表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
504/550

【やり直し軍師SS-503】南征(12)


 実りの少ない軍議を終え、ウィックハルトやトール将軍、サザビー達と雑談をしていると、視界の端に何やら気になる光景が。


 陛下と双子が顔を突き合わせてコソコソと話している。


 あの3人の内緒話など、絶対に碌なものではない。嫌な予感を感じていると、陛下が誰かを呼んだ。


 神速で陛下の前にやってきたのはリヴォーテ。陛下がリヴォーテに二言三言何かを伝えると、コクコクと頷いて光の速さで去ってゆくリヴォーテ。


 そして陛下は次に僕を見ると、にっこりしながら手招きする。本気で近づきたくないなと思いながら、嫌々そちらへ向かってみれば、


「ロア、ちょっと散歩に行くぞ」


 などと言う陛下。


「散歩ですか?」


「ああ。どうせ暇だろ? お前」


「いえ、普通に忙しいですよ?」


 これでも一軍を任された総指揮官だ。いくら動きがないとはいえ、暇なわけがない。


「いっときトールに任せておけ」

「部下に任せられるのも指揮官の資質だ」


 急にもっともらしいことを口にする双子。先ほど見知らぬ土地を「燃やし尽くせばいい」などと暴言を吐いたのと、同じ人物とは思えない。


 多少抵抗してみたけれど、正直、この3人を揃って放置しておくのも何が起きるかわからず不安だ。僕は小さくため息を吐き、


「せめて、ウィックハルトは連れて行きますよ」


 と伝え、急ぎ段取りを整えたのである。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 陛下と双子に誘われるままについてゆくと、到着したのは(うまや)である。そこにはリヴォーテの姿が。


「陛下、準備は整っております」


 そんなリヴォーテの言葉を確認するまでもなく、数頭の馬に鞍がつけられ、出発準備万端だ。


「陛下、一体どこへ行くんですか?」


 流石に散歩ですむ様子ではない。僕の問いに陛下が「わからんのか?」と口にすると、


「わからんのか」

「わからんのか」


 と双子が真似をする。本当に自由だなぁ。


「いや、わからないですって」


 流石に僕も予想がつかない。というか、なんのヒントもないのだ。当てろというのも無理な話である。僕がそのように抗議すれば、陛下はふふんと鼻を鳴らしながら、


「敵情視察に決まっているだろうが」


 と、当然のように宣う。


「……まさか、ディアガロス山に行くつもりですか? この少人数で?」


「おうよ。戦場も知らずに戦えるか。それに、少人数じゃねえと目立つだろうが」


 滅茶苦茶ではあるが、正論でもある。さすが帝国の元皇帝。早さは武器だと知っている。


 それに確かに、双子、リヴォーテ、ウィックハルトが揃っていて、何かあった時に逃げられない気はしない。


 とはいえ、陛下に何かあれば一大事。帝国のことを考えれば、止めるのが無難だろう。けれども、だ。


 正直僕もディアガロス山周辺の様子は興味がある。正当な手続きを踏んでは目立つし、モリネラ側から余計な邪魔が入る可能性も否定はできない。


「危なくなったら、すぐに退きますよ?」


 多分大丈夫だろうなと思いながらも、僕は一応、そう念を押すのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ディアガロス山までの道は、全く迷うようなものではなかった。


 モリネラ王都を出て、北に道なりに進むだけだ。道幅や整備状況をみても、確かにモリネラ王国の主要街道であることは間違いない。


「で、ディアガロス山まではどのくらいかかるんですか?」


 陛下への質問に対して、答えたのはリヴォーテ。


「例えるとすれば、ルデクの王都からゲードランドの距離よりやや遠いくらいだ」


「リヴォーテ、わざわざ調べたの?」


「陛下が足をお運びになるのだ。当然だろう」


 けれど、それだと2〜3日はゆうにかかるのではないか? 往復となればそれなりの日数となる。


 冷静に考えればそれはそうだ。うっかりしていた。トール将軍にはそんなに時間がかかるとは伝えていない。


 僕が口にした心配に、リヴォーテは「ふん」と鼻を鳴らしてから、


「安心しろ。ルデク陣営にも旨、伝えておいた」


 と胸を張る。本当に無駄に優秀だなぁと嘆息しながら、僕らは北へと黙々と馬を進ませる。



 そうして適当な街で宿泊しながら、たどり着いたディアガロス山。


 モリネラ側から見れば、ディアガロス山を境にして道が二股に分かれている。山の中腹には砦の姿も確認できた。あれが、敵対している両国が占拠したという砦に間違いない。


 山は奥の方まで続いており、山間に街道が続いてゆく。確かにここを押さえられると流通が滞りそうだ。


 ただ、それにしては……。


「……ざっと山の周辺を探ってみるか」


 陛下がいう。封鎖されてると聞いていたけれど、ぽつりぽつりと人の往来はあった。ざっとみたところ兵士の姿もないので、比較的ゆるい占拠のようだ。


 こうして下見を終えた僕らは、再びモリネラ側の街道に戻ってくると、それぞれなんとなく顔を見合わせて、


「……とりあえず、帰るか」


 と、なんとも微妙な雰囲気の中で、帰路に就いたのである。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今回が初めてドラクと双子が仲良くしていたんでしたっけ? 以前に三人の仲良しシーンがあるのではと読み返しているのですが、まだ見つけていません。 でも、ユイメイは帝国の方と仲良しですよね。リヴォーテとかエ…
双子って、トール様よりエライのか?
ドラクが絡むと無茶苦茶優秀になるなぁ、太郎。 敵対国に占拠されているのに、緩い?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ