表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

355/536

【やり直し軍師SS-354】西方討伐①

SQEXノベル書籍版第二巻、10月7日発売!

いよいよ発売カウントダウンです!

予約もまだまだ受付中でございます!

また、活動報告でもお知らせしましたがコミカライズも決まりました!

書籍版ともどもよろしくお願いいたします!


発売特別企画として、今回の帝国編はお休み。

満を持して、あの事件の続きを始めたいと思います!

全20話の大ボリューム、一挙連日更新でお送りいたします!

お楽しみただければ嬉しいです!


 それは、奇妙な来訪者から始まった。


「名前を言わない客? 僕に?」


「はい。そのように書いてあります」


 すっかり秘書官が板についたレニーは、淡々と僕に報告書を手渡してくる。提出者は第10騎士団所属の兵士となっていた。


 ルエルエの街の近くの、伝馬箱に任務で詰めていた人物からだ。


 宰相の立場になってから、直接僕に会って話がしたいという人はとても多い。大抵が何らかの陳情で、自分の利益確保のためのものである。


 ただ、それらの人物と僕が会うことはほとんどない。大抵の場合は、ラピリアとウィックハルトとレニーによって、必要な部署へと回されるからだ。


 また、しつこかったり悪質と判じられたものは、双子案件として処理される。僕は後から報告を聞くだけ。


 そのため内容も分からない案件が、僕のところまでやってきたのは、最近では少し珍しい。


 書類を見ても、レニーが口頭で説明する以上のことは何も書かれていない。不信極まりないにも関わらず、その場で追い返されなかったのは、とある紙切れが同封されていたから。


 それは僕とラピリアの婚儀の招待状の一部。偽装不可能な物でもないけれど、紙のよれ具合からは本物のように見える。


 僕らの婚儀はもう6年も前の話。未だにそのような代物を後生大事に持っている相手とは、いったいどのような人物なのだろう。或いは、誰かから買い取ったのか。


 王都までやってくるのではなく、ルエルエで待っている意図も分からない。王都に出入りできぬような人物? どんな理由で?


「相手は一人かな?」


 一応、報告書にはそうある。


「……仲間が潜んでいる可能性は、否定できませんが」


 レニーが懸念を口にするけれど、仮に僕を誘い出して襲うならば、潜める程度の人数では少々不用意だ。


 当然こちらは護衛の兵士を準備する。それに中途半端な人数では、ウィックハルトや双子の相手ではない。


「ロア殿、どうされますか?」


 質問の体をとっているけれど、ウィックハルトは既に答えが分かっているような顔をしている。長い付き合いだからね。


「そうだね、会ってみようか。念のためルエルエのあたりに、少し兵士を回しておいてくれる?」


「無論です。手配します」


「うん。頼むよ。それと、相手が本当に僕の顔見知りなら、多分お忍びだろうから、こちらも人は絞ろうか。ウィックハルトと双子、それにサザビーがいいかな。レニー、また留守は任せたよ。何かあったらフレインに相談して」


「承りました」


 諸々段取りを整えると、僕らは一路、ルエルエの町を目指す。


 その道中での事。ネルフィアが馬上から僕に話しかけてきた。


「ロア様は、今回の相手に予想がついているのですか?」


「うーん。確信はないけれど、もしかしたら、っていう人物はいる」


「今、お名前を伺っても?」


「いや、やめておこう。言った通り、確信もないし。全然違ったら恥ずかしいから」


 まあ正直なところを言えば、恥ずかしいというより、僕の予想が外れてくれると良いなと思ったのだ。


 だから口にして現実にならないようにと、願ったのだけれど。


 結局、僕の願いは叶わなかった。ルエルエの街には、予想通りの招かざる客が待っていたのである。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「お久しぶりでございますなぁ」


 若いような老齢のような。何とも掴みどころのない風貌で、妙にへこへこと僕の前に立っておきながら、全くへりくだっている感じがない。


 シューレットの元諜報員、ザードは、6年前と変わらぬ様子で僕の前に現れた。


 ここはルエルエの領主館の一角。僕らのために領主さんが提供してくれたのである。


「ザードも元気そうだね。けど、随分ともったいぶった呼び出し方だ」


「申し訳ありません。まずはどうしても、大軍師ロア=シュタイン様とだけお話をさせていただきたかったもので」


 そんなザードの言葉に、待ったをかけたのはサザビー。


「すみませんが、私たちはロア様との会談に立ち合います。2人だけでお話しすることはできません」


 サザビーの言葉に、ザードはタンっと自分の額を叩く。


「いえ、もちろんもちろん! 今のは、私を知らぬ相手に話を聞かれたくないという意味でさぁ」


 何でもない言葉だけど、ザードが言う場合は色々な意味が込められていそうだ。すぐに王に伝わっては困る、とか。


 相変わらずの喰えない態度に苦笑しながら、僕は話を聞く姿勢をとる。


「それで、一体なんの用かな? 改めて就職先の斡旋希望?」


 かつてのザードの目論見を持ち出してみれば、ザードは困ったように頬をかいて、それから真面目な顔を作る。


 普段、冗談しか言わないような顔をしているザードは、ぐっと口元を引き締めると、


「単刀直入に申し上げます。シューレットに向けて、兵を起こしていただきたい」


 と言い放った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] レニーが元気で働いている様子が見られたこと。 やっていることは変わりないかもしれませんが、出世してますよね。 [気になる点] もちろん次の更新が気になります。 [一言] 何か不穏な雰囲気で…
[良い点] 双子案件は笑う。 さすがは国家ヤ○ザ、ヤカラには更なるヤカラで対応ですね! [気になる点] 六年で火種を消し切れ無かったか。 [一言] 火消し、しかも破壊消火ですか。少なくない被害が出そう…
[一言] 双子案件になるのは嫌だなぁw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ