【やり直し軍師SS-492】南征(1)
更新再開いたします
またよろしくお願いいたします!
今回の更新でSS500話突破しそうですね。
長くお付き合いいただき本当にありがとうございます!
SQEXノベル書籍版も是非是非よろしくお願いいたします!
1〜3巻好評発馬中!
4巻鋭意製作中!
コミカライズ版滅亡国家のやり直しは、マンガUP!様にて好評連載中! 毎週月曜日はマンガUP! へ!
スラン王国、王宮の一角。
壁中に地図が貼られた、少々異質な部屋があった。
地図は各国の詳細図。そこには多くの人物名と、特徴などが貼り付けられていた。
この部屋の主であるブラノアは、手を後ろで組んで、それらを眺めつつ壁沿いを歩き、比較的新しい地図の前で足を止める。
目にしているのは北の大陸の全体図。そしてルデクとグリードル帝国の地図。まだ情報の少ない2つの国を眺めていると、扉がノックされた。
「ブラノア様、入ってもよろしいですか」
「サーバルスか。入れ」
入ってきたサーバルスは入室してすぐに、いつもの几帳面さで指先をピシリと腿に合わせ、ブラノアの言葉を待つ。
「……今は話しかけても大丈夫だ」
許可を得てようやく口をひらくサーバルス。
「ご思案中に申し訳ございません。北に動きがありました」
「そうか。そろそろだとは思っていた。で、帝国はモリネラに来るか?」
「いえ。この度は出兵を見合わせると。何かあればフェザリスに支援を求めるように、伝えてまいりました」
「ほお。慎重だな。あそこは帝が変わったばかりだが……決断を下したのは、先帝か、それとも今の皇帝か」
「署名は現皇帝、ビッテガルド=デラッサのようです」
「それは当然だ。面目というものがある。しかし、代替わりして間もない。未だ先帝の発言力は衰えてはいないだろう。一代で帝国を強国に仕立てたドラク=デラッサ。ここまでの歴史を見るに、比較的好戦的な人物かと考えていたが」
呟きながら帝国の地図の前に立ったブラノアは、腰に束ねていた用紙に『ドラク、慎重? 疑り深い? 体調に不安? 保守的?』と書き連ね、針で地図部分に刺し込む。
「陸続きならばもっと情報が入ってくるのだが、もどかしいものだな」
「我々の力及ばす、申し訳ございません」
「いや、サーバルス達を責めているわけではない。お前達はよくやっている」
「は。ありがとうございます」
「それに、帝国が断るのは想定内だ。予定通り、次の段階へ進む」
「はい。すでにルデクへの使者の準備は整えております。帝国への流言の手はずも」
「よろしい。では進めてくれ」
「は。失礼致します」
サーバルスが退出すると、ブラノアはルデクの地図へと視線を移す。最も多くの書き込みが貼られているのは、宰相ロア=シュタイン。その名を指でなぞりながら、
「北の大陸の大軍師、か。さて。うまく踊ってくれるか、お手並み拝見といこう」
と、一人呟いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
久々の洋上。僕は甲板で大きく息を吸い込んだ。
天気は上々、風向きよし。潮風が気持ちいい。
このまましばらく、静かに景色を楽しみたいと思っていたのだけど、のんびりできたのは僅かな間。
「おい! ロア! 俺の干し肉をこいつらが食った!」
「お前のじゃない」
「私たちのだ」
大騒ぎしながらやってきたのは帝国上皇、ドラク=デラッサおよび、いつもの双子である。
「干し肉ならたくさんあるでしょう?」
陛下専用の干し肉など準備した覚えはない。おそらく、勝手に大きなやつを確保したのだろう。
「いーや、あれは俺が大事に部屋に保管しておいたやつだ! 俺のだ!」
頑として主張する陛下。子供か。
「それにユイメイはあんまりはしゃぐと、また船酔いするよ」
陸上なら大陸最強の一角なのは間違い無いけれど、この2人は波の揺れに弱い。出発して早々に酔ってぐったりしており、酔い止めの草を食んでようやく少し回復したばかりだ。
「実はちょっと気持ち悪い」
「干し肉なんか食べたから」
「なら食うな! 俺の肉を!」
またギャーギャー始まったので、放っておくことにする。それにしても、まさか陛下自ら参加するとは思わなかった。しかも、ルデクの旗艦船に同乗することになろうとは。
「おい! お前ら! 俺の船で喧嘩すんな! まとめて海へ叩き落とすぞ!」
旗艦船の艦長でもある、ルデク海軍司令のノースヴェル様がドスドスと近づいてくる。
船の上ではノースヴェル様が一番偉い。帝国上皇であろうとお構いなしだ。
そうして4人で揉めているのを見ながら、僕はこうなるまでの経緯を思い返すのだった。