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初めてのお買い物

目を閉じて仲間のステータスを確認してみた。

アイウエは初級の回復魔法であるキュアを習得していて、守備力42の法皇のローブを装備している。

メリルは初級の攻撃魔法フレイムショットを習得していた。これなら魔物との戦闘も可能だ。


「あたしだけこんないい防具装備してるの、なんか気が引けるっス。あたしたちお金もないしこれ売って皆の武器と防具揃えるっスよ」

とアイウエが提案した。なんていい奴なんだ。

実は俺ははなからそのつもりだったのだが、なぜか二人に自我が芽生えていたため今更その服売ってくれとは言い出しづらかったのだ。


「でもいいのか? 多少のアイテムや金なら町中のタンスとか壷とか調べればいくらかは手に入るけど」

たしか薬草と50マルクくらいはみつかるはずだ。ちなみにマルクというのはこのゲーム内での通貨だ。


「どういうことっスか? タンス?」

「……盗むの?」


まずい。失言だった。RPGでは当たり前のように人の家に勝手に入って、家中調べまわってアイテム手に入れるけど、現実でそれやったら犯罪じゃないか。二人を仲間にする前に手に入れておくべきだった。この世界に道具屋は存在しない。それを補って余りあるだけのアイテムを民家のタンスや壷の中などに配置しておいたからだ。


「あ、いやいやそんな訳ないだろ冗談だよ冗談! ゴホッゴホッ」


「なあんだ。勇者さまも冗談言うんスねー」

「……そう」


ハハハッと笑ってごまかす。……まいったぞ。これではアイテムが手に入れられないじゃないか。


「そ、それよりアイウエ、本当にいいのかそれ売っちゃっても。俺らとしては助かるけど」


「全然いいっスよ」

無邪気に笑うアイウエ。


「ありがとう、アイ」

「どういたしましてっス」

メリルはアイウエのことをアイと呼ぶことにしたらしい。今更ながら変な名前にしてすまんアイウエ。俺もアイと呼ぶことにするよ。

俺たちはまず防具屋に行くことにした。


「それなら2000マルクで買い取るけどいいかい?」

防具屋のおじさんが確認してくる。


「はい。お願いします」

法皇のローブは2000マルクで売れた。よし資金は充分だ。


「アイとメリルは同じタイプの装備品だから……これなんかどうだ?」

俺は絹のドレスを手に取ってみせた。


「可愛いっス! あたしそれがいいっス!」

アイは喜んでくれたようだ。メリルは「私は魔法使いだからそっちの方がいい」と絹のローブを指差した。


「じゃあ俺は……」


結果アイの絹のドレスが350マルクでメリルの絹のローブが320マルク。俺の皮の鎧と盾一式が530マルクと一番かかってしまった。なんかヒモになった気分だ。

続いて武器屋に行った。残りの金は800マルク。俺は安物でいいや。


「これなんかどうスか?」

「ちょっと重い」

「じゃあこっちは?」

「悪くない」


アイとメリルは俺をほったらかして買い物に夢中だ。まぁ楽しそうだからいいけどね。

俺は剣とヤリが置いてあるコーナーを見てみることにした。

やはり最初の町だけあって切れ味が悪そうなものが並んでいる。さびたつるぎを持ち上げる。

切るっていうより叩くって感じだなぁ。


ドンッ。


となりの人と肩がぶつかってしまった。俺も夢中になっていたらしい。とっさに「すいません」と声が出る。

となりを見ると、

「うーむ、伝説の武器はここにはないようだな」

と重そうな甲冑を着た騎士がうなっていた。そういえばこんなキャラも作ったっけ。


「勇者さま、あたしたち決まったっスよ」

「あとはカイトのだけ」

いつの間にか二人は買う物を選び終えていたようだ。


「二人は何にしたんだ?」


「これっス」

「これ」

二人は嬉しそうに俺を見る。二人が手にしていたのは、かしのつえだった。一つ200マルクだ。


「二人とも同じ物にしたのか」


「そうっス」

「そう」

「残りのお金は勇者さまが好きに使っていいっスよ」

「強い武器」


なんて勇者想いのいい奴らなんだ。

残金は400マルク。この店で一番高い武器はどうのヤリ300マルクだ。俺はどうのヤリを手に取って軽く振るってみせる。


「勇者さまカッコイイっス!」


「そうか、じゃあこれにするか」


俺たちはそれぞれの武器を手に店を後にした。

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