天真爛漫
「彼女を作りたい?」
「そうなんだよ。何かいい考えないか?」
授業の合間の休み時間。俺は、冬香とは別の数少ない女の子の友達の一人、工藤葵に彼女が欲しい件について相談していた。
葵とは中学生の頃からの仲で、中学二年生になった今では席が隣という事もあり、前よりもよく話をするようになっていた。
綺麗な黒髪をショートカットにしている葵。人当たりもよく、事実可愛いので、男女問わず人気者だ。
葵は彼氏こそ居ない(本人談)ものの友達も多く、相談するにはうってつけな相手だと思う。
きっと何かいい考えを教えてくれるだろうと思っていたがー
「プッ……彼女を作りたいって……」
笑いをこらえている様子の葵。
「いや笑うなよ」
「えー!笑うって!だってあの優斗が……」
「あのって何だよ」
冬香といい葵といい、何で皆真面目に取り合ってくれないんだ……。
俺が心の内で泣いていると
「まあ真面目な話、優斗だってそこそこイケメンだし勉強も出来るし、彼女の一人でも作れてもおかしくないけどね」
「分かる」
そうなのだ。自慢ではないが、勉強は他よりも出来るし、顔もそこそこだと思う。
それなのに何で彼女が出来ないんだ……。
「でも、優斗って仲いい女の子は結構居るよね。例えば冬香ちゃんとはいつもイチャついてるし」
「冬香とはそんなんじゃないって」
「またまたー!そうだ!そんなに彼女欲しいなら、その女の子たちに告白すればいいじゃん」
「残念だけど、葵の想像してる奴らは皆タダの友達だから」
名案だとばかりに頷く葵。それ全然名案じゃないけどね。
相談する相手間違えたかな……結局葵からもいい考えを聞く事は出来なかった。
他の人に相談しようかなあ。
そんな事を考えていると、隣に座る葵が急に真面目な顔になりー
「それならさ……私も優斗からしたらタダの友達?」
「え……?」
「私の事は女の子として見てくれないの?」
頬を薄く染め俺の目を見て、そう呟く葵。その雰囲気は何処か妖艶で。
何だか俺までドキドキしてくる。
あれ?葵ってこんなに可愛かったっけ?
いつも元気で活発な葵が、珍しくシュンとして。
普段とのギャップで、葵の事がいつもより何倍も可愛く見えた。
葵の質問に肯定しようにも否定したがっている自分が居る。
このまま否定してしまおうか、と流されるように漠然と感じているとー
「まあ冗談だけどね!」
「はい……?」
「もしかしてドキッとした?」
悲報ーどうやら冗談だったようです。
「ドキッとしたんだー!」と喜色満面の葵。今にも笑い転げそうな程笑っている。
それはないよ……。
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