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【やり直し軍師SS-323】南の軍師 来訪②

 ノーレスの説明では、軍師ドランは帝国の港ドラーゲンから帝都へ向かい、皇帝と謁見する。


 帝都で数日滞在した後、ツェツィーの館がある、フレデリアの街にやってくる予定との事。


 なお、帝都での謁見にルルリアは立ち会わない。これはフェザリスの姫がいなくとも、両国には強固な絆がある事を見せつけるため。


 ドランはルデクにも来訪したかったのだけど、南の大陸の情勢がそれを許さなかった。そこまで余裕があるわけではないらしい。


 ただ、同盟国の一方だけに伺うというのは外聞も良くない。そこでルデクには、改めてフェザリス王家の人物が挨拶に、という話が来た。


 これらの正式な使者は、ルデク、帝国とも同時に発したらしいので、ルリリアはかなり内々の段階で僕らに教えてくれたようだ。


 幸いなことに、ルデクに来訪する親善の使者は、ドランの帰還後となる。


 これもフェザリスのお家事情によるところ。ありていに言えば、双方の護衛をまとめて準備する負担を減らしたいのだ。


 一連のフェザリスの対応に、ルデクからも特に不満の声はない。ゼウラシア王の許諾を受けたフェザリスの使者は、胸を撫で下ろして帰国していった。


 僕も無事に調整がつき、一路フレデリアへと向かう。


 同行するのはいつもの面々だ。ウィックハルト、ラピリア、双子、ネルフィアにサザビー。


 それと今回は、もうふたり。ゴルベル王の第一子、シャンダル王子と、護衛役のフランクルトである。


 シャンダル王子は、軍師ドランの話を僕らから聞いていた。その当人がやってくると言うので、会ってみたくて我慢できなかったらしい。


 普段あまり我儘を言わないシャンダル王子。今回ばかりは方々に無理を言って、あくまで非公式な形で同行が許されることになった。


 そのためフランクルトは、シャンダル王子の専属護衛である。


 シャンダル王子はひとりで馬に乗り、顔を上気させながら僕の少し手前を走っている。


 馬の操り方はすっかり手慣れたものだ。なにせ、第10騎士団の面々には馬バカが多数いる。


 それらが争うように教えたので、若くて吸収も早いシャンダル王子は、短期間でメキメキと腕を上げていた。なんなら僕よりも巧みに見える。


「なんだ、シャンダル。浮かれてんのか?」

「まだ出発したばかりだぞ?」


 興奮しているさまを双子に揶揄われた王子は、恥ずかしそうに苦笑。


「ですが、あのドランに会えるのですから仕方のない事です。そもそも、私に散々ドランの話をしたのはあなた方ではないですか」


 そう、南の大陸でドランに会っていた双子は、シャンダル王子に対して、自慢げにその話を何度もしたのである。双子の話は妙に臨場感に溢れ、どこか人を惹きつけるものがあった。


 双子のせいですっかりドランに憧れたシャンダルは、その後僕らの所にも話を聞きにきて、今日に至るのである。


 なので王子のいう通り、ユイメイの双子のせいと言ってもあながち間違ってはいない。


 ちなみにシャンダル王子が行くならと、ゼランド王子やルファも同行したがったけれど、流石に色々と大事になるので、今回はお留守番。


「フレデリアか。少し久しぶりね」


 隣を並走していたラピリアが、そのように呟きながら僕の方を向いた。


「ロアは覚えているかしら? 2人でフレデリアの街に出かけたわよね?」


「もちろん覚えてるよ。帝国に同盟の話を持ち込んだ時の事でしょ?」


「そうそう。私はルデクのお金しか持ってなくて、結局、共通銀貨を持っていたロアにご馳走になったままだったわ」


「そうだったっけ? そこはあんまり覚えてないなぁ」


「まあ、確かにそれどころじゃなかったものね」


 そんな僕らの会話を聞きつけたサザビーが、「え? そんなことがあったのですか?」 といえば、さらにネルフィアが、「ああ、あの時の話ですか」と呟く。


「あれ? ネルフィアに話した事、あったっけ?」


 僕の疑問にネルフィアは当然のように、


「いえ、無粋ですが、一応遠くから見守らせていただいておりました。もちろん、会話が聞こえるような距離にはおりませんでしたから、そこはご安心ください」


 ……うん。流石第八騎士団の団長様である。考えてみれば敵の真っ只中で、代表者たる僕らがふらふら出歩くのをネルフィアが見逃すはずはないか。


 今になって初めて明かされた事実に、僕は妙に感心しながら、帝国へと続く大きくて広い道を進んでゆくのであった。





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― 新着の感想 ―
[一言] まだ波乱のニオイはしませんね 巻き込まれ体質の本領やいかに?
[良い点] 無体な扱いをする様な人達では無いと分かっているものの、体裁的には人質みたいなシャンダル王子がのびのびと楽しそうで良かった。 [一言] 一国の王子がファンです!握手してください!みたいな勢い…
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