【やり直し軍師SS-399】共演④
次回更新でなんと、まさかまさかのSS400話です!
ゾディア達の約束を取り付けた僕は、手紙の束をゾディアに預け、すぐに王都へと帰還。王に結果を報告し、正式に許可をもらう。
ゾディアに預けた手紙の内容は、全て同じものだ。旅一座の祭典の開催時期と参加方法。これをゾディア達の伝手で配ってもらうのである。
また、第八騎士団にも同じお願いをした。これで沢山の一座に話が回ってくれればよいのだけど。
ちなみに参加方法といっても、それほど難しい手順ではない。条件はひとつだけ。開催3日前までに王都に来て受付を済ませてもらうのだ。
ちゃんと手続きをした一座には、開催期間中の食事の保証と、それぞれが芸を披露するための舞台が与えられる。
なお、別に受付をしなくても構いはしない。単純に食事の手配がなくなり、こちらで舞台の確保はしないだけ。別途郊外にフリースペースを準備するので、そちらでなら好きに芸を披露して構わない。
この辺りは柔軟に対応するけれど、王族が参加する催しだ。万が一があっては困る。なので警備関係だけは入念にしなくてはならない。当面は、そのための準備に奔走することになるだろうなぁ。
人手によっては、第10騎士団総出で警備を行うことになるかも。このあたりはフレインとも相談だな。
と言うわけで早速フレインを呼んで打ち合わせ。ついでにもう一人呼び寄せた。
「ロズウェル、調子はどうだい?」
「はっ。なんとかやっています」
「リュゼルから聞いているよ。かなり頑張っているって」
「……ありがとうございます」
新兵として第10騎士団に入ってきて5年ほど、すっかり頼もしさの滲む風貌になっている。貫禄をつけるためか、髭を生やし始めたみたいだけど、正直あまり似合っていない。
「ちなみに今日はなんで呼ばれたか分かってる?」
「いえ、全く」
怪訝な顔をするロズウェル。まあ、それはそうだ。旅一座の祭典はまだ公表していないし、そうでなくても、僕が直接ロズウェルを呼び出すのは珍しい。
僕はまず、フレイン、ロズウェル両者に今回の催しについて説明。
フレインは「またとんでもないことを」と言う顔をし、ロズウェルは難しそうに眉根を寄せた。
「……俺が呼ばれた意味、分かりました」
そのように切り出したのはロズウェルだ。僕は続きを促す。
「王都の警備について、俺の方で取り纏めろという事ですね」
「正解」
第10騎士団としてリュゼル隊の隊長見習いにあるロズウェルは、リュゼルの命令もあって王都の警備についても積極的に顔を出して協力している。
部下の教育には厳しいリュゼルをもってして、『色々なやつに同じ事を言ったが、今までずっと欠かさず警備も続けているのはあいつだけだ』と感心するほどで、下手な部隊長よりも王都の警備兵から信頼されていた。
「確かに、旅一座や観客が一斉に集まるとなれば、治安は強化しないとまずいですね。いっそ、王都への入場は制限をかけますか?」
「へえ、面白いね。どんなふうに?」
「そうですね。……旅一座はどのみち馬車で寝泊まりするでしょうから、問題は集まってきた観客の方です。酔客も多いはず。ちなみに、酒は禁止には?」
「この手の催しで、それは難しいだろうね。まあ、あまり迷惑をかける人は第10騎士団で連行するけれど」
「であれば、やはり王都への宿泊は事前予約のみとしたほうがいいです。何か特別な通行証を発行して、それがないと入れないように。市民にも何らかの手だてを」
「うん。なるほど。じゃあ入れなかった人はどうするんだい? 全員強制的に野宿?」
「いえ、それについては……実はレニー達と前に少し話していた事があって……」
「ほうほう。聞こうか?」
「はい。前に宰相殿が考案した伝馬箱。あれが参考になっているのですが」
「伝馬箱が?」
「乗合馬車を作れないかと」
「乗合馬車ならもうあるじゃないか?」
「ええ。ですが、王都の乗合馬車でさえ、散発的であまり規模も大きくありません。なので、もっと大規模で、定期的に同じルートを回るようなものを作れないかと」
なるほど。確かにそう言う交通機関があれば、催しが終わった後に、近隣の街に客を分配できる。周辺の町村も潤うし、伝馬箱がある道を利用すれば、危険な客も乗り込み難いか。
そうすると既存の乗合馬車の人たちはどうする? いや、そのまま新しい枠組みに組み込めばいいか。料金も均一化されれば、人々も使いやすいかもしれない。
僕が黙ってしまったので、ロズウェルは困惑した顔をする。その横でフレインがロズウェルに声をかけている。
「気にするな。ロアがこうしているって事は、お前の提案に見るべきところがあったと言う証拠だ」
「は、はあ」
「それよりも、こうなったらしばらく話にならんぞ。一旦休憩だ。レニー、お茶を頼めるか?」
「畏まりました」
実に理解のある腹心を持った僕は、遠慮なく思考の海へと沈ませてもらうのだった。