北西の洞窟
「強い魔物って言ってたっスね。どんな魔物っスかね」
「さぁな。でもこれも人助けだからな。勇者一行としては見過ごせないだろう」
正直無視してもストーリーになんら影響はないのだが、こいつらがやる気を出しているので仕方がない。まぁ今のレベルなら問題ないしな。
「カイトの言う通り」
金に目がくらんだメリルが先頭を歩く。
道中の魔物を蹴散らしつつ、俺たちは北西の洞窟へとたどり着いた。
「ハイキュア!」
アイが俺の傷を治しながら言葉を吐き出す。
「さっきのバーサクドールめっちゃ怖かったっス。完全に目がイッちゃってたっスよ」
「何考えてるか表情が読み取れなかった」
メリルも続く。このあたりには今までに見たことのない魔物が出現する。だが群れで襲ってこなければ大して脅威ではない。それだけ俺たちが強くなっているということだ。
洞窟に入ると道が左右二つに分かれていた。
「どっちに行けばいいんスかね?」
ここは右の道が正解なのだが知ってたらまた怪しまれるからな。俺はメリルに振った。
「メリル、お前はどっちだと思う?」
「左、かな」
「じゃあ左に行くっス!」
こうして俺たちは道に迷いながらも洞窟の最深部に行き着いた。体力も魔力もかなり温存したまま中ボスに挑める。
「あっなんかいるっスよ!」
アイが声を上げる。ドスンドスンと足音が近づいてきて、薄暗い洞窟の奥から大きなシルエットがうかびあがってくる。
『ガルルルルッ!』
あらわになった姿は体長四メートルのマウンテンタイガーだった。
マウンテンタイガーの先制攻撃。鋭い爪で飛び掛かってくる。俺は盾でなんとか防ぐも後ろに吹き飛ばされてしまった。洞窟の壁に激突する。
「がはっ!」
アイがムチでマウンテンタイガーを威嚇しながら距離をとる。その間にメリルが魔法力を高める。
俺は起き上がるとマウンテンタイガーめがけて走り、剣を振るった。左目をかすめて血が噴き出る。
『ガルァッ!?』
視界の悪くなったマウンテンタイガーが後ずさりする。そこへすかさずメリルが――。
「アイスショット!」 「アイスショット!」
連続魔法を浴びせた。マウンテンタイガーの足が凍り付く。だがまだ動く上半身をくねらせメリルをにらみつけると、口を大きく開けた。
『ガアアアアアーッ!』
その瞬間、衝撃波がメリルを襲う。たまらずメリルが後ろに吹き飛ばされた。俺同様壁に強く叩きつけられてしまう。
「メリルっ!」
マウンテンタイガーはまだ足が凍っていて動けない。
「セイントフォース!」
アイが俺に身体強化の魔法をかける。
「行くぞっ! 三段斬り!」
『ガルァアァァァーッ!!』
俺の特技三段切りが決まり、マウンテンタイガーは消滅した。
4500の経験値と1000マルクを手に入れた。俺たちはレベルが上がって17になった。




