その人物が誰なのかおおよそ予測がついた。第四騎士団に所属しながら、なかなか会う機会のなかった有名人。


 あれが、レイズの盾、グランツ=サーヴェイか。


 ジュノスは右拳を握ると、ほんのわずかに力を込めた。





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― 新着の感想 ―
きっと盗賊たちの元締めがイルンダー
レイズ様はお墓と眠る地が違うので 最初で最後の墓守としてグランツさまは未だこの地に残っているのですね 土着の盗賊、山賊はロアの駒ですからね悪さはそうそう出来ないw
グランツ出た!!と思ったのは私だけでしょうか? ますます物語の続きが楽しみです。 盗賊の少なさについては、あのルデクの呪いならぬ北大陸の大飢饉が頭をよぎります。 どんな展開になるのか、更新お待ちいたし…
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