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【やり直し軍師SS-513】南征(22)


 ウラルと共に宰相に呼び出されたジュノスは、2人並んで陣幕へ入る。陣幕内にはすでに主だった顔連れが揃っていた。


「宰相殿、お待たせした」


「いえ。呼びつけてすみません、殿下」


 簡単な挨拶ののち、すぐに話は本題へ。モリネラ王都で和平交渉が行われるため、宰相は戻らなくてはならないとのこと。


 また、ウラル隊の今後の扱いについて伝えられ、その理由の説明を受ける。


「……というわけでウラル隊は一旦、ディアガロス山の麓で待機となります。ここまでで質問はありますか」


「私はない。ジュノスはどうだ?」


「俺も特には」


 宰相はジュノス達の返事を確認して、話を進める。


「それではまず、殿下に確認です。ウラル隊は殿下の部隊ではありますが、殿下には一旦部隊を離れてもらい、僕らと王都へ向かう選択肢もあります。殿下の身の安全という点においてはこちらのほうが良いかと思いますが、どうですか?」


 宰相の提案は正しい。新兵の誰が死んでもルデクに大きな影響はないが、ウラルだけは別だ。だが、ウラルははっきりと拒否。


「宰相殿の配慮はありがたくは思うが、それは遠慮願いたい。皆は仮初と見ているかもしれないが、隊の指揮官としての責任を放棄することはできない。代わりに、この身に何か起ころうとも、宰相殿には一切の責任がないことは、この場にいる全員に承知してほしい」


 そんなウラルの宣言に、宰相もうんうんと頷く。


「……そう仰るかな、とは思ってました。では残る方向で進めましょう。ですが、これだけはしっかりと認識しておいてください。ウラル隊は弱いです。戦力として成立していません。隊の力を過信しないようにお願いします」


 容赦なく言い放つ宰相に、ウラルも苦笑するしかない。


「わかっている。というか、先日の戦いでわからされた。しかしそれでも、新兵達もいきなり指揮官が変わっては余計に動揺するだろう。それは宰相殿の望むところではないはずだ」


「確かにそうですね。では、殿下にはもうひと頑張りしていただきましょう」


 この件、もう少し揉めるかと思ったが、宰相はあっさりしたものだ。


「もう一働き、というと、やはり何かあるのか?」


 ウラルがやや前のめりになった。自分たちがルデクの弱点であることは敵も理解した。その弱点が単独でたむろしていれば、敵が狙ってこないわけがない。その程度はジュノスにも想像がつく。


 鼻息あらいウラルに対し、宰相は穏やかに口を開く。


「何かあるかもしれませんが、何もしないを頑張ってください」


「は?」


「まず、今回の絵図を描いていると思われるスラン王国のブラノアが、これからどういう行動を起こすか考えてみましょう。あ、そうだ。その前に、この戦い、ブラノアの勝利とは何だと思いますか?」


「勝利? それは当然、ルデク・帝国連合軍を討ち果たすことではないのか?」


「それも1つの勝利条件ですが、僕は全部で3つの勝ちがあると思っています」


「そんなにあるのか?」


「はい。まずは殿下の仰った通り、『戦いでの勝利』。次に勝つまでいかなくとも、ルデク・帝国を退ければ『南の大陸における両国の威光を減じる』と言う勝ち筋が。そして最後に両国内に何らかの仲違いを起こし『ルデク・帝国間に不穏な空気を漂わせる』こと」


「それらが全てブラノアの勝ちだと?」


「ええ。もちろん全部得られれば最良でしょうけど、最初にあげた『戦いでの勝利』については、むしろあまり期待していないと思います」


「なぜだ? 宰相殿が去った後に、隠していた部隊で我々に攻めかかって撃破すれば、ルデク軍は分断されることになる。そうなれば、トール将軍達もかなり厳しい戦いを強いられると思うが……」


「その伏兵の捻出が難しいんです。まあ、千、2千程度は隠しているかもしれませんが、それ以上は無理と見ています。ヴィアレ王国の規模からして、今滞陣している兵数が精一杯。それは似たような国家規模のロフロ王国も同じでしょうね」


「モリネラが裏切る可能性はないのか?」


 ジュノスが口を挟むと、宰相は軽く頷く。


「確かにモリネラの部隊は動かせます。ただし我々が本隊を率いて王都へ帰還する以上、王都の兵は動けません。そうなると動員は王都以外にある部隊に限られますが、数は少ない。なぜなら、大半の兵士を王都に集結させているはず」


「なぜそう断定できる?」


「精強として知られるルデク、帝国の中でも、本隊を担うだけの戦力が、モリネラ王都に臨戦体制のまま帰還します。殿下ならどうします?」


「……地方に配した部隊を集め、警戒にあたる」


「そういうことです。モリネラは一応味方ですが、互いにそこまでの信頼関係はない。ならば、優先すべきは王都の守り。そうなると、モリネラが伏兵を準備したとしても、やはりまとまった数になるとは思えません」


「……それはそうだな。間抜けな質問だった」


「いえ。疑問点を挙げるのはとても良いことです。一人の人間が考えることなんて限界がある。なるべく様々な意見を伺えれば、新しい視点も見つかるかもしれません」


 宰相の言葉を受け、ならば、とジュノスも新たな疑問を提案してみた。


「モリネラは無理でも、スランならどうだ? スランには何の制約もない」


「うん。ジュノス。なかなか悪くない指摘だよ。でもそれも多分、ない。ブラノアは表に出てこない」


「どうしてそう言い切れるんだ?」


「反フェザリスが、そのままルデクや帝国の敵とは限らないからだね」


 よく意味がわからず首を傾げると、宰相は続ける。


「これ、南の大陸でも北の大陸でも、結構誤解している人が多いのだよね。僕らはフェザリスとは友好国だけど、無条件にフェザリス派と友好ではないということなんだ」


 宰相は少し笑って、ジュノス達へ丁寧に説明し始めたのであった。






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― 新着の感想 ―
残るんですね、ウラル隊。 ジュノスも残る。 このあと、ロアがどんな策を二人に提示するのかとても楽しみです。 帝国も何かやりそうなんですけど。ワクワクしますね。 和平交渉のほうにも何かあるのでしょうか?…
相手の勝利条件を潰す、というほかに、 ブラノアが表に出てこなければどう転ぼうとも被害は他国のみに生じるという前提があるので 今回の関連国に一定の被害を与えつつ、全ては安全な場所からブラノアが画策して独…
日本の戦国時代で言えば、東北中国四国九州にも切れ物はいましたが、秀吉、家康には敵わなかった…と言ったところでしょうか。 ロアは獲物がどう出るかどう叩くか、じーっと見ているハンターの風情ですね。
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