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【やり直し軍師SS-108】2人の軍師15

あとがきに今後の更新予定のお知らせがございます!


 序盤の会談とは打って変わって、晩餐ではルデク、帝国を諸手を挙げて歓迎するような雰囲気で進む。


 オザルドが約束を守り、反フェザリス派を説得したのもあるのだろうけれど、どちらかといえば、先ほどの一戦によって怒らせてはまずい相手と思われた感が強い。


 現に反フェザリス派と思われた面々の笑顔がすこぶる硬く、引き攣っている。


 当初の予定であった、両国の武威を示すことには成功したので良しとしておこう。……友好国まで脅すことにはなったけれどね。


 アーセル王は終始ご機嫌だった。ご機嫌というか、興奮していたという表現が正確かな。


 アーセル王、どうやら戦場に立つのは初めてだったようで、晩餐中しきりに各将の活躍を褒めちぎっていた。


「流石、北の雄である! 両国と友好を結べば、アーセルは安泰だ!」


 アーセル王の言葉は、単純すぎるとは思うけれど、水を差す必要もない。


 懸念も無いわけではない。僕らが帰った後にイングが報復に動く可能性だ。けれどドランの描いた策、手当ても当然考えているだろう。


 イングの将も捕獲してたし。今回はドランの策に乗って十分に働いたので、あとは彼のお手並み拝見である。


 当のドランはといえば、はしゃぐアーセル王や、なんとか僕らの機嫌を取ろうとするアーセル王の部下を尻目に、ゆっくり静かにワインを傾けている。


 ドランの隣にはルルリアの姿があった、何やら小声で話し合っているが、時折ルルリアがころころと笑うので、深刻な内容ではなさそうだ。


 こうして晩餐は無事に終わり、僕らは船に戻って就寝となる。明日、補給を行ったら、その足で北の大陸へ戻る予定。


「また是非、次はゆっくりと我が国を楽しんでほしいものである!」


 アーセル王の熱烈な見送りを受けて、僕らは館を後に。ドランも一緒だ。ドランはルルリアに祖国の話をすると言ってついてきた。


 多分、別件もあるのだろうなと察した僕らは、一旦ビッテガルドの旗艦へと揃って移動する。


 それぞれが落ち着いたところで、ドランが立ち上がり、全員を見渡すと、丁寧に頭を下げた。


「此度はありがとうございました。これでしばらくは反フェザリスの国も無茶な動きはできないでしょう」


 頭を下げたままのドランに、ビッテガルドが楽しげに鼻を鳴らす


「ふん。威嚇などと言っておきながら、最初から俺たちを戦いに巻き込むつもりであったのだろう」


「はい」


 あっさりとした返事、隠すつもりはないらしい。


「最初からそのつもりで、義妹に出兵を促したのか?」


 ビッテガルドはなおも笑いながら問いかける。


「ええ。ただし、ルルリア様はご存じないことでしたので、お怒りになられるのでしたら、全ては私に」


「いや、怒ってはおらん。まあ、面白いものが見られたからな」


 そんなビッテガルドに、今度はドランが疑問を投げかけた。


「巻き込んでおいてこのようなことを聞くのは憚られますが、我が策に乗せられたと知りながら、なぜ? 貴殿らには危険ばかり多くて、利が少ない話であったと思うのですが?」


 ドランの質問に、ビッテガルドは僕を見る。


「ロア、お前はなんでドランの策に乗ったのだ?」


「僕ですか? 僕はまあ、あのドランが仕組んだのなら、大きな問題は起きないかなと思ったので」


 そんな僕の言葉に、ドランは少し目を見開く。


「会ったこともない私の策を、そのように簡単に信用したというのですか?」


「そういうことになりますね」


 会ったことがないだけで、僕はドランのことをよく知っているからね。


「それは、些か奇特かと思います」


 ドランはゆっくり首を振る。本当に理解できないようだ。


「でも、僕らが動かなくても、どうにか巻き込む気でいたのでしょう?」


「仰る通りではありますが、これではまるで、逆に私が何かの策に乗せられている心地ですな」


「特に何も企んでいませんよ」

 

 しばしドランと見合って、お互いに少し笑う。それからドランの視線は再びビッテガルドに。


「では、ビッテガルド様も同じように?」


「いや、違うが?」


「違うのですか?」


「ああ。俺は隣国の腹黒大軍師が、お前の策に乗ったなら、そちらに何か旨みがあるんじゃないかと思っただけだ」


 と言いながら僕を見る。


 それはまた、奇特なことで。


 ドランも小さく首を降って、それでその話は終わり。


 その後は情報交換の時間となる。


 特に僕らにとっては南の大陸の実情を知る、貴重な機会だ。


 アーセル王の前では話しにくいこともあるからね。


その夜は、ドランの貴重な話を聞きながら更けてゆく。


 僕の初めての南の大陸遠征は、こうして南の諸国に小さくない影響を与えて帰路に着くのだった。


いつも読んでいただきありがとうございます!

事前に活動報告でお知らせいたしました通り、100話を越えてきりの良いところまで更新しましたので、ここから少し更新ペースを落とします。

今の所考えているのは一週間書きだめ期間として、更新再開より5話〜7話ほど連日0時に更新という方法です。(今回のような長い話もできればまとめて更新したいなとは思っております)。

書籍化作業との兼ね合いなど見ながら、しばらくは探り探りで更新してゆこうと思いますので、本当に予定は未定です。とにかく完全に更新を止めないような方法を探したいと考えております。

とりあえず、次回更新は9月15日からを予定しております。大きな問題がなければ9話更新予定です!

またお付き合いのほど、何卒、よろしくお願い申し上げます!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 本編も面白くて一気読みしたけど、SSもこれまた捨てがたい面白さ。。書籍化も納得で楽しみにしてます! [一言] 書籍化のための作業もお忙しいでしょうし、まだまだ暑いですのでご自愛ください。
[良い点] ここまで本編から走り続けたこと。このクオリティで毎日何か出てくるのはすごいと思います。 [気になる点] フェザリスの今後が気になりますねぇ… 侵攻はしないんでしょうけど。緩衝地帯みたいな地…
[一言] 連日の更新を楽しみにしていましたが、15日まで待つのは大軍師ロスになりそうです(笑)。1週間、期待に胸を膨らませて待ちます。 書籍化に当たって、イラストもありますよね?イラストで登場人物の…
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