表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

第18話

「おじいちゃん、そんな、どうして!」


 影の清子が放り投げたのは、清子と同じくらいの大きさの、男の人形でした。白い髪に、同じく白いふさふさの髪、それにごつごつした大きな手。全てがおじいちゃんそのものだったのです。清子ははうようにして、おじいちゃんの人形へと向かいます。しかし、その清子のからだをガシッとなにかがつかみました。


「きゃっ!」

美也子(みやこ)様、清子のヤツをつかまえました」


 清子が見あげると、百花(ももか)がにやにやしながら、清子のからだをわしづかみにしていたのです。その笑いかたは、清子をいじめていたときとまったく同じ笑いかたでした。清子はヒッと息を飲みます。


「ふふふ、よくやってくれたわ。でも、やっぱり予想通りね。わたしと影の清子ちゃん以外だったら、あなたにさわることができる。ミーヤの守りも関係ないようね」


 一人で納得したようにうなずいて、美也子が清子を見おろしました。意地悪なにやにや笑いが、だんだんと黒く染まっていきます。


「へへっ、ゆずってくれてありがとうよ、美也子。やっぱり清子を痛めつけるのは、あたしが最初でなくっちゃね」

「痛めつけるって、やだ! ひどいことしないで!」


 百花の手の中で、じたばたと暴れる清子を見て、影の清子がほえるように笑いました。


「おいおい、そんなバタバタするなよ、往生際が悪いな。それにお前、まるであたしたちがいじめてるみたいないいかたしてるけど、それは違うぜ」


 影の清子がチッチッチッと指をふりました。


「だって、そうでしょ! 清子をいじめようとしてるじゃない!」


 じたばたしてもムダだとわかった清子は、今度は声をふりしぼってどなりました。しかし、影の清子は肩をすくめるだけでした。


「まあ、お前がどう思おうと関係ないがな。あたしはお前に、おしおきをしてるだけだよ」

「おしおき……?」


 清子がおびえた声で聞き返しました。影の清子が、美也子のすがたへ戻り、清子へ優しく笑いかけます。ですが、その笑顔からは、冷たい悪意しか感じませんでした。おびえる清子に、美也子がさとすように続けます。


「そう、おしおきよ。だって清子ちゃん、あなたのせいでおじいちゃんは、お人形さんになっちゃったんだもの。それもこれも、あなたが悪い子だからでしょう」


 悪い子といわれて、清子の木のからだが、キシキシといやな音をたてて痛みました。うつむく清子の顔を、百花が無理やりあげさせました。首がしまるのを感じて、清子がううっとうめき声をあげます。


「それにしても、おじいちゃんもおバカさんよね。呪いをかけた張本人であるわたしに、うそが通用するはずないのに。必死の形相で、わたしに『存在しない』ってうそをついて。おとなしくうそをつかない良い人を演じていれば、こんなことにはならなかったのにね」


 清子の脳裏に、最後に見たおじいちゃんの背中がうかびました。うそをつかない良い人でいるよりも、悪い人間になってもいいから、大切なものを守りたいといっていたおじいちゃん。それなのに――


「許さない……おじいちゃんをそんなふうにいうのは、絶対に許さない!」


 清子は手足をさっきより激しくバタバタさせて、なんとか百花の手から逃れようともがきます。そんな清子を、美也子が面白そうに見おろしました。


「へぇ、許さないって、どうするつもり? あなたはお人形のすがたなのに。百花ちゃんにつかまれて、手も足も出ないじゃない。それなのに、わたしたちと戦うつもり?」


 美也子のからだが、黒く染まっていきます。ほえるような影の清子の笑い声が聞こえてきました。


「こいつはけっさくだ。そんな状態であたしたちと戦うつもりだってんだからな。なめられたもんだぜ」

「うるさい! 手も足も出なくたって、清子は絶対、あなたたちのことを許さないから! おじいちゃんをもとに戻してよ!」


 影の清子は、清子に顔を近づけてきました。真っ赤な目はらんらんと輝き、まるで獲物を見つけたトラのようです。しかし清子もひるまずに、まっすぐ影の清子をにらみ返しました。


「ふん、そんな生意気な目をしやがるとは。まあいい、すぐにそんな気力もなくなるぐらいに痛めつけてやるからな。おい、百花。手始めにそいつのうでを、思いっきり折ってやりな」


 百花がにやっと笑ってうなずきました。次の瞬間、清子のうでにすさまじい痛みが走りました。ビキビキといやな音を立てながら、木のうでが百花にきしまされていきます。たわんで今にも折れてしまいそうです。


「きゃあっ、痛い、痛いよ、やめて、うでが折れちゃう!」

「じゃあさっきの生意気な態度をあやまってもらおうか。ほら、どうした? さっさとあやまらないと、うでが折れちまうぞ」


 影の清子がバカにしたような口調で、清子をからかいます。しかし清子は、影の清子をしっかり見すえたまま、首をふりました。


「痛いけど、でも、絶対あやまらないもん! あなたこそ、おじいちゃんにあやまって」


 ピキッピキッと、はじけるような甲高い音が聞こえてきました。清子のうでを、するどい衝撃が襲います。影の清子は、半ばあきれたように頭をかきました。


「おいおい、本当に折れちまうぞ。それともお前、さすがにうでまでは折らないだろうとか、そんな甘っちょろいこと考えてるんじゃないだろうな。それならすぐに考えを改めたほうがいいぜ。あたしは本気だよ」


 ぎろりと影の清子がにらみつけてきます。ですが、清子はやはりひるみませんでした。


「あなたが本気なように、清子だって本気だもん! 絶対に許さない、イタッ、痛い……でも……あきらめないもん。おじいちゃんにあやまってよ!」

「なんだよお前、いつもならすぐにだまりこんだりするくせに、なんでそんなにがんこなんだよ。ああっ、くそ、生意気なやつだな、本当に! おい、百花、こうなったら折っちまっていいぞ、本気で痛めつけてやれ!」


 清子の態度が予想外だったのでしょうか、影の清子はあわてた様子で、百花に命令しました。百花の手に力が入ります。


「いやぁぁっ! あやまって、あやまってよ、ああ、あ……ああ……」


 想像を絶するような痛みに、清子の意識はついに闇へとすいこまれていきました。なにも聞こえなくなり、なにも見えなくなって――


いつも読んでくださいまして、ありがとうございます。

明日からはまた毎日1話ずつの更新となります。

また、最終話まであと5話となります。最後までお楽しみいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ