03
一人称から三人称に変更しました。それに伴い1、2も修正しました。
遅くなってすみません。
3時間目が終わり、10分休みが始まる。真は数学の教科書を持つと廊下のロッカーへと向かった。廊下には同じ用の生徒が何人かいた。鍵を開け教科書をしまうと次の時間の準備のため倫理の教科書を探す。しかしそれはどこにもない。
そういえば先日持ち帰ってそのままであることを思い出す。しかたなく何も持たずに席へと戻ると席に着きルーズリーフだけ一枚だした。
もう教師が来て直ぐ授業が始まるという時間であるのに教室は騒がしい。
「見る?」
不意に隣の席の奴が話しかけてくる。
「え?」
「忘れたのかと思って。教科書ないと困るでしょ?」
「いいのか?」
「うん。構わないよ。」
長い前髪と野暮ったい眼鏡。一年の時からそういえばクラスは同じであった。名前は確か。
「ありがとな。七海って綺麗な声してるんだな。」
男にしては高めの澄んだ空のような声。昨日聞いた声に良く似ている。
「僕の名前、知ってたんだね。」
「そりゃ三年間一緒のクラスだしな。会話したことなくても知ってるよ。」
「でも僕はスクールカーストで言えば最下位あたりの人間だよ?」
「んなもん知らないね。」
そうこうしてるうちに教師がやってきて授業が始まる。
机同士をくっつけ教科書を見やすくすると隣から甘い香りがただよってきた。
香水ではない。食べ物の匂いというわけでもない。
心地いい香りであった。
遠くで教師の声が聞こえる。隣の席に目をやると長い髪の隙間から七海の顔が覗く。
普段野暮ったい眼鏡と長い髪によって隠されているその顔はどうやら思いの外綺麗なように見えた。
そうこうしているうちに授業が終わる。手だけはいつもどおり板書と教師の発言で重要そうな部分をメモしていたらしい。授業の内容は覚えていないのに綺麗にノートを取ってあった。
「教科書助かった。ありがとな。」
「ううん、困った時はお互い様だから。気にしないで?」
「もしまた忘れたらその時は頼む。七海もなんかあったら俺のこと頼っていーぜ?」
「シーン!昼飯食お?」
七海と真の会話に光也が割り込む。
「先食ってていい。ちょっと飲みもん買ってくるから。」
カバンから財布を出すと自販機へと向かう。
「教科書のお礼。」
そう言うと真は七海に飲むヨーグルトの紙パックを渡す。四限がおわってすぐに買ってきたのだ。
「え...。」
「前に何度かそれ飲んでんの見たから好きなのかと思って。」
「ありがと...。」
はにかんだような表情に何故か可愛いと思った。
「おう。」
それだけ言うと朝コンビニで買ったパンをもって光也たちの方へと行く。
「根暗くんと何話してたの?」
「根暗くんて七海のことか?」
「うん、そう。」
「変な呼び名つけんのやめてやれよ。さっき教科書見せてもらったからそのお礼。」
「ふーん。でもさ、根暗くんは根暗くんじゃん。だって前髪も長くて野暮ったくてメガネだって分厚いなんかよくわかんねえ古めかしいのだし?そんなに顔に自信ないに通って感じ。しゃべんないし友達もいなさそう。まさに根暗って感じじゃん。」
どことなく面白くなさそうな光也の返事。仲のいい友達を取られるのではないかとう思いがあるのだろう。
気にせずに他の面々は食事を続ける。
光也の根暗くん発言は七海にもおそらく聞こえてただろう。あまり広いとは言えない教室の中なのだ。
後で謝らなければならないと思いながらパンを齧る。
誤字脱字あったらすみません。
読んでくださりありがとうございます。
また後日修正するかもしれんせん。