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【やり直し軍師SS-49】第三皇子は翻弄される⑦


 朝食会を終えた(ロカビル)は、ロア達と共に一路西へと向かう。


 私とロア以外の同行者は、リヴォーテとウィックハルト、ラピリア、ユイゼスト、メイゼスト、ネルフィア、と言う少人数だ。

 

 それに加えてリヴォーテの連れてきた部下が、5名ほどこちらについてきた。


 曲がりなりにもルデクの最重要人物たるロア=シュタインが、このような少数でうろつくのは如何なものかと思った。



 同じことを考えたリヴォーテが苦言を呈すると、


「少なくとも双子と、蒼弓と、戦姫が周りにいて、切り抜けられないような相手って、なかなかいないですよ」


 と返されて妙に納得していたので、そう言うものなのだろうと考えるしかない。


 確かにあのロア=シュタインの側近ならば、一騎当千の猛者達なのであろう。


 その後「ロカビル様の安全は我々が守りますので」と言っていたリヴォーテであったが、現在は双子と共に最前列にあって何やら騒がしい。


 リヴォーテと双子のやり取りは一度帝都で見てはいるが、やはり違和感が凄い。リヴォーテが連れてきた部下達は全く気にしていないので、これはいつものことなのだろうか?


「ロカビル皇子」


 リヴォーテと双子のやりとりを眺めていたら、いつの間にか背後から声をかけられた。全く気配を感じなかったので少し驚きと共に振り向くと、すぐ後ろにネルフィアが。


 思わず悲鳴をあげそうになって、かろうじて止まる。なんとか皇帝の息子としての矜持は守れたように思う。


「……何か?」


 ぎこちなく答える私に、ネルフィアは何事もなかったように「馬の速度は問題ございませんか?」と聞いてきた。


 確かに私はあまり馬に乗ることがない。常に前線にあった兄上(ビッテガルド)や、地方領主として各地を回っているツェツェドラに比べ、私は帝都から出かけることがほとんどないうえ、出かける場合は馬車が基本だ。もしかすると背後から見て騎乗の拙さを心配されたか?


「……お気遣い感謝するが、問題ない」


 実は少し辛いのだが、ここで泣き言は言い難い。


「左様でございますか……実は、私の馬の調子が良くないので、少々速度を落としたいと思っております。皇子にも一言断りを入れてから、ロア様に頼みたいと思ってまして。宜しいでしょうか?」


「……ああ。そう言うことなら構わぬ」


「ありがとうございます」


 そのままネルフィアは前にいるロアの元へと進み、二言三言、言葉を交わすと全体の速度が緩んだ。


 ネルフィアは私に一礼すると、最後方へと下がってゆく。


 そうしてしばらくしたら、今度はロアが私の元へ下がってくる。


「もう少し進んだらナフトと言う町があります。今日はそこで一泊する予定です」


「まだ日が傾くには早いが、私に気を使ったのか?」


 そんな私に言葉に、ロアは小さく首を振り苦笑。


「この道では、ここから先、手頃な街がないのです。小さな村はいくつかあるのですが、皇子はもちろん、僕の宿泊場所も、周囲のもの達がちゃんとしたところでないと許してくれないもので」


 ああ、それは納得できる理由だ。


「代わりに明日は一気に進むので、夜明けとともに出発します。宜しいですか?」


「構わぬ。私のことはあまり気を使わぬとも良い」


 そんな風に伝えているうちに、確かに遠くに町の影が見え始めていた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ここがゼッタ平原か……」


 数日後、ようやく到着したゼッタ平原。比較的起伏に富んだ景色の多かったルデクの風景が一変し、目の前が急に広がった気分になる。


 元々グリードルは平地の多い土地柄なので、こういった見渡す限りの平坦な場所は、少し落ち着く。


 今日の宿泊はキツァルの砦。遺跡まではもう少しだ。


「やあやあ、皆様。よくいらっしゃいました」


 両手を広げて出迎えたのは。第四騎士団長のボルドラス将軍。私は初対面だ。形式的な挨拶を交わしながら観察。少々地味な将軍だなと思う。


 しかし確か、フェマスの大戦の勝敗を決した将軍だったはず。暴挙と捉えられても仕方のない、無謀とも言える援軍を連れてきたことによって、リフレア軍は総崩れとなった。


私は勝手にザックハート将軍のような豪快な人物を想像していたのだが……人は見かけによらぬものだ。


「よーうボルドラス」

「ちゃんと仕事してるのか」


 双子が乱暴な言葉を投げかけるも、ボルドラス将軍は笑ったまま。


「ユイゼストにメイゼストはちゃんと、ロア殿を支えているのか? 迷惑はかけておらんか?」


 何やら双子の父親のような言葉を投げかける。


「当たり前だろ!」

「大活躍だ!」


 なんだか少々微笑ましいやりとりを見ながら、その日は暮れた。



 翌日、ついに遺跡に到着。麓には作業員のためのものであろう、すでに小さな町が出来ており、多くの人間が忙しそうに動き回っていた。



「サゼンはどこにいるかな?」


 ロアに問われた作業員が指差したのは、遺跡の中腹の方だ。


「サゼン、と言うのは?」


 私の問いに、ロアは、


「現場を任せている者です。陛下の書いた図面を実現するには欠かせない人物ですよ。ちょっと面白いものを見ることができると思います」


 と言いながら笑う。


 作業員の一人が呼びに行ってくれると言うので、その場でしばし待つことに。


「ロア様!」


 少しして転がるようにやってきた男に、ロアが気軽に挨拶を返した。


「予定通り区割り図を持ってきたよ。サゼンの方は順調?」


「ええ。既にかなりの数を準備してあります。早速始めましょう!」


 数を準備? 始める?


 私にはなんのことかわからぬまま、一行はロア達について会議の部屋へと移動するのだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >起伏に富んだ地形 そう言えばハクシャの大河以外、これといった河川の描写に記憶がないですが、山に囲まれた土地柄、たくさんありそうですがいかがでしょう? 小麦がよく取れるというグリードル…
[一言] ネルフィア、何やってんのw なぜ気配消したw
[一言] 数を揃える…何だろ??? 定番だと花火的な?? 次の話が楽しみですねー。
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