【やり直し軍師SS-397】共演②
本日お話のきりの関係で少し短めです〜
「で、どうするつもりなの?」
「どうしようか?」
ラピリアが楽しげに僕に聞いてきても、僕は机に突っ伏して、掲げた手をひらひらさせる。
レナーデ様一家を楽しませるための催し物。安請け合いしたわけではないけれど、かといってすぐに思い当たるものではなかった。
「……そうだ。ラピリアはレナーデ様とは親しいの?」
「そうねぇ。時々お茶を一緒にした事もあるけど……。使えそうな話は思い当たらないわね。活発なお方で、本当にどこにでも顔を出していたわ。あ、そうだ。特に舞踏会は好んでいた印象があった」
「舞踏会かぁ」
当然ゼウラシア王も舞踏会は検討しただろうし、そもそも舞踏会は僕に知識がない。手を加えるのは難しいなぁ。
「あとは、そうね。遠乗りも好まれるし、楽器も奏でる。本や芸事も嗜まれる。もちろん食べる事もお好きな方ね」
「本当に活発なお人なんだね」
「ええ。ロアも多分、王宮でレナーデ様を見る機会は少なかったんじゃない?」
言われてみればあまり記憶にないな。と言っても、同じ王の妹君であるローメート様も似たようなものだから、気にした事はない。
「ローメート様はまあ、ほとんど外に出ることがないお方だもの。逆にレナーデ様は、様々なところに顔を出していたから、王都にいる時間も多くなかったのよね」
「それって、各地を遊び歩いていたって話?」
「うーん。確かにそういう側面も否定でできないけれど、どちらかといえば地方貴族との顔つなぎ役、そんな意味合いが強いかしら。ルデクはずっと緊張状態にあったから、王が気軽に各地に出向くのも難しかったし」
「ああ、なるほど。敵がいつ攻めてくるかも分からない中で、逆に貴族が王都に来るのも簡単じゃなかったのか」
「ええ。特に東西の貴族は有事の際に備えて、自領を離れ難い状況にあったのよね」
「そんな貴族達と、王家の橋渡しをしていたのかレナーデ様なんだね」
それは大したものだ。王が北ルデクを任せたい気持ちもよく理解できる。
感心する僕に、ラピリアは苦笑する。
「レナーデ様の場合、そこまで考えていたのか少し疑問だけどね」
「?」
「……レナーデ様は本当に楽しい事がお好きなのよ。だから、遊び歩いていたって言葉も半分くらいは間違ってはないの」
「……まあ、もしかしたらヒューメットの思惑を少しでも邪魔していたかもしれないし……」
東部や北部の貴族は、ヒューメット=トラドが悪意で支配しようとしていた。ゼウラシア王への反旗を促していたのだ。その状況下において、社交界に顔を出す王の実妹。全く影響がなかったとは思えない。
レナーデ様の性格は理解したけれど、なかなかいい催しは思いつかないなぁ。
「ロア殿、ローメート様の時のようにお菓子を使ってはいかがですか?」
ウィックハルトが提案してくれるけれど、二番煎じは否めない。レナーデ様は満足してくれるだろうか?
「いっそ、音楽会など催しては?」
今度はレニーが言った。確かに最近、王族の音楽好きは世間に知られて始めている。ゼランド王子とルファの婚約の一件。この顛末のフィナーレとして、話題のまととなったのだ。
「悪くはないけれど、もう一つ、何か決め手が欲しいなぁ」
こうして中々決めきれないまま、10日ほどが過ぎる。
そんな時だ。
僕の元へ手紙が届いた。差出人はルルリア。
なんの用だろうか?
手紙には元気? とか、ゼランド王子とルファの婚約についてお祝いの言葉が並ぶ。『どこかで一度直接お祝いの言葉を届けたい』などと書いてあった。
それから。
『ゾディア達、ル・プ・ゼアが領内に遊びに来てくれた』と。
さらにル・プ・ゼアは、これからルデクへ来るらしい。
ゾディア達が来るのか。
待てよ。それなら……。
「ちょっと誰か、サザビーを呼んできてくれる?」
僕の言葉にレニーがすぐに立ち上がる。
「なんと伝えれば良いですか?」
「第八騎士団の力を借りたい。手紙を持っていってもらいたいんだ」
言いながら、僕はすぐに、ペンを手に文面を考え始めたのである。




