初ボス
「メリルちゃん、もっと向こうに足やってほしいっス」
アイが小声で話す。
「せまい」
「ひゃっ! 勇者さまどこ触ってるんスかっ」
俺たちは暑さで顔を赤くしながら毛布を被って隠れている。王女のベッドは思ったより小さく三人が入るとぎゅうぎゅうになってしまった。
「おい変なこと言うな。俺は何もしてないぞ」
「ちょっ! また勇者さまっ」
「せまい」
などとやっていると王女の部屋の窓がバンッ!!と力強く開けられた。
『ゲコゲコ、オラの可愛いお姫様はどこだゲコ』
蛙が潰れたような声が聞こえてきた。魔物が現れたようだ。こっちへと近付いてくる。
『ゲコゲコー。わかったゲコ、ベッドの中ゲコ――ってなんだお前たちはゲコ!?』
毛布がめくられると同時に俺たちはベッドから飛び出した。
「あたしたちは王様に雇われた用心棒っス!」
「あなたを退治する」
『ゲコっ。このガマだいおう様を退治するだとゲコ。笑わせるなゲコ、返り討ちにしてやるゲコっ!』
そう叫ぶとガマだいおうは口から水の塊を勢い良く噴射した。俺はそれを盾でガードする。飛び散った水のしぶきが足をかすめた。スパッと刃物で切られたような傷が出来て血がにじんでくる。
まともに当たったら結構やばそうだ。早めに決着をつけなくては。
それにしても二足歩行の巨大ガエルは実際に目の当たりにすると気持ちが悪いな。
ガマだいおうの弱点は電気だ。
「メリル、頼む」
「エレキショット!」
メリルは覚えたての魔法を唱えた。
『ぐぎゃっ!』
ガマだいおうにクリーンヒットする。
『……ゲコゲコ。このチビ、やったなゲコ!』
ガマだいおうは一瞬ふらつくも体勢を立て直して、メリルめがけて大きくジャンプした。空中で両頬を膨らませている。
「また撃ってくるぞ!」
「セイントシールド!」
アイが広範囲にシールドを張った。
ボシュッ。
ガマだいおうの水弾がシールドに当たって掻き消える。レベルを7まで上げておいてよかった。
「エレキショット!」
『ぐがっ!』
ガマだいおうが着地した瞬間を狙ってメリルが二発目を浴びせる。そしてその隙をのがさずヤリを構えた俺が――
「とどめだっ!!」
一閃。
ガマだいおうの体を貫いた。
ガマだいおうは声にならない声を上げると塵になって消滅した。
俺たちはガマだいおうを倒した。450の経験値と500マルクを手に入れた。
するとどこからともなく軽快な音が聞こえてくる。レベルアップの合図だった。
「さて、王様に報告に行くか」
「はいっス!」
「うん」




