快進撃
やはり装備品が違うと戦闘が楽だ。
今までてこずっていた敵も一撃で倒せる。面白いように戦闘がサクサク進んだ。アイも攻撃面で存分に活躍してくれるし、メリルも魔法力が尽きてもかいふくのつえのおかげで回復役に回れる。
このあたりの魔物は強めに設定していたはずなのだが、新調した武器、防具さまさまだな。元来のコツコツやることが好きな俺の性格も味方して、俺たちはいつの間にかレベル15になっていた。
アイが、
「もうレベル上げ飽きたっス~」
と言わなければ今もまだ戦い続けていただろう。
そして俺たちは今ミナットの町のドックにいる。ここから船で次の大陸に行くためだが、今はまだ行けない。なぜなら船の乗組員たちがストライキを起こしているからだ。
乗組員の一人に話を聞く。
「何があったんスか?」
「会長がオレたちの給料減額するって言いだしやがってよ。前は乗組員想いのいい会長だったんだぜ、それなのに……」
ミナット船舶協会の会長とやらが突然金に汚くなって理由も言わずに乗組員たちの給料を値下げすると言い出したのだそうだ。ってこれも俺の作ったシナリオなんだけど。
「船、出ないの?」
「ま、そういうことだからよ。恨むなら強欲な会長を恨んでくれよな」
そう言い残して乗組員は去っていった。
こうなったらもちろん俺たちのすることは一つ。
「会長に――」
「会長に会いに行く」
「お、おう。そうだなメリル」
メリルの奴、珍しく積極的に発言したな。会長の家に向かう途中メリルがずっと「節約とケチは違う」とぶつぶつ独り言のように呟いていたのは聞こえない振りをしておいた。
家というよりそれは豪邸という言葉が正しいのだろう。会長の住まいはミナットの町の四分の一を占めていた。完全に俺の製作ミスだな。
大きな門構えを抜け、お手伝いさんに広間まで通してもらう。
「なんだ貴様らは、汚いなりで入って来おって。まさかあやつらの使いの者か。えーいさっさと出ていけ!」
会長は俺たちを乗組員側の人間だと思ったらしい。話も聞かず追い出されそうになる。おいメリル、フレイムショットを撃とうとするな。こんな奴でもイベントクリアに必要なんだから。
そこへお手伝いさんが会長に耳打ちをした。すると。
「なんだそれならそうと早く言わんか。あやつらの仲間かと思ったではないか」
どういう説明をしたんだお手伝いさん。
まあいい、とにかくこれで話ができるようになった。
「わしは今困っておる。あやつらのストライキを止めさせることが出来たら船に最優先で乗せてやってもよいぞ」
「給料を下げなければいいんじゃないスか?」
「しかもタダでだ」
「タダ!?」
話がかみ合っていないことよりもタダという言葉に反応するメリル。
会長を説得するべきかストライキを止めさせるべきか迷うところだが、ネタバレするとお手伝いさんが実は魔物で会長をたぶらかして操っているのだ。
このイベントを進めるために、俺たちは会長宅を出て町の人たちから会長の変化を聞き出す。そして今のお手伝いさんを雇ってから会長が変わってしまったこと、お手伝いさんが町の外で魔物と話していたことを突き止めた。もう一度会長宅へ行く。
「正体を現すっス!」
アイがお手伝いさんに詰め寄る。
『ようこそいらっしゃいました旅のお方。ここはミナットさまのお屋敷です』
「あなたが魔物だっていうことはもうわかってるんスよ!」
『……』
「聞いてるっスか?」
『…………』
「もしもーし――――」
『……しつこい奴らめ、わたしの邪魔をするな!!』
魔物が正体を現した。




