通話
通話はいいぞ。こんな夜の過ごし方もいいよね。
イヤフォン越しにバリバリという音が聞こえた。通話をつなげて数十分、はじめての音がそれだった。
「…何食べてんだ貴様」
「お煎餅デース」
相手の男はのんきに答えた。
俺はキーボードを叩きながら舌打ちした。
「美味そうじゃねぇかコノヤロー」
「そういうお前はなにやってんの、めっちゃカタカタうるさいよ」
「あ?卒論じゃボケ」
「あぁー、卒論ね。この時期大変なぁ」
男は気の毒そうな声色でそう言った。
「お前もだろ。進捗はどうなんだよ」
「俺のゼミ、卒論書かなくてもいいんだと」
「はぁ?なんだそれずりぃ」
「ドヤァ」
俺はすっかりやる気をなくしてしまった。大きなため息が漏れる。上書き保存をしてパソコンをシャットダウンさせた。
「萎えた、やめる」
「おーおーいいのか?」
「いい、まだ中間発表まで余裕あるし」
「そうかそうか、まぁ余裕こきすぎて間に合わねーとかなけりゃいいっしょ」
「やめろ容易に想像できる」
長時間同じ体制でいたからか身体が固まっていた。背伸びをすると背骨がパキッといい音を立てる。
力が抜けたら腹が小さくグゥと鳴った。
「腹減った」
「煎餅あるよ」
「いや、ちゃんとしたの食いてぇ。お前、時間あるか?」
「あるよ」
「食いに行こうぜ」
俺がそういった瞬間、隣の部屋からバタバタと慌ただしい音がした。そして次の瞬間、俺の部屋のドアが勢いよく開いた。
「待ってました!お前のおごりな」
「ほざけ」
あの一瞬のうちに準備できるわけがない。いかにも飯食いに行くのを待ってたような風だ。
「どこがいいかなぁ、ラーメン?でもちゃんと食うなら肉とかかなぁ?」
「…お前に任せるよ」
俺は楽し気な隣人に呆れつつ、財布とスマホをポケットにねじ込んだ。
友達と行く外食が一番好きでした。通話して、合流して、一緒に食べる。楽しいひと時でした(しみじみ)
こんな学生生活、いいですよねってことで書かせていただきました。