3.遭遇Ⅱ
見事な太刀筋だった。
視認することも難しい彼女の無駄のない素早い動きに少年は手も足も出なかった。
それでも少年の体に傷一つもつけられず、無我夢中に剣をふるうフード女。
女の目に焦りが出始めたころ、少年が動いた。
「…アイス・フィールド」
すると、一瞬にして女の視界に映るものすべてが凍った。白い気体がまわり一帯を包み、真冬をも超える寒さに思わず体を丸めたくなる衝動に襲われる。しかし、足首まで凍って動けない少年の目の前にいる女にとってはそんな寒さは些細なことだった。
まるで怪物でも見ているかのように少年をにらむ女。
それもそうと、いくら切り刻んでも傷の一つ負わないだけでも分あり得ないものだったが、一瞬にして大規模の魔術を展開できるなど、もはや人の範疇を超えていた。
そんな中、少年はまっすぐフード女の視線を見つめ返していた。なにも妙な闘争心が芽生えたわけではない。少年は目の前にいる少女に見惚れていたのだ。
日光に照らされた水蒸気に交わって、白く輝く銀色の髪にマッチして、女の整った容姿はさらに可憐さを増している。
睨まれているが、それでも彼女の可憐さに目を奪われていると、
「…何が目的だ…」
少女は少年を威嚇するつもりで精一杯低い声で言葉を発した。
「…ここはお前ら人間が足を踏み入れていい場所じゃない。どうやら私よりできるようだが、たとえ私を倒せても、その先にいるガーディアンにお前は倒せない。
あれは英雄王の財宝の守護者だ。命がほしければ、さっさと引き返すがよい。」
確かそんなものあったなぁ…と少年は冥王の本に書いてあったことを頭でサーチする。
「そいつって…もしかして向こうにある洞窟の中にあるやつ?」
「そうよ、今逃げたら見逃してあげるわ」
どうやらこの体のことらしいことを悟った少年は、すこし意地の悪い顔をして少女を見つめた。