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赤銅の剣は無慈悲につらぬく  作者: ばおー
第一章 炎の王国
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第三十八話 王都

 王都ミナリスの門を馬に乗って潜った。

 ユシアが今まで生きてきた中で、これほどの巨大な都市を目にするのははじめてだった。

 周囲を高い城壁で囲まれ、門にはおおきな跳ね橋が架かっており、様々な大きさの石造りの建物がところ狭しと建ち並んでいる。

 路地に目を向けると、種々雑多な人々が行き交っている。

 その多くは人間だが、中には猫の獣人であるフェリスや、人間の子供のような外見をした、小人のピッコロなどが確認できる。

 小人のピッコロは、成人して年齢を重ねても外見に変化は見られない。

 ただ、人間と違うのは、耳が尖っていると言うことくらいだろう。

 都市の住人の他には、自らの名を挙げようとする冒険者や、一儲けしようとしている商人などが見受けられる。

 かつて見たことのない大都市を前にしても、ユシアの心は晴れなかった。

 故郷である、ロナンの街を旅立つ前夜、ユシアは双子の妹のリセスと実に三年ぶりの再会を果たした。

 それは、ユシアが心待ちにしていた瞬間でもあった。

 リセスの病を治すことができる万能薬〈エリクサー〉の存在を逸早くユシアは伝えたかった。

 少しでも妹の負担を和らげたい一心だったが、それを聞いたリセスの反応はユシアの予想に反するものだった。

 リセスは日々の病との葛藤に心も身体も疲れ果てていた。

 あらゆる薬を試し、効果がなかったことに彼女は絶望していたのだ。

 リセスは双子の兄の申し出を断り、もう自分の病気には関わらないでほしいーーユシアにはユシアの人生があるからと言われたのだ。

 それ以降、ユシアは心ここにあらずと言った様子で、無気力状態に陥っていた。

 仲間たちが心配して声をかけても上の空で、赤い瞳はどこか遠くを見つめていた。

 〈エリクサー〉を見つけ出し、妹の病を完治させることを目標に三年間、血の滲むような努力を続けてきたユシアにとっては、生きていく活力を失ったに等しかった。

 そして、なによりも、妹がここまで苦悩していたことに気がつかなかった自分を恥じていた。

 虚ろな表情のまま、馬を進めていると、人々が王国騎士団に歓声を上げていた。

 しかし、ユシアたち〈赤銅(しゃくどう)(つるぎ)〉の姿が目に入ると、それは嘲笑や罵声に変わったーーだが、今のユシアにとっては、人々の反応などに関心はなかった。

 幌馬車の中に、呪魔(じゅま)の鎖で縛られたシヴァンを厳重に監視しながら、一同はグレイモール王国の中でも、重犯罪者だけが収監される、ミナリス大監獄へと辿り着いた。

 周囲を塀に囲まれ、門の前には門番が立っている。

 馬に乗ったまま門を潜り、中へと入る。

 下は芝生になっており、ユシアの目の前には石造りの建物が建っていた。


 「全員、降りろ」


 ブランドン指示の下、その場にいた全員が馬から降りた。

 王国騎士団が幌馬車からシヴァンを連れ出すと、男は太陽の光を眩しそうに見た。


 「やれやれ。ようやくご到着か。せっかくの長旅だったのに、グレイモールの景色を楽しめなくて残念だ」


 呪魔の鎖によって縛られているシヴァンは、力を吸収され、弱体化し、身体の自由が利かない状態のはずだが、それでも彼は依然として余裕の態度を崩さなかった。

 ユシアはそのことが酷く不気味に思えた。

 

 「無駄口を叩くな、歩け!」


 騎士が強く言い、シヴァンを突き飛ばした。

 彼はゆっくりと振り返ると、その騎士の顔を見て、思わせ振りに笑みを浮かべた。


 「な、なんだ」


 騎士の動揺を楽しむかのようにシヴァンは笑うと、監獄へと歩き出した。


 「ブランドン、戦いの準備をしておけーーこれからはじまるぞ。かつてないほどの大きな戦がな」


 シヴァンはブランドンの前で立ち止まり、言った。

 ブランドンは無言で目の前の男を睨みつけた。


 「ユシア、悩みがあればおれのところにこい。おれはいつでも待ってるぞ」


 監獄のドアが開き、中へと連行されながらシヴァンはユシアに笑いかけたーーとても追い詰められた者の表情ではないとユシアは感じていた。



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