表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

240/537

【やり直し軍師SS-239】ロア、変装する。③


 露店の店主に話を聞いた僕らは、その足で王都城門に併設されている衛兵の詰め所へ向かった。


 王都に出入りする人々の玄関口であるこの場所には、多くの衛兵が詰めている。


 元々衛兵は王都に滞在する騎士団の持ち回りとなっているので、今は第10騎士団や第六騎士団の兵が目立つ。


 一部例外として、有事の際、王都に残って警備を行う専属の衛兵がいるけれど、数は決して多くない。


 衛兵達が忙しく動き回る詰所で、「すみませーん」と声をかけると、カウンター座っていた衛兵の一人が「何か?」とこちらに視線を向けた。


「や、実はさっき裏通りで露天商が3人組に絡まれていた件で、話を聞きたいのですけど……」


 僕が説明を仕掛けたところで、奥から、


「あ、お前達はさっきの!」


 という声が聞こえ、先ほど裏通りで見た衛兵が大股でこちらへやって来た。


 僕らと話していた兵士が「なんだ、知り合いか?」と問えば、「例の騒ぎで出ていったところにいた奴らだ」と答えながら僕らを睨むように見て、「なんだ、やはり何か知っているのか?」と詰め寄ってくる。


「いやぁ、むしろこちらが話を聞きたくてきたんですよ。さっきの騒ぎ、何度も起きているみたいですけど、それにしてはしっかり探されてもいませんでした。これ、上官には報告されているんですか?」


 僕の質問に不快そうな顔をする衛兵。


「関係ないといったろう。いや、待てよ。なんでそんなに詳しく聞きたがるのだ? まさかとは思うが、やっぱりお前ら、“あいつら”の仲間で、さぐりを入れにきたのではないか?」


「そんなわけないでしょう」


「いいや、怪しい。ちょっとこっちへ来い。話を聞かせてもらう」


 あごをクイと引いて奥の部屋を示す衛兵。ちょうど良い。ここで問答しているよりも話が早そうだ。


「あ、そうですね。助かります。詳しい話を聞かせてください」


「話を聞くのはこちらだといっているのだ! 黙ってついてこい!」


 こうして奥の部屋に連れて行かれた僕ら。そこで「なぜあの場所にいた」「絡んでいた3人組は何者だ」「お前らは王都の市民か?」「なぜ執拗に知りたがる」などと矢継ぎ早に尋問される。


 僕らと対峙している衛兵は、リーボックと名乗った。僕は自分の正体以外は正直に話すのだけど、リーボックは中々納得してくれない。


 僕としては早く話を聞いて、さっきの3人組を探す糸口を掴みたいのだけど……。


 少々面倒になってきたところで、部屋の扉がノックされ、一人の人物が顔をのぞかせる。


「何か怪しいやつを捕らえたと聞いたが?」


 そのように言いながら入ってきたのは、まさかのロズウェル。


「あれ、ロズウェル、どうしたの?」


 と僕は思わず言ってしまい、しまったと口を押さえるも時すでに遅し。ロズウェルは眉根を寄せながら、「誰だお前は、お前など知らん」と不審な目を向けてくる。


 ここまできたら仕方ない。


「ロズウェル、僕だよ。ロアだ」


 正体を明かしてもなお、


「ロア? どこのロアだ?」


 とにべもないロズウェル。


 そんなロズウェルの表情がみるみる変わったのは、僕の背後に視線を移した時。


 なんだろうと振り向けば、いつの間にか変装を解いたサザビーが立っていた。


「ロズウェル、そちらは変装したロア殿ですよ。今日はお忍びで街へ」


 サザビーの説明を受けて、サザビーと僕の間で何度も視線を動かすロズウェル。


 僕も変装を解けば良いのだろうけれど、できれば一軒くらいは帰りに古道具屋を覗きたい。そのためにこのまま続けたかった。


「え? え? え?」


 なおも混乱するロズウェルに、サザビーが畳み掛ける。


「ロズウェルならロア殿の声は何度も聞いているでしょう? わかりませんか?」


 そのように言われたので、僕も改めて「仕事、お疲れ様。今日はリュゼルは?」と声をかける。


「ま、まままままさか、本当に副団長ですか!? すみません!!」


 腰を直角に曲げて頭を下げるロズウェル。


「いや、この姿じゃ分からなくて当然だよ。かえってなんだか申し訳ない」


「いえ、声で気づくべきでした。すみません!」


 慌てるロズウェルの様子を、唖然として見ているのはリーボックだ。


「あの、ロズウェル様、この方は一体……」


「お前もすぐに謝れ! こちらは第10騎士団副団長のロア=シュタイン様だぞ!」


「え! ええ!? まさか!? 大変な失礼を! も、申し訳ございません!!」


「いやいや、今日はお忍びだから、気づかなくても当たり前だから」


 リーボックは職務を全うしようとしただけだろう。僕のほうが不用意だった。むしろなんだか申し訳ない気持ちになる。


 こうしてひたすらに謝る2人を宥めると、僕らはようやく詳しい話を聞き始めることができたのである。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リーボック真っ青ですね、これ! 仕方ない、仕方ないんだよ、庶民感ばっちりなんですもの。 ロズウェルもびっくりですよねー! 声出して笑ってしまいました。 しかし、ごろつきの件は気になります…
[良い点] うむ、完璧な変装だ。 [一言] やっぱり余の顔を忘れたか出来ませんでしたね…。
[良い点] 衛兵達が、癒着しているわけではないのかな?積極的に調査できないわけがあるとか。悪代官とか裏にいたりする?そこは、明日の話として、市民に対する態度は、改めさせたいよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ