神官の回復魔法
装備品も充実しているのに、三人がかりでスライム一匹にてこずるなんて先が思いやられるが、初めての実戦だったんだし良しとしよう。アイもメリルも喜んでるようだしな。
「あ、勇者さまダメージ受けてたっスよね。あたしが回復するっス」
「いいよ2ダメージしかくらってないから」
俺の最大HPは11。まだ回復しなくても戦える。
「遠慮しなくていいっスよ。あたしも二人みたいにすごいところみせたいっス」
そう言うとアイは俺の体に手をかざした。
「キュア」
じんわりと体が暖かくなってくるのを感じる。もともと傷らしい傷はなかったが体力が回復していくのがわかる。だてに神官を名乗っていない。
「アイもメリルもよくやったな」
「はいっス」
「でも私の魔法効かなかった」
メリルは表情が読み取りにくいが、悔しがっているようだった。
「相手がスライムだったからだ。魔法に耐性持ってる魔物は少ないよ。むしろ魔法がよく効く魔物の方が多いからこれからの戦い頼りにしてるぞメリル」
「そうっスよ。メリルちゃんの魔法すごかったっス」
「わかった」
その後俺たちは、町の周辺で体力と魔力の続く限り魔物たちとの戦闘を繰り返した。そのほとんどがスライムやねずみこうもりだったが、おばけいもむしの群れに出くわしたときはさすがに焦った。
「さっきのおばけいもむしの大群やばかったっスねー」
傷付いた俺にアイが回復魔法をかけながら言う。
ここは最初の町。確かにアイの言う通り一歩間違えればやられていたかもしれない。次からは早めに町に戻ろう、と心に決める。それにしても――
「メリルの攻撃魔法のおかげで助かったようなもんだな」
「半分以上メリルちゃんが倒したっスからね」
そうなのだ。俺が前線で敵を引き付けながら戦い、アイが俺を回復。そしてメリルが後方から魔法で敵を殲滅という戦い方が出来上がってきていた。
「楽勝」
メリルがピースサインをしてみせる。いや、楽勝ではなかっただろ。俺の傷を見ろ。
しかし頑張った甲斐あって、俺たちはレベル3になっていた。