プロローグ
どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!
というのが世界を征服、いや丸投げされてからの最初の感想。
ありえない。これ詰んでる・・・。
私は魔王。
といってもまだなったばかりの114歳、魔族女子。
魔界の力を結集して人間との長きにわたる戦に勝利し、見事に人間の世界を手に入れた。
しかし先帝も、そのまた先帝も欲してやまなかった世界は、どうやら芯の芯まで腐りきったリンゴのような代物だったみたいで。
「えー問題としてはまず経済。人間社会の国家間の借金が多すぎます」
「どの国も支出が収入を上回る債務超過です」
「毎年膨大な国債を発行して凌いでいますが、明らかにもう手遅れです」
人間界の財務を調べた黒魔術師やネクロマンサーたちの意見。
カネは命より重いを信条としている彼ら。その目に間違いはない。
「教育レベルの格差がひどいわ」
「識字率。識字率ヤバい。低さパねえ」
「そもそも世界的に文字が統一されてないのが非効率的」
魔界の魔族も驚きの実態。
よくひとつの世界としてこれまで機能してきた。
「医療技術の進歩が止まっているのは危険だ」
「今どき病気で呪術とかマジでするんだとビックリした」
「原因は宗教だろう。現実に即した改革をしないとダメだ」
かつては奴隷という立場だった獣人たち。
ある意味もっとも人間の近くで生きてきた種族。
野性味あふれる彼らでさえ医療や宗教改革が必要と言わせてしまうほど深刻らしい。
ここまで聞いただけで人間をいっそ滅ぼしてしまいたいが、そう簡単にもいかない。
一部の魔族は古くから人間と契約をして甘い汁を吸っている。そいつらの権力が結構強い。ぶっちゃけほとんどが魔界の貴族連中。
人間を滅ぼしたら絶対私を殺しにかかってくる。
そもそも魔界と人間界、二つのワールドの面倒を同時に一人で全部見るなんて無理。
腐った人間の世界は、責任をもって人間に何とかさせるしかない・・・。
「わかったわ・・・やってやろうじゃない!もうどうにでもなれよ!」
こうして私、魔王による人間世界の大改造がスタートした。