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散文
違ったのだ。
最後の最後で大幅な狂いが生じていた。
リーシャ、君のことだ。
どうして薬を用意した。
どうしてリドムの分と、"もう一つ"を用意したんだ。
薬は一つでよかった。何故医者に"二つ"用意させた? 失敗用の予備ではない、あのトレーには確かに"薬が二つ置いてあった"。
そして一つは、リーシャが持っていた。どうしてリーシャがその薬を持つ必要があった?
まさか飲む気だったのか? いや、飲む気だったのだろう。しかし何故。彼女は未来へ飛びたてたのに。道筋は確かに見えていただろう?
この物語は自由に向かう物語だった。『奴隷』という、人間の中で最も選択肢の狭い身分にあった少女が成長し、やがて相対的な自由を手にするはずだった。
男にも自由があった。彼は目的の中で道を外れ、しかしそれを選ぶこともまた自由であり、その道の先にある光に包まれて幸せに"自ら選んで"死ぬはずだった。
それが何故、最後に男は彼女を殺す事を選び、彼女も自死を選んだ上で最期に幸せを語ったのか。
すべてが狂った。理由はわからない。




